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与えられた禁忌の魔術で復讐を ~凛として咲く仇花~  作者: 一ノ瀬 凪
第一章 異世界で芽を出すクロユリ
35/67

35. 一触即発な二人


「・・・んっ・・」


 あれ――私――何してたんだろう

記憶が曖昧――

――――――ルカさん!!!


 バッ!!


 凛は起き上がり、周りを見渡す。

少し先でトランプの後ろ姿と気絶しているロイド、目の前には横たわるルカが視界に入り、頭の中は全然整理されなかったが凛はルカへと真っ先に寄り添う。


 ルカさん!顔が蒼白い・・・脈は・・・!


 凛はルカの手首を抑え、微弱ながらまだ脈があるのを感じ取った。

まだ生きている事がわかり凛の瞳から涙が溢れ出す。


 まだ・・・間に合うかもしれない!!


--------------------


「そんなに声を荒げられても困るなぁ。

 君は目の前の息子に八つ当たりもできないし、

 怒ってもストレス溜まるだけだよ!じゃあ僕はこれにて失礼!」


 ブツッ


 ぱくぱくと口を動かしていたトランザの死体は通信が切れた音と同時にピタリと停止し、首をだらんとさせた。


「くそったれめ・・・!!」

 トランプは拳を握り、口を噛みしめ、頭の血管ははち切れそうになる。


 意志と反して右拳に雷が充填されていき、そのまま怒りに任せて壁に全力で拳を振りぬく。


 バゴオォォォン!!!


 拳の痛みを感じながら、トランザの方へ目を向ける。


 息子をこんなんにしやがって・・・

許さん・・・必ず見つけ出して殺す!!!


 トランプは何かを思い出したかのように拳を引き抜きゆっくりと振り返る。

その視界には気絶しているロイドが映りこむ。


 せめて、あいつは俺の手で今すぐ殺してやるぞ。


 トランプは倒れるロイドに向けて右の手の平を向ける。

バチバチッという音と共に手の平に雷が顕現されていく。

トランプは目を瞑り、息子の無念を噛みしめながら唱える。


「デトロイト・ライトニング」


 その詠唱と共に雷鳴が鳴り響き、一瞬瞼の裏からでもわかるほどに視界が真っ白に遮られる。

気付いた時には地形はえぐられ、地面が焦げ付いていた。


 だが、トランプが涙を拭い目を開いた時にはロイドの死体は転がっていなかった。


 ・・・!


 漆黒の大きな手に掴まれたロイドが宙に浮かんでいる姿が目に映る。

トランプは視線をずらし凛が手を掲げているのを見て、凛が魔術を発動したのを察する。


 凛はトランプが目を瞑っていた間にダークマター・ハンドでロイドを持ち上げていたのであった。


「・・なんで邪魔をしたァ!!!!」

 トランプは凛の容態を心配する余裕がないほどに、脳が怒りに支配されていた。

その脳ではロイドを助けた凛の行動が全く理解できず、反射的に怒号をあげる。


「殺しちゃダメです!!」

 凛も必死な様子でトランプに反発した。


「お前もそいつを苦しめて弄んでいただろ!!

 俺がそいつを殺し、息子の無念を晴らすっ!!」

 トランプは怒りが収まらないまま、再びロイドに手を掲げて雷を充填する。


・・・私があの人を苦しめて弄んでいた??

うっ・・


 凛はトランプの言葉を聞いた途端、急な頭痛に襲われる。

それと同時に曖昧だった先ほどの記憶が蘇り始める。


 ルカさんが斬られた時、自分で自分がわからなくなって・・・憎しみに支配された?

私は・・・自分を見失っていたの・・・?


 「デトロイト――

 トランプの詠唱が耳に入り、凛はハッとする。


 さっきと同じ攻撃範囲の魔術なら・・・


 凛は魔術を構える。


 ――ライトニング!!」


 「ダークマター・スワロー!!」


ロイドに向けて雷鳴と共に放たれた魔術は凛の召喚した漆黒の不気味な口によって吸い込まれた。


「・・お前ェ・・!!」

 トランプは二度も邪魔された事が気にくわぬ様子で怒りに打ち震えた。


「落ち着いてください!!

 ルカさんを助けられるかも知れないんです!」


「それとあいつを守る事と何の関係がある!!!」


「あの人の命をルカさんに吹き込みます!」


 凛の言葉でトランプは一瞬冷静さを取り戻すが、ロイドを殺したい気持ちが先走り認めたくない気持ちが上回る。


「そんな事ができるものかァ!!」


「やる価値はありますっ!!

