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与えられた禁忌の魔術で復讐を ~凛として咲く仇花~  作者: 一ノ瀬 凪
第二章 邂逅するスノードロップ
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49. 中ボス攻略


 卓也は野営地に戻り、会議用のテントに勇者達を集めて崖の先に何を見たのかを共有した。

トカゲ型の魔物が道を塞いでおり、見張るかのように巡回していると。

その話を聞いた勇者達は考えられる敵の攻撃パターンを洗い出し始め、対策がどんどんと出てきた。


 卓也はこんなにもスムーズに話が進む事に対して何とも言えない違和感を覚える。


 てっきりもう少し感情的な話になると思っていたが、こんなにも合理的に話が進むとは。

俺が思っている以上に全員覚悟が決まっている。

なんだろうな・・・自信がついたとかのレベルじゃない。

俺が知らない間に何かがあったのか・・・?


 卓也がそうこう考えている内に話はあっという間に話はまとまり、懸念が解消された状態で作戦会議は終了した。


 卓也はテントから出て、目に映る兵士達の姿を眺めながら歩く。

各々が役割をちゃんと果たしており、食事も既に出来上がっていた。


「卓也様のテントへお食事をお持ち致しましょうか?」


 一人の兵士に声を掛けられ、卓也は頷く。

そのまま自分のテントへと入り、ベッドへと腰を掛けて一息ついた。


 初日は順調に終えたが、明日からはどうだろうな。

勇者はともかく、兵士からは死者がでてもおかしくない。

少なくともあのトカゲとの戦闘で被害を受けないように兵士をコントロールしないとな。

目指すはパーフェクトゲームだ。

非の打ち所が無い程に完璧にこなしてやる。


「失礼します」


 テントの入り口の布が捲られ、一人の兵士が食事を持ってきた。


「ありがとう」


 卓也はお礼を言い、兵士は帰るかと思いきやテントの中にもじもじと立ち尽くしていた。

なんだと思い卓也は兵士に声を掛ける。


「・・・どうした」


 卓也のその問いを待っていたかのように兵士は口を開く。


「いや、勇者様に渡したいものがありまして・・・」


 兵士はそう言い、腰回りに手をやりながらごそごそと何かを外す。


「こちらをどうぞ」


 その兵士の手に握られていたのは、鞘に入った短剣だった。

少し古傷が目立つが金属製の立派な代物だ。


「・・・なぜこれを俺に?」


 卓也は素朴な疑問を投げかける。


「これは・・・父の形見です。

 実は私の父は二十年前の魔物領土討伐遠征に参加していて、

 帰らぬ人となりました。

 本当は自分の手で魔物に仇を討ちたかったんですが、

 残念ながら私にそんな力はありません・・・。

 どうかこの形見を卓也様に受け取っていただき、

 いざという時に使っていただきたいんです」


 卓也は自分達がやるべき事に色々な想いが乗っている事を実感する。

だからといって何かが変わる訳でもないし、変えるつもりもないが、便宜上その気持ちを汲み取る意志を示す為にありがたく受け取るにする。


「そうか。 わかった。

 この短剣は有難く受け取り、この遠征も必ず成功させる」


 卓也のその言葉に兵士は目頭を熱くさせながら頭を大きく下げ、テントから去っていった。


 卓也はその短剣をベルトに差し込み、食事にありついた。



 


 翌朝、勇者達の遠征部隊は野営地をそのまま残し、出発する。

この遠征は遅くても一週間程度で奥地に到達する事を予想され、物資が準備されている。

途中途中で野営地を作っていくことで拠点を広げていき、帰りも同じ野営地を経由して帰還する手筈だ。

だが当然想定外に時間がかかる可能性もある。

勇者達はその可能性を危惧し、最速で奥地へ到達したいと考えていた。


 今日、崖を越えた先であのトカゲの魔物との戦闘が予想されるが、馬車は移動に時間がかかる為、馬車と兵士には早苗を護衛につけて崖の隙間道を進ませる。

そして卓也、瞬太郎、舞の三人は移動魔術で先に進み、馬車が追いつく前にトカゲを倒し切る予定だ。


 兵士達に見送られ、勇者の三人は魔術を発動して先へと進む。

かなりの速さで十五分程移動した先で、昨日確認したトカゲの魔物を発見した。


「あれだ」

 卓也は停止し、魔物の方向を指さした。

瞬太郎と舞もその指の先を確認する。


「殺し甲斐がありそうじゃねぇか」

 瞬太郎はニヤリと笑う。


「食べられたら一口でおしまいだねぇ・・・」

 舞は食べられた後を想像して気分が悪そうな顔をした。


 ズシン...ズシン...


