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与えられた禁忌の魔術で復讐を ~凛として咲く仇花~  作者: 一ノ瀬 凪
第二章 邂逅するスノードロップ
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47. 動き出す異端解放団

 

 勇者達が魔物討伐遠征へ向かう同時期、異端解放団もトランプとカレンの計らいによって、遠征に必要な食料や馬車、更には武器、防具を供給してもらい、いよいよ魔物討伐遠征に迎える状態となっていた。

それらの物資は異端解放団の屋敷に保管されており、もういつでも出発できる手筈が整っている。

メンバーは最終打合せを行い、明日にはウィズダムを発つことにした。


 そしてこの準備期間中にまた一人、異端解放団に入団したメンバーがいる。


「ノア、もう飯は終わりか?」

 早朝、料理に伸ばす手が止まっているノアにダンが声を掛ける。


「・・・・うん」

 ノアはコクリと頷き、息が混じった無機質な声でそう言うと、ダンがノアの分の皿も片付ける。


 少し黄緑がかった白髪の天然パーマで、男の割には背丈の低いノアは少し幼く見られていた。

ルカ曰く幼少期の記憶の殆どを失っており、会話も最低限レベルしか発さなく、かなり無口な男の子だ。

生活に関してもダンが面倒を見るような形になっており、傍から見れば子育てをしている父子家庭のようだ。

当然記憶がないためノアが何歳なのかも不明であるが、ルカはきっと十五歳くらいではないかと睨んでいた。

だが目も大きく中性的な童顔の為、きっと実年齢よりも幼く見られることも多いだろう。


 そんな幼さが残る彼も異端能力を持っており、その能力は強力なものだった。

それは、人形を作りだし、その人形を爆発させる事ができる能力である。

人形の形はノアの頭の中で描けるものなら殆どを形容する事ができ、動物のような人形も作れれば、自分と同じ姿の人形を作りだすこともできる。

ただ、作れる人形の大きさは自分のサイズと同じサイズまでの人形が限界で、それ以上の大きさの人形は作る事ができない。


 その能力は普段の生活スタイルからきているものなのかわからないが、ノアは普段から人形遊びばかりしている。

いつも決まって二つの人形で遊んでおり、縫製で作られた目がクリクリとした可愛い人形だった。

服装的に、片方が青、片方が赤なので、おそらく男の子と女の子の人形なのであろう。

ノアにどこで買ったのかを聞いても、わからない、記憶がある当持から持っていたという。

最初はそのノアの事を少し不気味に感じていたメンバーもいたが、一緒に生活が始まると、無垢な子供を見ているかのような感覚で、皆は暖かい目でノアを見守った。


 ルカはノアを眺めながら全員が席に着く食卓で大きい独り言を言う。


「早くノアの能力を皆に見せてやりたいな~」


 ルカは椅子を斜めに傾け、両腕で頭の後ろを支えながら意地の悪い笑みを浮かべる。


 その一言にナギがうずうずしているかのような反応を見せた。


「ウチらも早く見たい!」

 机をバンっと叩き、ナギは身を乗り出す。

 

 ナギはまだノアの能力の強さに半信半疑だった。

ナギよりも幼く、普段人形で遊んでいる姿しか目にしていないからか戦うイメージが全く想像つかないようだ。


 なぜルカ以外のメンバーが能力を見ていないかというと、ルカが一度見せてもらった際に、爆発の威力が大きすぎて街の中ではとても使わせる事が出来ないという判断を下したからである。