 このままではルカさんが本当に死んじゃう!!」


 凛は涙を流しながらそう叫んだ。


 トランプは凛の流す涙を見て一瞬ぐっと胸が締め付けられ、自分の愚行に気付く。


 俺は馬鹿か・・・俺のせいでまた悲しみを生むことになる・・・。


 トランプは膝を落とし、自分の顔を両手で握るように掴む。


「くっ・・・・・ルカを救ってくれ」

 トランプは怒りを抑え込むようにそう言った。


 凛はその言葉を聞き、目を見開いて即座に行動した。

ロイドを漆黒の手でルカの横に運び寝かせる。


 相手の生命力を自分に吸収するのは前にできた・・・。

それを人から人に移すだけ。 きっとできる、やり遂げる!


 凛は仰向けのロイドとうつ伏せのルカ、それぞれの身体に片手ずつ手の平を向けて唱える。


「輪廻掌握・ドレインライフ・・・!!」


 ロイドの身体から緑色のオーブのような光がにじみ出る。

その光は凛の左手から吸い上がり、凛の身体を通って右手へと移り行く。


 くっ・・・魔力が少なくて、苦しい・・・


 凛はさっきまでのロイドとの戦闘で魔力を相当消費していた。

そしてドレインライフの応用魔術という慣れない行為がより魔力の消費を加速させる。


 ・・・でも・・・ルカさんを死なせる訳にはいかない!!


 凛は気合いを入れ直し、手の平の神経に意識を集中させる。

凛の右手から少しずつ緑のオーブが排出され、確かにルカの背中の損傷に変化が訪れ始める。


 ・・このまま・・・集中・・・!!


 ロイドの身体は段々と痙攣をし始め、身体から溢れ出る緑のオーブも量が減り始まる。

そしてその数秒後、遂にロイドは血色が悪くなった状態でピクリとも動かなくなり、息を引き取った。


 ルカさん、ルカさん、お願い、間に合って・・・。


 凛はロイドから搾り取った最後のオーブを右手からルカに送る。

オーブは段々とルカの身体に馴染むように吸収されていき、背中の出血が止まったのがわかる。


 ・・・止まった!!


 大きい傷跡は残ったが、血肉を見せていた傷口自体は塞がった。

あとはルカが意識を取り戻すかどうかだ。


 凛はルカを仰向けにさせ、意識が取り戻すかどうかを固唾を飲んで見守る。

その凛の瞳には、今にも零れそうな涙が目を潤ませていた。


 ・・・お願い・・神様・・・お願いします・・・。


「・・・・うっ」

 凛の願いが通じたかのようにルカから声が漏れた。

ルカの瞼がわずかに動く。


「・・・リン・・・・」

 薄く目を開き、ルカは視界に映る凛の泣き顔を見つめながらそう呟く。


「ルカさあぁぁぁあん!!!!」

 凛はルカに覆いかぶさるように抱き着き、感涙を流しながら咽び泣いた。


「・・・・・・・・」

 ルカは凛の嗚咽を聞きながら天井を眺め、凛が生きていることと、自分の為に泣きじゃくりながら心配してくれる人が居てくれる幸福感を噛み締め、ボーッと感慨にふける。


視界に映る景色の情報は脳内で一切の処理が行われておらず、脳内の自問自答に意識が沈まっていく。


 ・・・満たされる。


 不思議と自分が死の淵から生還した喜び以上に、凛に泣きながら抱き着かれているこの状況の方が幸福度としては高く感じられる。


それは自分の為に涙を流す仲間がいることによる安心感で満たされているからなのだろうか。

それとも凛が自分に向けてくれている涙から愛情を感じて満たされているからなのだろうか。


もしくは両方なのかもしれない。


 それとも凛に抱き着かれているこの状況に満たされている?


そう思い、自分に下心が無いかと問うと、無いとは言い切れないという答えに行き着いて、自分でも少し驚く。

となるとまさか、自分は凛に好意を持ち始めている?と更に考えを巡らす。


 いやしかし、合理的に考えてそれを認めてしまうと今後の活動に支障がきたす。

俺達は世界の為に命を懸けて危険を冒す活動をしていくんだ。

誰かを愛することで、きっとその私情が俺の判断を鈍らす時が訪れる。

俺は異端解放団のリーダーとして、やるべき事をやらなきゃいけない。


・・でも逆に、好意を認める事でどれだけ心が満たされるんだろうと思う。


凛のことを考えると、確かに心が温まるのを感じてしまう。


・・・この気持ちには一旦蓋をしておこう。


 ルカはその結論に至り、思考を停止させて眠りについた。



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※2023/6/19~ 上記曜日に変更してます。


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