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与えられた禁忌の魔術で復讐を ~凛として咲く仇花~  作者: 一ノ瀬 凪
第二章 邂逅するスノードロップ
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48. 魔物領土


 勇者達は魔物領土に向けて、馬車を進めていく。

隊列としては、四十名の兵士と馬車を囲むように四人の勇者が前後左右に位置している。

前が卓也、右が瞬太郎、左が早苗、後ろが舞という布陣だ。

勇者達もそれぞれ馬に乗り、馬車に合わせてゆっくりと進んでいく。


 昨晩のパーティーで兵士達と話しをしてわかったが、やはり兵士達は不安を抱える者も多かった。

勇者達が若いので実力を疑っている者もいたが、未だかつて魔物領土から生きて帰った人間がいないという事実がなによりも拭えない不安だった。

そんな兵士達の唯一の救いが、予言書の記述内容だ。

〈 勇者が魔物達を打ち滅ぼす力を持つ 〉

予言書のその記述だけが兵士達の希望だった。


 この世界の人間は、四神教を作った教祖レンを崇めている。

噂によれば、予言書は恐らくレンが残した書物であろうという説が有力で、全員は予言書に圧倒的信頼を寄せていた。

勿論信用していなかった者もいたそうだが、実際に勇者の召喚に成功したと発表された時、疑う者もいなくなったという。


 だが実際に召集された兵士達からすると、その予言書だけで安心できるという訳ではない。

当然、魔物達を討伐できない可能性も考えてしまうだろうし、仮に魔物達を討伐できたとしても、その功績に何の犠牲も払わないかどうかはまた別の話だ。

もしかしたら、激戦の末に勇者の三名が死亡し、一名だけが生き残り、最後の魔物を討伐し切ったという結果もあり得るだろうし、勇者四名だけが生き残り、兵士の四十名は殉職したという結果も考えれるだろう。


 先頭を進む卓也は、その兵士達の不安をどう払拭しようかと考えながら馬を歩かせていた。

すると視界の先に枯れ木だらけの森が映り出し、もう魔物領土が目の前に来ているという事を理解する。


「いよいよか」


 卓也が右手を上げ、全体の進行が停止する。

卓也は馬に乗りながら顔だけ後ろへ振り返り、スーッと深く息を吸い込む。


「この先からはもう魔物領土だ!

 いつ魔物が襲ってくるかはわからない!

 俺達勇者が可能な限り対処するが、もし戦闘に巻き込まれたら

 持ってる盾と剣で対応してほしい!

 気を引き締めてくれ!」


 卓也のその号令に兵士達が返事をする。


「ハッ!!」


 その卓也の号令は一番後ろの舞まで届いており、舞は思わず感心する。


「卓也、様になってて凄いなぁ」


 勇者という扱いを受けているが前の世界でいえば現在高校三年生の代だ。

召喚当時は高校二年生だったが、それから修行の400日を経て今に至っている。

舞からすれば同い年の男子がこの人数の兵士を率いて物怖じしないだけで凄いなと感じてしまう。


 その舞と同じくして、兵士達も似た感情を抱いた。


「若くてもやはり勇者様だ」

 そう呟く声が舞の耳に届く。


 不安がっていた様子の兵士達も先ほどの号令一つで気合いが入ったのか、顔つきが変わった。


 卓也が再び前を向いて馬を動かす。

それに合わせて隊列も動き出し、ついに魔物領土へと侵入していく。

枯れ木だらけの森の中、毒々しい色合いの木々も散見され、卓也はいかにもな魔物の地だなと心の中で思った。


 周囲を警戒しながら進んでいくと、早速遠くから魔物らしき小さな黒紫の光がこちらへと向かってくるのに気づく。

卓也は右腕を上げて叫んだ。


「来るぞ!!」


 隊列が停止し、勇者達は馬から飛び降りて戦闘態勢に入る。

早苗と瞬太郎は卓也の横へと移動し、舞は風の魔術で中央の馬車の上に滞空し、他にも敵がいないか索敵する。


「え?」

 早苗は遠くに映る魔物を見て拍子抜けかのような声を出す。


 その視線の先には黒紫の光を纏う魔物達が見えるのだが、兎やリス、たぬきやきつね等の姿をした魔物が十匹程で、正直それほど脅威に感じられるような見た目ではなかった。


 瞬太郎もそれを見て反射的に身体の力を抜き、呟く。


「弱そうだな」


 卓也は早苗の方へ向いて指示を出した。


「様子見で遠距離魔術を放ってみてくれ」


 卓也の指示を受け、早苗は頷き魔術の詠唱をする。


「貫く氷晶・アブソリュート・フリーズ!!」


 魔物の群れに向けて、轟音を鳴らしながら地面から氷が隆起していき、大きい棘状の氷が魔物を襲う。


 ズシャズシャズシャ!!