 トカゲ型の魔物はまだこちらに気付いていない様子でゆっくりと歩いている。


 勇者達はお互いアイコンタクトを取り、ゆっくりと魔物へと近づく。

卓也と舞は低空飛行していき、瞬太郎は地表をめくりあげてその上に乗る形で移動した。

魔術が届く有効範囲まで近づいた所で瞬太郎から動き出す。


「崩土・サンドフロー!」


 のそのそと四足歩行で歩く巨大な魔物の足元が、砂の渦へと沈み始める。


 シャァァアア!!!


 魔物は異変に気付き、喉を唸らすように鳴き声を上げた。

だが異変に気付いた時にはもう遅く、足の短いトカゲ型の魔物は既に半身が埋まる。


 卓也は空へと上昇し、魔物が身動きが取れなくなったのを確認してから炎の魔術を唱える。


「灼熱駻馬・インフェルノ!!」

 

 卓也の周りに炎が顕現し、渦を描く。

その炎が卓也の目の前で徐々に馬の形を成していき、魔物へと駆け出した。


 トカゲ型の魔物は目をギョロッと動かし、炎の馬を視認したようだ。

すると魔物は自ら素早く砂の渦の中へ潜っていき、地面の中へと姿を消す。

卓也が生み出した炎の馬は魔物を見失い、砂の渦の手前で急停止する。


 それを見た舞は疑問が浮かんだ顔をして瞬太郎に問いかける。


「え?勝手に埋まってくれたし、もう終わりじゃない?」

 

 瞬太郎は舞とは対照的に怪訝そうな表情で問いかけに答える。


「いや、俺の砂の渦を突き抜けて地中に消えた・・・」


 瞬太郎は地面に手を当てていれば自分でコントロールしている領域がどうなっているかをある程度把握できる。

瞬太郎が感知している範囲は地面を砂に変えた部分までだが、その砂の渦に変えた部分よりも深い所まで魔物は潜ったようで、瞬太郎は魔物を感知できなくなっていたのだ。


 ゴゴゴゴゴッ


 突然地響きが鳴り、地面が揺れ動く。

瞬太郎は嫌な予感がし、土の魔術で足元に四角柱を召喚して上へと移動しようとする。

舞も同様に低空飛行していた位置から高度を上げて卓也のいる位置まで上昇した。


 バゴォォォン!!

シャァァアア!!!!


 瞬太郎の足元から地面を引き裂き、トカゲの魔物が口を大きく開いて出てきた。

瞬太郎が召喚した四角柱は根本が折れて傾き、四角柱ごと魔物の口の中へと吸い込まれていく。


「やばいっ!」


 瞬太郎は四角柱ごと魔物の口の中に吸い込まれていく最中、キリングバトルの時に戦った相手との戦闘を思い出す。


 俺の砂から抜け出したあの技・・・。


 次の瞬間、瞬太郎は足元で土の魔術を発動し、四角柱から高速で一枚岩を押し出させて自分を吹っ飛ばした。

開いた口の中へと一瞬だけ入った瞬太郎だったが、咄嗟のその魔術により飛び出すように口の中から脱出する。


 ガブッ!!


 魔物の口は閉じられ、四角柱はやすやすと嚙み砕かれる。


 瞬太郎は飛んだ先に新たな四角柱を生成し何とか着地したが、一瞬死を感じたからか身体がソワソワするような感覚に襲われた。

それと同時に込み上げてくるような笑みが零れる。


「ハッ!まさか魔物なんかにこんな気持ちにさせられるとはな!!」


 命のやり取りをした感覚が、瞬太郎のボルテージを上げた。


 滞空していた卓也は瞬太郎が逃げ延びたのを確認した後、さきほど顕現させた炎の馬を操り、再びトカゲへと向かわせていた。


 トカゲの魔物は近づく炎の馬に気付き、馬の方に顔を向ける。

そして口を大きく開き、身体に纏っていた黒紫の光が一瞬白く発光した。

刹那、魔物の喉の奥にメラメラと炎が顕現し始め、炎の馬へ向けて炎のブレスが放たれる。


 卓也はそれを見て自分の予想が外れた事に驚いた。


「こいつ、炎の魔術を使うのか・・・」


 卓也は先ほど土の中へ潜ったのを見た時に、土の魔術を使う魔物と判断していた。

その予想が外れ、魔物が繰り出す炎の魔術により卓也の召喚した炎の馬は相殺されて消失する。


 トカゲの魔物はそのまま顔を卓也と舞の方に向けて、二人へも炎を浴びせようとした。

しかし、舞と卓也は華麗に飛び回り、魔物の背中側に回り込むように移動する。

首の周り切れないトカゲの魔物は一度口を閉じ、目線をギョロギョロとさせてターゲットを切り替える。

素早く動き出した魔物は四角柱の上に乗る瞬太郎の方へと突っ込むように駆け出した。


 卓也と舞は、トカゲの魔物が瞬太郎をターゲットにしたのに気づき、魔物の後を追うように飛ぶ。


 瞬太郎は突っ込んでくる魔物を見て、目をギラつかせながら口角を上げた。

両手をパンっと合わせ、瞬太郎は最大の魔力を込めて魔術を詠唱する。


「大地の反逆・ギガントマッドォォオ!!」


 瞬太郎がそう叫ぶと、大地が怒りに震えているかのように揺れだした。

そして次の瞬間、地面から巨人の腕のような岩石がトカゲの魔物の顎を狙うかのように拳を振り上げる。


 ドゴォォン!!


