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与えられた禁忌の魔術で復讐を ~凛として咲く仇花~  作者: 一ノ瀬 凪
第二章 邂逅するスノードロップ
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51. 導かれる異端解放団


 ダンは寝起きのせいからか頭があまり働かず、口が半開きのまま暫く立ち尽くした。

目線の先の馬型の魔物も、ダンを襲う事もなくただそこに居続ける。


 おぼろげな薄明に微かに照らされた枯れ木の森を背景にすると、馬が纏う黒紫の光がより強調され、魔物なのにも関わらず神々しさすら感じられた。


 ダンは段々と頭が冴えていく中でどうしたものかと考える。

何故いま襲われていないのかもわからないし、下手に動いたら襲われたりするのだろうかとも考えた。

魔物というよりかは、野生の馬と出会った時のような思考回路になってしまう。


 そんな事を考えていると、馬の魔物の方から動き始めた。


 ブルルルッ


 口を震わせながらダンへと差し出すように頭を近づけてきたのだ。


「触れても平気なのか・・・」


 ダンは少し愛着すら湧き始め、恐る恐る馬の頭に手を伸ばす。

伸ばした手は、纏う黒紫の光を貫通し、馬の頭へとついに届く。


「おぉー・・・」


 ある種の感動のような感情がその言葉を口にさせる。


 ブルルルッ


 魔物の反応的にも、何となく喜んでるようにダンは感じた。


「本当にお前たちは討伐しなければならない存在なのか・・・?」


 ダンは自分達の目的が正しいのかを疑い出した。

見た目は確かにおぞましいが、目の前にいる魔物から危険性は感じない。

今まさに目の前で起こっている事を考えると、本当に普通の動物と違わないではないかとダンは思う。


 ダンは皆が起きてくるまでの間、魔物とのコミュニケーションを図ることにした。

当然、周辺の警戒も行いながらではあるが、目の前の魔物も警戒するべき対象なのを忘れる程にダンは心を許してしまっていた。

だがその警戒も杞憂で、結局魔物はそれ以降も暴れる様子もなく、大人しくダンの傍に居続けたのであった。


 馬の魔物との戯れが楽しくなってきた頃、ズサァという土壁が地面へと還る音が聞こえてダンは後ろを振り返る。

異端解放団の寝床を囲っていたナギの土壁の魔術が崩れ去ったようだ。

すると円状に設置される六つのテントの一つからナギが目を擦りながら顔を出した。

恐らくナギが目覚めて、土壁の魔術を解除したのであろう。


「おうナギ、おはよう」

 ダンは魔物の頭を撫でながら挨拶をする。


「・・・え・・・夢?」

 ナギは目の前の光景を現実と受け止めれずにそう呟いた。


-------------------------------


「「ええぇぇええーー!!!」」


 ダンはメンバー全員に朝の魔物との出来事を伝えたところ、全員が驚愕の表情で声を上げた。


 ルカはダンを指さしながら口をぱくぱく震わせて話し出す。


「めちゃめちゃダンに懐いてるじゃねぇか・・・!」


「あぁ・・・まあな」

 ダンは馬の魔物を横目に見ながら満更でもない表情で答える。


 凛は目を瞑りながら傾けた頭を人差し指で支え、何かを考えながら口を開く。


「何かこう、魔物とは何なのかが本当にわからなくなってきましたね・・・」


 凛が頭を抱える中、サキはただ目をキラキラさせて馬の魔物を見つめていた。


「あ・・・あたいも触ってみてぇ」


 魔物に夢中になっているサキを横目にナギが怪訝そうな表情を浮かべる。


「あんたやめときなさい・・・。

 触れても大丈夫な補償はないんだから」


「・・・・・・」

 これについては珍しくノアも、興味を示すような目線で魔物を見つめていた。


 異端解放団はここにきてこの不可解な出来事をどう受け止めればいいかわからなくなっていた。

討伐目標だった魔物が実は悪い存在では無かったというオチであれば、魔物の根源を叩くのも気が引けてしまう。

しかしながらそれを実行しなければこの遠征の意味すらも失う事になる。

だが、討伐を躊躇したらどちらにせよ勇者達によって魔物達は駆逐されるであろう。

メンバーの中で色々な疑問が浮かぶ中、リーダーであるルカは迷う事なく決断を下す。


「謎は増えたが、奥まで行けば答えがあるだろ!」


その決断は、現時点での情報量ではどう舵を切るべきかの判断はしかねるという見解と、魔物とは何なのかの真相を突き止めたいという欲求と、凛が勇者達と接触したいという要望を鑑みての結論だった。