 

 氷の棘が全ての魔物を貫き、魔物達は動かなくなる。

すると数秒後にホロホロと崩れるように魔物達は黒紫の光と共に消えていった。


「倒した?」

 早苗はあまりにも呆気なさ過ぎて疑問を抱くようにそう言った。


 卓也は一撃で葬り去られる魔物を見て、頭の中で色々と仮説を組み立てる。

その横で瞬太郎は残念そうな表情を浮かべた。


「おいおい本当に弱えじゃねぇか。

 こんなんなら四人も必要なさそうだな」


 その瞬太郎の言葉に卓也が反応する。


「いや、あくまでまだ魔物領土の入り口だからこの程度なんだろう。

 俺達が氷壁の国で戦った鳥型の魔物はこんなものではなかった。

 恐らくだが、奥に進めば進むほど魔物も強くなるはずだ」


 早苗は納得したような顔をして、口を開いた。


「たしかにそうね。

 あとどうでもいいけど魔物って殺すと消えていくのね。

 前の鳥型の魔物は卓也の炎で燃えていたから気付かなかったわ」


 卓也もそれに気づいていて、早苗に答える。


「死んだら消えるのであれば、

 死んだかどうかをわざわざ確認せずに済むから都合がいい。

 鳥型の魔物の時と同じ轍は踏まないようにしよう」



 勇者達は再び馬に戻り、更に奥へと進む。

途中、同じような小さいサイズの魔物の群れに何度か遭遇するが、弱い事が証明されたので馬からも降りずに遠距離魔術で対処し、進行のスピードを上げていく。


 その余裕そうな勇者達を見て、兵士達は勇者がどれほどの実力を持っているのかを実感した。

これは全体の士気を上げる大きいきっかけとなり、兵士達の中で不安な顔を浮かべる人間が徐々に減っていく。

卓也もそれに気づき、実力を示すが一番早いか。と心の中で呟いた。


 卓也は頭の中で日が暮れるまでに進めるだけ進もうと考えていた。

現在いる場所は枯れ木の森の中だが、その先には高い絶壁が立ち塞がるのが見える。

当然兵士や馬はあの崖を登れないが、そびえ立つ崖に一筋の細い隙間があるのを卓也は視認した。

あの隙間の道からであれば崖を登らず通り抜けられそうなので、まずはそこを目指す。


 どんどんと日が落ちてきて、日の光がオレンジ色へと変わり始めた頃、目指していた崖の隙間に辿り着く。


 卓也は右腕を上げ、全体の行進を止める。


「もうそろそろ日が暮れる!

 今日はこの近辺で野営をしよう!

 俺は崖の先がどうなっているかだけ確認しにいく!」


 卓也はそう叫び、乗っていた馬を兵士に託し、手元足元に炎の魔術を発動させる。


 ボォォ!!


 卓也は火力に押し上げられる形で宙へ浮いた。

そのまま手足を器用に動かして山の向こうへと方向転換し、一気に火力を上げる。


 バァァアアア!!!!!


 圧縮された炎が爆発し、全員の耳に轟音が響く。

卓也はその火力によりとてつもない速度で崖の向こうへと消えていった。


 その場に残った兵士達は卓也を見送り、馬車に積まれた荷物を降ろして野営の準備を始める。

テントを張る者、篝火を灯す者、食事の準備をする者、四十名もいれば一時間足らずで夜を乗り越える準備は整うだろう。


 順調に準備を進める兵士達を眺める瞬太郎は全体の端から端を見渡す。


「範囲はこんなもんか」


 瞬太郎はそう呟いてしゃがみこみ、地面に両手を当てて魔術を詠唱する。


「鉄壁の布陣・インプレグナブル」


 すると、野営の準備をする兵士達を囲むように土壁が顕現し、小さな村のような形となった。

土の魔術はこういう場面でかなり役に立つ。

壁だけでなく、周囲を監視するようの物見やぐらも魔術で建設し、兵士が見張りをしやすくする。

これで魔物から夜襲を受けても安全に対処ができるだろう。


 先ほど崖の先へと飛び立った卓也は既に隙間道を抜け、崖の向こう側の景色を目の当たりにしていた。


「あれは・・・」


 そこには黒紫の光を纏う巨大なトカゲが、大きな足音をズシンズシンと鳴らし、先の道を塞ぐように巡回していた。

まるで恐竜のようなその魔物は絶壁に囲まれた目の前の空間を回っており、討伐しなければ進めないのを卓也は理解する。


「明日は中ボスの討伐だな。

 一旦帰って全員に共有するか」


 卓也はそう呟き、後ろへと方向転換してその場を飛び去った。






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