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与えられた禁忌の魔術で復讐を ~凛として咲く仇花~  作者: 一ノ瀬 凪
第二章 邂逅するスノードロップ
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53. 四神教の教祖レン


 ルカは目の前のレンを名乗る男の言葉に衝撃を受け、身体は硬直し言葉を失った。

他のメンバーもレンの話はルカから聞いている。

この男が言っている事が本当であれば、あの"レン"が目の前にいる事になるのだ。

そして黒魔術の使い手として国を追い出された禁忌の魔術師も、同一人物という事になる。

強烈なその自己紹介は、全員を困惑させるのには十分だった。


「ごめん、ごめん。

 困惑させるつもりはなかったんだ。

 最初に言っておくと、僕は君たちの敵じゃない。

 そんなに身構えないでくれ」


 レンは眉毛を下げながら困ったように笑い、被っていたフードを後ろに下ろす。

すると爽やかな顔つきで白い肌の男の顔が露わになる。

少し長いが清潔感のある黒髪と黒い瞳、そして過半数の人が好意的に思える整った顔だ。

ルカはレンの事を当時喫茶店を営んでいた祖父から聞いている。

その年代を考えるとこの男がレンというのは辻褄が合わない。

ルカは信用し切れず、真意を問いただす。


「あんたが"レン"な訳がない。

 レンがこの時代にその若さで生きているとでも言うのか!」


 そう。 目の前の男はあまりにも見た目が若すぎた。

レンが魔術の時代を築いたのは百年も前の話。

二十代後半のような顔つきのようなその見た目を考えると、生まれ変わりでもない限りレンな訳がないのだ。


「そう思うのも仕方がない。 だが本当の事なんだ。

 僕は話さなければならない事があって君たちをここに導いた。

 訳がわからないかもしれないが、少し話をしよう」


 レンは落ち着いた面持ちでそう言うが、ルカはまだ納得のいかない表情を浮かべていた。

ルカは元々レンを崇拝している。

もしレンを偽った誰かであれば許さないという気持ちが表情に出てしまっているのだ。

誰よりもルカの理解者であるダンはそのルカの気持ちを察して間に入り、話を切り出す。


「わかった。 まずは話を聞こう。

 だが、整合性が取れない話だと判断した場合、

 俺達もお前を敵とみなす。 それでいいか?」


 ダンはレンに向けてそう話し、ルカの肩をぽんっと叩き、落ち着けという合図を送る。

ルカは浅く溜息をつき、目線を斜め下にずらした。


「それで構わないよ。 ありがとう。

 ここで話すのもなんだ。

 奥に案内するから僕に付いてきてくれ」


 レンは振り返り、馬の魔物の背中をトントンと叩いて神殿の奥へと歩き出す。

馬の魔物も従うようにレンの後ろをついていった。

異端解放団も警戒はしているものの、レンの背中を追うように付いていく。


 凛はレンの黒魔術という言葉を聞いて、抱えていた謎の一つに仮説が立っていた。


 ・・・あの人が黒魔術の使い手だというのは、きっと本当だ。

魔物を見た時、何となく親近感に近いような何かを感じていた。

それが何なのかわからなかったけれど、あの人が黒魔術の使い手と言った時、その違和感の正体が分かった気がする。

私の仮説が正しければ、魔物達の正体は黒魔術の〈ストレンジアンデッド〉で蘇ったゾンビ軍団・・・。

死んだ生き物たちを蘇らせてあの人が従えている。

これが合っていれば、間違いなく魔物を生む根源はこの人という事になる・・・。


・・・なんでもっと早く気付けなかったんだろう。

でも私の魔術の場合は死体が黒紫に光る事も無かったし、魔術を使わせることもできなかった。

しかも遠隔であんなにも複数の死体を・・・。

もしかすると、私よりも遥かに強い黒魔術を使えるのかな・・・。


 凛は俯きながら皆についていく。

皆にこの仮説を話すべきか迷ったが、レンに聞こえてしまう可能性と、この仮説で皆の不安を煽ってしまった時の空気を考えると、喉が詰まり、声を発する事が出来なかった。


 だが、凛から見るレンの後ろ姿は隙だらけで、こちらを全く警戒していない様子に見える。

それも相まって、変に不安を煽る話をする必要はないと無理くり自分に言い聞かせた。

そんな思考をしている内に、奥のスペースに凛達は辿り着く。


「さあ、適当に座って」


 レンに案内された場所は円状の大きな石のテーブルを中心にした会議室のような場所だった。

会議室といっても、石造りの丸テーブルと朽ちた木の椅子しかなく、何本かの柱で支えられただけのこのスペースは外の風景も丸見えの空間だ。

自然に囲まれた神殿での円卓会議。

簡潔にまとめるならこのフレーズが一番適しているだろう。

各々は木材が乾燥して今にも足が折れそうな椅子に座っていく。

全員が座ったのを確認し、レンは馬の魔物の背中を再び叩き、自らも席に着く。


「そうだな、先ずは何から話すべきか」

 