 リーダーの一声で全員が馬車に荷物を積み込み始め、出発の準備に動き出す。

馬の魔物はそれを待つようにこちらを見つめていた。


 準備を終えて全員が馬に乗り、ダンも自分の馬に乗った所で異端解放団は動き出す。


「よし、出発するぞ」

 先頭のダンは後ろに向けてそう声を掛け、馬を進ませる。


 すると、先程までずっと動かずにいた馬の魔物も同時に駆け出した。

その魔物の足音で全員が一瞬身構えて魔物の方に視線を向けたが、馬の魔物は先頭のダンとナギよりも更に前へと移動し、相変わらず襲うような素振りはなかった。

ダンとナギは顔を見合わせて、魔物はどういうつもりなんだろうかを考える。


 先頭を走る馬の魔物は、こちらの馬車のスピードに合わせるかのように進んでいて、まるで異端解放団を先導しているかのような構図となった。

どうしたものかと思ったが、特に害はないのでそのまま目指す方向に進む事とする。


 異端解放団は枯れ木の森の奥に見える二つ目の山の抜け道を目指している。

一つ目の山脈と同様、二つ目の山と山の間にも隙間道が見えるので、そこに向けて進んでいるのだ。


 真っ直ぐその隙間道に向けて馬車を走らせる途中、ついに目の前の魔物が右側に逸れて進んでいった。

全員はここで魔物とお別れだと思い、目線で見送ろうとする。


 ヒヒーーン!!


 魔物は右に逸れた先で鳴きながら前足を天高く掲げる。

皆はさよならの合図かな等と妄想しながらそれを見つめていたが、次の瞬間それがそんな合図では無かった事に気付く。


 ズドドドドッ!!


 馬の魔物が前足を地面につけた途端、突如として異端解放団の進行方向に土壁が立ちはだかり、ダンとナギが乗る馬達は急停止する。


「わあっ!!」

 ナギは前のめりになりすぎて馬から落ちそうになったが、何とか持ちこたえた。


 ダンは今起きた事が魔物の仕業だと頭の中で理解するが、信じたくないような気持ちに見舞われる。


「どういうことだ!」

 ダンは魔物に向けて通じない言葉で思わず問いかける。


 視線の先の魔物は、それ以上動かずに立ち尽くしてこちらを見つめていた。

魔術を発動されて身構えていたルカも、その姿を見て動きを止める。


「・・・何がしたいんだ?」


 ルカはそう呟きながら馬の魔物を観察する。


 馬の魔物はこちらに向けていた身体を逆側に向けていく。

そして頭をクイクイっと動かし、まるで付いてこいと言わんばかりの所作を見せた。


「付いてこい・・・って事か・・・?」


 ルカは動きの意図をそのまま汲み取った言葉を口にする。

一瞬色々な疑念が生まれたが、何となくこの魔物に付いていった方が良いという予感が胸に湧き上がる。


「・・・ダン! ルート変更だ!

 あの魔物についていってくれ!」


 ルカは自分の直感を信じ、ダンに指示を出した。

ダンにとってもあの魔物を信じたい気持ちがあった為、今回はスムーズに応じて馬を方向転換させる。

ナギは少し不安が残り、ダンに向けて小さい声で問いかける。


「本当にいいの・・・?」


「・・・・・・わからん」


 ダンはいま、自分が合理的ではなく感情的に行動したのを自覚しており、自信が無いような口ぶりでそう返事をした。

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