「びっっっくりするぜ?」


 ルカは直近、全員の期待のハードルを上げるような事をよく口にしていた。


 そのルカの言葉にサキは気になりすぎて頭を抱えだす。


「あたいもめっちゃ気になるぅーー!」


 サキは首をぶんぶん振り、金髪のポニーテールを大きく暴れさせている。


 その様子を眺めていた凛は興味津々なナギとサキを落ち着かせないとと思い、眉毛をハの時にしながらも笑顔で口を開いた。


「あ、明日から遠征だし、魔物との戦いになれば沢山見れるよ~」


「早く明日になって欲しいぃぃい」

 サキは凛の言葉で落ち着く様子はなく、それでも頭を振り続けた。


--------------------------------------------------------  


いよいよ明日に迫る異端解放団の魔物討伐遠征だが、ノアも含めたフォーメーションは既に決まっている。


まず、先頭はナギとダン。

空を飛べるナギが索敵を常におこなっていく。

また、戦闘になった際も火力の高いナギと、魔物の気を引き付けるのに適したダンが阿吽の呼吸で連携を取り、敵とのメインの戦闘を行う予定だ。


先頭の二人に続く中間がサキとルカ。

サキは遠距離魔法が多く使えるので先頭の二人に攻撃の支援を行う形で、ルカは魔物が魔術を扱う際にその発動を抑える事で敵の打つ手を無くしていく役割だ。


そして最後に後方が凛とノア。

一番危険が及びにくいポジションとして、馬車で物資を運ぶ役割と、ノアの人形の魔術で遠距離サポートを行う。

凛についてはもう黒魔術が殆ど発動できない状態になっているので、実質物資の運搬とノアの面倒を見るのが役割だ。


 力を使えない凛が遠征に行くのは危険では? という意見も当然上がった。

しかしこの時凛は、全員の前で勇者と接敵したい願望を伝える。

その時に黒魔術が使えるなら、凛は勇者と戦うという意志を表明した。

ただもし、勇者達を見ても覚醒できなかった場合、その時は大人しく引き下がるつもりという事だ。

そして、その自分の復讐に皆を巻き込みたくない旨も、凛は伝えた。

仮に戦闘になる場合は自分一人で戦うつもりだし、皆には避難してほしいと。

それに対して皆は、凛を置いて避難するなどできないと答えた。

この議題については少し揉めた末に、戦闘には参加しないが本当に危なくなったら凛を助け出すという折衷案で全員が納得した。



 そして、キースに関しては変わらず研究を続行している。

キースが研究を始めてから、異端解放団のメンバーはそれぞれの血液の提供なども行っており、その人体の謎を解明する研究を行って貰っている。

正直途方の暮れるような先の見えない研究なのは間違いないが、キースはトランザの意志をちゃんと受け継ぎ、研究に熱中している。

そしてそれは、トランザだけでなく、トランプやカレンの願いでもあった。


 キースが二人にトランザと交わした言葉について話した際に、二人にも頭を下げてトランザの願いを叶えてくれとキースは頼まれていた。

トランザのような悲劇に巻き込まれる異端者が今後出ないように、今後生まれ出る異端者達の未来の為に、宜しくお願いします、と。

それはキースにとって大きな出来事だった。

自分が信じる大義の為に自分の得意分野を活かして活動していくのは研究者のキースとしての生き甲斐そのものだ。

それが彼を突き動かし、熱量をもって研究に向かわさせている。


 当然頼んだ側のトランプ夫妻もキースの研究には全面的に協力してくれており、キースは異端解放団のメンバーよりも、トランプ夫婦とのやり取りの方が多いくらいだった。

そのトランプ夫妻の協力は、ルカにとって非常に大きいメリットになっていた。

というのも、研究に関して無知のルカは、キースの研究環境を用意する力がない。

しかしウィズダムを動かすトランプ夫妻が協力してくれるなら話は別だ。

権力を持つ二人が、キースが異端の謎を解き明かしてくれるのを信じてウィズダムで出来る最善の環境を用意してくれる。

それは本当に大きい事だった。

異端者を救い出す為に一番重要だと言ってもいい異端の謎を解き明かすという事。

これが前に進んでいるというだけで今のルカは満足していた。

さらに言えば遠征中もキースの研究に必要な要望をトランプ夫妻がやり取りしてくれて、可能な限り叶えてくれる為、ウィズダムにキースを一人置いてもルカは安心できる。

現状ルカにとってこれほど力強い味方はいない。


こうして今、トランプ夫妻の協力もあり異端解放団は必要な歯車が全て噛み合い、順調に未来へと足を進めているのだ。


-------------------------------------------------------- 


翌日、魔物討伐遠征に向けて全員が動き出す。


異端解放団は、異端者を世界に認めてもらう為に。


卓也は、自分の力を試す為に。


早苗は、クライアとの未来の為に。


舞は、サキとの未来の為に。


瞬太郎は、自分の欲を満たす環境を手にする為に。


凛は、復讐の気持ちを確認する為に。




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※2023/6/19~ 上記曜日に変更してます。


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