38. 気まずい二人
バッ!!
片目だけ潰れた状態で気怠そうな顔のまま上体を起こす。
脳がまだ夢と現実の狭間のまま、ぼけっとした表情で固まる。
ベッドの上で固まるルカは段々と脳内が整理されていき、昨日の事を思い出す。
「ああぁぁあああ!!!!」
恥ずかしいぃぃぃいい!!
なんで俺は昨日凛を抱き締めたんだ?
しかもなんか臭い台詞色々話してよな・・・。
どうかしてたぁぁあああ!!!
なに言ってんだ昨日の俺。
脳みそお花畑かよ・・・。
やり直したい。
昨日に戻ってもう少しマシな行動を選択したい。
きもいって思われてたらどうする・・・。
ナギとかに相談されたら余計しんどい・・・!
ナギは間違いなく『きもっ』って言うに決まってるからなぁぁああ!
ドンドンッ
「おいルカ!朝からうるさいぞ!!」
ダンの怒声がドアの奥から聞こえてくる。
「はいっ!すみません!!」
ルカは誰も見ていない中で気を付けをして謝罪する。
くそォ・・・気まずいなぁ・・・。
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パッ
横向きに寝ていた凛は唐突に目覚め、目を開く。
なんだか頭がスッキリした気がする・・・。
身体を起こし、まだ朦朧とした意識の重い足取りで鏡の前に向かう。
目が腫れている事に気付き、昨日の事を思い出す。
「ああぁーーーーー!!!!」
いやだいやだいやだっ!!
なんで私はルカさんの胸で泣き続けたの?
いくらなんでも甘え過ぎじゃない?
ルカさんの服に平然と私の涙染みさせてたし。
どうかしてたぁーーー!!
ずっとルカさんにしがみついて離そうとしなかった昨日の私が許せない。
私のせいでルカさんは離れたくても離れられなかったんじゃ。
あぁ、凄い困らせてしまったよぉ。
ダンさんに相談とかされてたらどうしよ・・・。
まぁでもダンさんなら何とも思わなそう・・・。
ドンドンッ!
「ねぇリン!朝からドタバタうるさいわっ!」
ナギの怒声がドアの奥から聞こえてくる。
「ごめん!ナギちゃん!!」
凛はビクリと身体を震わせ謝罪する。
はあ・・・顔合わせられないよぉ・・・。
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異端解放団はハウンドドッグとの一件以来、拠点を新しくしていた。
トランプとカレンの計らいによってウィズダム内で余っていた屋敷の領地を譲渡してくれたのだ。
状態もさほど悪くなく、使える家具も多く残っていたその屋敷は割とすぐ住み始める事ができた。
引っ越しの準備ができたメンバーから徐々に元々住んでいた場所から屋敷に住処を移し、今はキース以外のメンバーが屋敷に揃っていた。
キースだけは自宅に研究器具が揃っている為、引っ越しが容易ではないとの事で見送りとなっている。
凛とサキに至っては元のアジトをそのまま住まいにしていた為、かなりの大出世で大喜びしていた。
ただ元のアジトも完全に手放した訳ではなく、訓練場の用途をメインとして今も利用している。
二階建ての屋敷は相当な広さで、部屋数は二十を超えた。
『今後あなた達の組織は規模が拡大するかもしれないでしょ?』というカレンの太っ腹な配慮だ。
住み始めて数日は集団合宿のようなテンションの上がり方で、皆それぞれウキウキした気持ちで屋敷の生活を堪能していた。
特に凛にとっては、集団で一緒に生活するというだけで青春を感じ、頬がずっと緩み切っていた。
屋敷内の部屋はまだまだ余っている為、作戦会議用の会議室も作り、後々はキースの研究用の部屋も作る予定でいる。
目に見える形で段々と組織らしくなっていく自分達の団体に誇りを感じ、メンバーも充実した気持ちになっていた。
しかし、その生活から一週間ほど経過したのち、凛は覚醒出来ない事を悩み始め、沈んだ日々が続いていたのだ。
「おはようー」
ナギが二階から下りてくる。
リビングの食卓には既にサキが朝食を食べ始めていた。
今日はダンが朝ごはんを担当しており、食卓には既に食事が並んでいる。
目玉焼きやサラダが並ぶテーブルを見て、ナギは毎朝少し高揚した気持ちになる。
サキはあまりナイフやフォーク等を扱うのに慣れていない為、ぎこちない動きで料理を口へと運んでいる。
サキなりに集中して食べ方が汚くならないように神経を注いでいるのだ。
その分食事にかかる時間は比較的長いため、早起きが得意なサキは一番ノリで食卓についている。
