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与えられた禁忌の魔術で復讐を ~凛として咲く仇花~  作者: 一ノ瀬 凪
第二章 邂逅するスノードロップ
45/67

45. キリングバトル

カァァン!!


試合開始のゴングが鳴り響く。

その音と同時に両者とも目を見開いて不気味な笑みを浮かべながら目の前の敵に向かって走り出した。


「土槍スピアランス」

 瞬太郎は走りながらそう呟き、土の魔術で槍を形成させて持ち手を右手で握る。


「双剣ブラッド」

 相手も同様に武器を形成し、短い剣を二本、両手で一つずつ握り締める。


 瞬太郎と対戦相手の距離が縮まっていく。

瞬太郎は槍のリーチを活かし、先に攻撃を仕掛ける。


「オラァ!!」

 走りの勢いのままに右手を突き出し、槍の矛先が相手へと向けられる。


ガキンッ!


 相手はその槍を二つの剣をクロスさせて平然と防いだ。

そして相手はニヤっと笑い、口を開く。


「威勢の割には軽い攻撃だなァ!」

 相手は口角を上げたまま瞬太郎を煽る。


「手加減してやってるのも気付かねえのか?」

 瞬太郎も負けじと敵を煽り返す。


「なら本気をださせてやるよ」

 敵はそう言い、双剣をクロスさせて防いだ槍を上へ弾き飛ばす。


 キィン!!


 甲高い金属音と共に槍が弾かれ、槍を握っていた瞬太郎の右腕も上方向へと向く。

敵はその空いた右脇側に姿勢を低くして滑り込み、剣を振るう為に身体を回転させる。


 ・・・はや!


 瞬太郎は即座に左手を右脇の下へ通して小スケールの防御魔術を発動する。


 ガキン!!


 間一髪で間に合い、瞬太郎の右脇の下を目掛けて振るわれた剣は、瞬太郎の防御壁で弾かれた。


「ちっ」

 敵は舌打ちをしてバックステップで後ろへと下がる。


 興奮状態だった瞬太郎は今の一撃でほんの少しだけ冷静になる。


 こいつ想像以上に速ぇ。

舐めてかかったらマジでやばいな。

だが・・・・この命のやり取りのスリルが堪らねえ!!


「ハハッ」

 瞬太郎は笑いながら右足で地面を思い切り踏みつける。

すると地面から瞬太郎を乗せるように四角柱が出現し、みるみると上へと伸びていく。


仁王立ちの瞬太郎を乗せて四角柱が十メートル程伸びきった所で、瞬太郎は下にいる相手に向けて魔術を放つ。


「土槍・ガトリングスピアァァ!!」

 高所から唱えたその魔術により、大量の槍が相手へと降り注ぐ。


 相手はすぐさま双剣を地面に突き刺し、しゃがんだ姿勢で両手を合わせた。

すると相手を包み込むように地面から半球が形成され、防御の姿勢が完成する。


 ガガガガガッ!!!!


 槍が半球へと無差別に降り注ぎ、砂煙が舞い上がる。

瞬太郎はそれを上から見下ろし、様子を伺った。

徐々に視界が晴れていき、見下ろした先には槍が浅く刺さった半球が目に映る。


 瞬太郎は追い打ちをかけようと魔術の準備に入るが、後ろから聞こえてくる音に気付く。


 タッタッタッタッ


 徐々に近づくその音は瞬太郎の立つ四角柱を駆け上る音だと脳が認識し、瞬太郎は後ろに振り返りながら防御魔術の発動を準備する。


 振り返ったとほぼ同時で音の正体が下から飛び出してきて、双剣を振り被る相手が視界に入った。

相手の剣の軌道を予測し、瞬太郎は準備していた防御魔術で左斜め前に土壁を形成する。


ガキンッ!