 レンがそう言っている間に馬の魔物はこのスペースの入り口の方へと戻っていった。

見張りにでも向かわせたのだろうか。

ルカは馬の魔物がどこへ行くのかに一瞬気を取られたが、レンの方へ向き直して口を開く。


「先ずはあんたが"レン"だって俺達にわかるように話しをしろ。

 あんたが俺達に話したい事はそのあとだ」


 レンは目線を上に向けて考えるような素振りを見せたあと、全員へ目配せをして話し始める。


「うん、どちらにしても僕の事を話すところから始めた方がわかりやすい話だ。

 ただ、僕は記憶の一部一部が断片的に失われているから、少し不便をかけるかも知れない。

 そこは勘弁してほしいが、十分に辻褄が合う話はできると思うよ」


 レンは咳払いをし、長きに渡る壮大な自分の物語を語り始める。




 僕の最初の記憶は、君たちと話しをしているまさにここの記憶だ。

僕は君たちと同じくらいの歳の時に、突然この神殿で目が覚めた。


 早速で申し訳ないが、自分がそれ以前に何をしていたのか、どう生きていたのかは分からない。


 当時の事で覚えているのは、僕は最初から四つの魔術を感覚的に扱う事ができたことと、その力を駆使しながらここで独りで生活していたという事だ。


 この場所は当時、危険な肉食動物が多く存在していて、人が寄り付く事などまずあり得なかったから、本当に孤独な日々を送っていたよ。


 だがある日、この誰もこないはずの辺境の地に一人の女の子が迷い込んだんだ。

当時の僕とあまり歳は変わらない十八歳とかそのくらいの年齢の子で、名前はラウラ。


 ラウラもここに誰かが住んでいるとは思っていなかっただろうから、僕を見つけた時はひどく驚いた顔で僕の方に駆け寄ってきたよ。

 誰かを見つけた安心感からか、僕と会うやいなや、いきなり泣きながら身の上話をしてきたんだけど、聞くところによると、彼女は魔術の暴発をさせてしまい、集落から追放されてここに辿り着いたみたいだった。


 ラウラは炎の魔術の適正がある子で、暴発により住んでいた集落の家屋が全焼。

全員に白い目で見られながら出ていけって言われたそうだ。


 住む場所を失った彼女を気の毒に思った僕は、この場所で共に生活する事にして、色々な魔術の知恵を与えることにしたんだ。

そこで初めて魔術を人に教えるという事を覚えたんだけど、中々難しくて試行錯誤したよ。


 それから共に過ごし始めて数カ月くらい経過した時かな、ラウラは少しだが炎の魔術を扱えるようになったんだ。

少なくとも暴発する事はなくなって、初歩的な魔術が扱える程度だけどね。

それでも彼女はとても喜んでいて、僕の事を師匠と崇め始めた。

さすがに照れ臭かったが、聞くところによれば魔術を扱える人間など外にはいないとの事で、ラウラと同じような追放や、最悪死刑も平気で横行している事をその時初めて知った。

 

 それからは君たちの知っての通り、世の中の人達に魔術の扱い方を広める旅を始めたんだ。

各集落を回り、魔術の扱い方を伝授しては別の集落へ、ひたすらそれの繰り返し。

それを何年も何年も続けていった。




「そしていつの間にか崇める人が増え、神の使いとして四神教を立ち上げたってか?」

 

 ルカは挑発的な態度でそう言い、まだ言い収まらない様子で話を続ける。


「そんな話の繋げ方なら誰だってできる。

 今の話が"レン"である証拠にはならないぞ」


 ルカはレンの方を鋭い眼光で睨みつける。

レンは苦笑いを浮かべながら両手を前に出して落ち着いてと手振りをする。


「さっき話した内容は皆が知っている四神教立ち上げに繋がるまでのお話だが、

 確かに言う通りで僕が"レン"という根拠にはならない。

 だからここからは、誰も知らない"レン"の話をしよう。

 僕が歩んできた全て、黒魔術師として追放された話なども含めてだ」



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