 魔物はその巨大な拳によるアッパーを食らった瞬間、口と顎が歪み、真上へと飛び上がる。

そのままひっくり返るように回転し、腹を空へと向けて地面に落下した。


 卓也と舞は、瞬太郎が作ってくれた好機を逃さない。

ひっくり返った魔物の真上で二人は停止し、魔術を唱える。


「紅蓮の旋風・インシネレイション・フレイム!」


「狂風・インサニティハリケーン!」


 卓也の手の平から炎の渦が巻き起こり、螺旋状に魔物の腹を目掛けて勢いよく向かっていく。

その渦をくぐっていくように、舞の暴風が景色を歪めながら突き抜けていった。

すると舞の魔術に後押しされるかのように螺旋状の炎の火力が増していき、勢いづいた炎の音が耳に響く。


 ブゥォオオオオオ!!!!!


 二人の炎と風の魔術が重なり合い、相乗効果が生まれる。

単体での魔術よりもはるかに強い威力で魔物の腹にその魔術は直撃した。


 シャァアアアア!!!


 魔物の腹は暴風の圧力でえぐれていき、内臓が破裂していく。

その内臓を飛び散る事も許さず炎の渦が焼却していき、魔物の腹には大きな風穴が空いた。

魔術が収まったころには魔物も鳴き声を上げる力を失い、僅かに動いていた四本の足もついに動かなくなる。

すると昨日の魔物と同様に魔物の身体はホロホロと崩れていき、黒紫の光と共に空気と化していった。


 卓也と舞はそれを確認し、地上にいる瞬太郎のもとへと降り立つ。


「ハァ、流石に移動用の魔術を発動しっ放しだと魔力をそこそこ持ってかれるな」

 

 卓也は膝に手をつき、そう呟いた。

舞も地面に座り込み、両腕を後ろにつきながら空を見上げて卓也に同意する。


「戦闘中はそんなに気にならないけど、終わった後に一気に疲れが込み上げるよね・・・」


 瞬太郎は空中に浮かぶタイプの移動魔術ではない為、戦闘における移動ではそこまで大きく魔力を消費しない。

疲れた様子の二人を見て、瞬太郎は優越感に浸りながら苦言を呈する。


「ビビッて空の上に逃げてるからだ。

 もっと魔力を攻撃に回せばいいだろ」


 舞はその発言が気に障り、言い返す。


「はぁー?なにそれ。僻み?

 瞬太郎は空を飛べないから嫉妬してるの?」


「あ? 俺があの魔物に一撃喰らわせたから

 お前らの魔術が当てられたんだろ?

 俺が居なかったらどうなってたんだろうな?」


 舞と瞬太郎の言い合いが始まる中、卓也の目線の先に早苗と兵士達がこちら側に向かってくるのが視界に入る。

卓也は兵士達にこんなしょうもない言い合いの場面を見せる訳にはいかないと思い、しぶしぶ喧嘩の仲裁をする。


「おい、早苗と兵士達がきてるぞ。

 低レベルな言い争いはやめてくれ」


「ちっ」


「ふんっ!」


 瞬太郎と舞は背中を向け合い、遠征部隊のそれぞれの配置に移動していく。

二人は学生の頃からひょんな事でぶつかり合う事が多かった。

普段あまり突っかかる事のない舞からしたら、ある意味瞬太郎は言いやすい存在なのかもしれない。

それを瞬太郎がどう思っていたかはわからないが、形容しがたい距離感である。


 卓也は先が思いやられ、溜息をつく。


 兵士達は魔物を先に倒して安全なルートを確保してくれた勇者らに歓喜し、士気が上がっていた。

しかし逆に勇者達はその士気の温度感に合わせられるほど熱くなれず、先ほどの些細な喧嘩のせいで少しばかり空気も悪くなっていた。

卓也はこの空気に頭を悩ませたが、今は魔物の領土内。

空気感よりも戦闘に対しての意識を高め、結局考えない事にした。


 そして正午過ぎ、勇者達の遠征部隊はトカゲの魔物が守っていた道を抜け、新たな大地に足を踏み入れる。

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※2023/6/19~ 上記曜日に変更してます。


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