相手の剣を土壁が弾いた音が左から鳴り響く。

しかし、その弾かれた反動の勢いのまま右側に敵がスライドしてきて回し蹴りが飛んでくる。


「ぐっ!!」

 相手の回し蹴りは瞬太郎の右肩を捉え、四角柱の上から瞬太郎は蹴落とされた。


 地面に背を向け落下しながら上を見上げると、相手も剣先をこちらに向けて四角柱から飛び降りてくる。


 それを見た瞬太郎は右手に握っていた槍を相手へと向ける。


「喰らえ!」

 その咆哮と同時に槍の先端が勢いよく飛び出し、相手へと牙を剥く。


 ガキンッ!!


 発射された槍は相手を貫く事は叶わなかったが、構えていた双剣を吹き飛ばし、相手を丸腰にした。


 瞬太郎は持ち手だけになった槍を投げ捨て、背中から地面に落下する。


 「っ・・!」

 ドサッという音と共に一瞬脳が揺れ、視界も揺らぐ。

考える暇もなく相手は瞬太郎を目掛けて落ちてきていて、揺らいだ視界に相手の狂気的な笑みが映った。


 瞬太郎はその揺らいだ視界に映る相手の手足の動きに合わせて、咄嗟に腕と脚を動かし防御しようとする。


 ガッ!!


 相手が仰向けの瞬太郎に覆い被さる形で着地し、両手は力比べのように握り締め合う体制になった。

相手は瞬太郎を見下ろしながら笑みを浮かべ、話し出す。


「普通の魔術師と違ってお前は対魔術師との戦いに慣れてやがるな?」

 

「普通の魔術師と一緒にしてもらっちゃ困るなァ。

 それに俺はまだ本気は出しねぇぞ・・・!」


 瞬太郎はその発言と同時に仰向けのまま右足を上げて地面に踏み込む。

すると右側の地面から覆い被さる敵を目掛けて斜めに四角柱が隆起した。


 相手は瞬太郎と手を握り合っていた為、防御が間に合わずに伸びでる四角柱に押し飛ばされる。


「ぐあっ!」

 右下から斜めに伸びた四角柱により、相手は左側へと転がっていった。


 相手を退ける事に成功した瞬太郎はすぐさま起き上がり、魔術の詠唱をする。


「崩土・サンドフロー!!」

 両手を地面につけ瞬太郎がそう唱えると、相手が転がる地面が砂状に変化していき、すり鉢状の砂の渦になっていく。

相手は起き上がろうとするも足は既に砂に捕まり、もがけばもがくほど砂の渦へと身体が沈んでいった。


「くそ・・・!」

 相手は下半身が砂へと埋もれ、ついに身動きが取れなくなる。

その相手を渦の外側から瞬太郎は見下ろして口を開いた。


「どうした?

 まさかこんなもんか?」


 瞬太郎は挑発するように笑う。


「ほざけ」


 相手がそう言うと同時に、砂の中に沈んだ相手の足元から岩が勢いよく隆起し、相手の身体を押し上げた。

その勢いのまま岩から飛んで再び瞬太郎へと飛び掛かる。


「ちっ!」

 瞬太郎は腕で防御するも、勢いよく飛び掛かられたのでそのまま相手と共に後ろへと飛ばされる。

相手と瞬太郎は掴み合ったまま地面をごろごろと転がっていき、転がる最中で瞬太郎は相手を蹴り飛ばし、掴み合いから逃れた。


 相手も蹴り飛ばされたもののすぐに体制を立て直し、再び双剣を召喚して構える。


 剣を構える相手を見て瞬太郎も槍を召喚し、矛先を相手へと向ける。


 相手はフッと笑い、口を開く。


「こんなに楽しい戦いは久しぶりだ!