「みんなおはよう」
少し遅れて凛もやってくる。
凛はキョロキョロと周りを見渡し、ルカがいないのを確認して席に着いた。
「ダンさんいただきます」
キッチンの方を向いて凛は小声でそう言い、朝食にありつく。
「お・・おはようー!」
更に少し遅れて、よそよそしい様子のルカもリビングにやってきた。
ナギはルカの違和感を察して突っかかっる。
「・・・なにその感じ」
「なんでもない。静かに食べるんだ」
ルカは小声でナギを制し、首を明後日の方に向けながら席に着く。
うわー。
凛の方に顔向けらんないわ。
首が変な方向に曲がっちまう。
そんな様子のルカにナギは小声で囁く。
「ねえ、昨日励ますの成功したの?」
ナギも元気のない様子の凛に以前から気付いており、心配していた。
ただ何故元気がないかの原因を知らなかったナギは、ルカに相談し、ルカはその理由の検討がついている様子だったので、励ますのはルカに託していたのだ。
「・・・わからん・・・・痛っ!」
だがルカの発言を聞き、ナギは託す相手を間違えたと言わんばかりに全力で足を踏んづけた。
「頼ったウチが馬鹿だった」
ナギは軽蔑の目線をルカに送り、不愉快そうにそう呟く。
ナギはサキの方に向き直し、ルカに対して呟いた声とはまるで違う明るい声で話かける。
「サキ!今日の修行早めに切り上げてもいい?」
「えー!!あたい今日で習得しようって気合い入れてたのにー!!」
サキは駄々をこねて大声を上げる。
「大丈夫大丈夫!ウチの後はダンが見てくれるから!」
ナギはキッチンから帰ってきてようやく食卓につこうと椅子を引いたダンに目配せし、無茶ぶりをする。
「あ・・ぉおう!
今日は職人さんとの打ち合わせは昼で終わるからな!」
ダンはナギの無茶振りに即座に対応して応えて見せた。
伊達に一番長い付き合いのコンビではない。
ダンは内心では職人さんとの打ち合わせをリスケジュールしなければと、少し心を痛めた。
「マジか!
ダンさんに見てもらえるのは初めてだ!
楽しみになってきたぜ!!」
サキはニカッと歯を見せて満面の笑みを浮かべる。
そんなサキの笑顔を見てダンの内心は更に心が痛まる。
待て・・よくよく考えたら俺がサキに何かを教えれる事なんてなにもないぞ・・・。
サキはそんなダンの内心なぞ知る由もなく上機嫌な様子だった。
凛はそんなやり取りが目の前で行われているにも関わらず、全然耳に入っていなかった。
わわわわわ・・ルカさんが視界に入るとつい目線が持っていかれちゃう。
私本当にどうしたんだろう。
あまり見過ぎると変に思われるから視界に入れられないよ・・・。
凛はお皿から一切目線を外さずに無我夢中でご飯を食べ進めていた。
「ねえ凛!」
「凛ってば!!」
「はい!!」
凛はナギの二回目の問いかけで呼ばれていることに気付き、返事をした。
返事と同時にナギの方に目線を向けたが、隣に座るルカに瞬時に目線がずれてしまう。
その刹那、ルカも返事をした凛に目線を向けており、その瞬間だけは二人の目線が合った。
ブンッ!
二人は同じタイミングで顔を横に振った。
そのお互いの横顔は微かに頬を赤らめていた。
「・・・なに?」
ナギはその一連の謎の行動を目の当たりにし、二人に対して不可解な目線を交互に送る。
「で!なんだっけナギちゃん!」
凛は疑われているのを察して瞬時に会話を戻す。
「あぁ・・今日サキとの稽古が終わったらちょっとお出掛けしよ!」
「えっあっうん!行こ行こ!」
凛は急にどうしたんだろうと疑問に思ったが、最近サキに引っ張りだこだったナギと出掛けるのは久々だなと思い返し、楽しみな気持ちが湧いてくる。
「じゃあ十六時に中央広場で集合ね!宜しく!」
ナギはそう言い残し、食べ終えた食器を片付けにキッチンへと消えていった。
その後、修行をつけてもらっているサキも追いかけるようにキッチンへと向かい、テーブルに残ったのはダンと凛とルカだった。
「じゃ、じゃあ俺は新しく加入する予定のメンバーと会う約束があるから行くわ・・!」
たかだか数秒程度の沈黙にすら耐えられなかったルカは、そう言いながら足早にキッチンへと戻り、ダンはルカのその様子を見て首を傾げた。
「なあ凛。あいつ何かあったのか?」
ダンは純粋な疑問を凛に投げかける。
「さ・・さぁ?」
凛もおかしい様子で目を泳がしながらそう答えた。
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