 やはり戦いはこうじゃないとなァ!」


「それだけは同感だ!」


 瞬太郎も目つきは鋭いまま笑い、答えた。


 二人は命を賭けあう戦いの中、通ずるものを感じ始めてお互いを理解し合う。

それは二人だけにしかわからない世界。

もしかしたら目の前にいる殺す対象の人間は、自分のもつ感覚の一番の理解者かもしれない。

しかし、この戦いが終えた後に生きているのは一人だけだ。

それは他者からしたら悲しい境遇に感じられるだろう。



 この試合が開始された最初の動きと同様に、二人は双剣と槍を構えながら同時に駆け出した。


 瞬太郎は駆け出すと共に魔術を唱えていて、瞬太郎の周りには土の槍が複数現れた。

相手は瞬太郎の魔術の攻撃を察するが、変わらず瞬太郎へ向けて一直線に距離を詰めていく。

瞬太郎が作り出した複数の槍は相手へ向けて真っ直ぐに放たれていき、追いかけるように瞬太郎も相手へと突き進む。

相手は放たれた槍を俊敏な動きですれすれで躱していき、躱し切った流れのまま双剣の刃を瞬太郎の喉元へと向けた。


 ガキンッ!!


 瞬太郎は右手に持っていた槍で双剣を防ぎ、左腕をぐっと後ろへと引く。

すると、先ほど相手に躱された複数の土の槍が向きを変えて戻ってくるように相手の背中へと吸い寄せられる。


 相手は顔を微かに横に動かし、後ろから迫る槍に勘づく。

瞬太郎は戻ってきた槍が自分に当たらないように前面に土の壁を張った。


 ドンッ!


 相手は砂の渦から抜け出した時と同様に、足もとで勢いよく岩を隆起させて真上へと跳ねるように飛び上がる。

その咄嗟の跳躍で槍を間一髪で躱すものの、槍の先が足元を掠めて微量の血が宙を舞う。


「ちっ・・・!」

 相手は足の痛みを感じ、身体が逆さまな状態で宙を舞いながら傷を確認する。

瞬太郎はその一瞬の隙を見逃さなかった。


「終わりだ」

 瞬太郎は手に持った槍を飛び跳ねた相手へと向け、槍の先を撃ち放つ。


 ボシュッ!


 撃ち放たれた槍はミサイルのように飛んでいき、相手の背中を捉える。


ズシャッ!!!


「がはっ・・・!」


 相手は反応も遅れた上に空中だった為、槍を躱すことができずに背中から串刺しになる。

背中から腹まで貫かれた相手は、血しぶきを上げて槍が刺さったまま地上へと吸い込まれる。


 瞬太郎はその空中で貫かれた相手を視界に居れた途端、目を輝かせて、一面に満悦らしい微笑を浮かべた。


 あぁ。 最高だァ・・・。


 空から降り注ぐ血の雨を浴びる為、瞬太郎は相手の落下地点まで走り出す。

まるで恋をした男のように、血しぶきを上げて落下していく相手を見つめながら走り出すその姿は、周りの観客にはどう映るのだろうか。


 ドサッ


 相手が地面に落下し、瞬太郎はそこに駆け寄る。


 ワアァァアアアア!!!!!


 会場が湧きあがり、鳴り響くような声援が瞬太郎を包み込む。

その声援を送る人々の中には、瞬太郎に賭けていたナードの姿もあった。


「瞬太郎ーー!!!

 やったなーー!!!」

 

 ナードは見た事ないような満面の笑みで遠くの席から瞬太郎にエールを送る。


 だがそのエールは瞬太郎の耳にはまるで届いていなかった。


「ハァ・・ハァ・・」

 瞬太郎は血まみれで倒れている相手を目の前にし、興奮により呼吸が荒くなる。

先ほどまで戦っていた相手に愛おしさすら感じ、体が熱っぽくなり血が騒ぐのだ。


 相手は瞳が濁り、焦点が合わない状態で瞬太郎の顔を見上げる。


「てめぇ・・・本当にイカレてるな・・・」

 

 相手は死に際にそう言い残し、僅かに笑みを浮かべ、その瞳は光を失った。



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※2023/6/19~ 上記曜日に変更してます。


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