34. 奇怪な出会い
- 北のアジト -
どれが・・・敵だ・・・
トランプはカレンに以前聞いたルカと凛の特徴を記憶の中から引っ張り出す。
『凛とルカはまだ全然若い子でね、
凛はまだあどけない黒髪ショーカットの小柄な女の子で、
ルカは茶髪で少しクルっとした癖っ毛の身体の細い男の子よ』
という事は・・・
今あの不気味な骸骨を使って敵を苦しめている側が味方か・・。
なんておぞましい、あれも魔術なのか。
凛はトランプが到着してる事に気付いていないのか、それとも気付いた上でロイドを苦しめるのを優先しているのか、それがわからない程にロイドから視線を放さない。
その姿は新しく与えられた玩具で遊ぶ、無邪気な子供のようにも見えた。
相変わらずロイドは狂ったように叫び散らかし、文字通り発狂している。
あれは・・!
トランプは凛の足元に倒れているルカに気付いた。
ルカはぐったりとしており、背中は引き裂けて流血しているのが見える。
カレンから彼の事を聞いた。
ルカは未来の希望となるかもしれない逸材だと。
賢く、純粋で、真っ直ぐで、尊いリーダーだと。
あいつを死なせる訳にはいかない・・!
「ルカッ!!!!」
トランプはルカの方へと駆け出す。
その次の瞬間、凛の目線がロイドからトランプへと移る。
・・・!!
トランプはその狂気に満ちた表情を見て凛の意識が自分に向く事の恐ろしさを悟った。
敵味方関係なく殺気を撒き散らす彼女はもはや理性を保てていないように感じられる。
「誰? 私の邪魔をしないで・・」
凛はボソッとした霞声でそう呟く。
「お・・俺はトランプだ!敵じゃない!!
それよりルカをっ・・!!」
その言葉に凛はピクリと反応し、顔にグッと力が入ったように表情が歪む。
次の瞬間、両手で頭を抱えて唸り声をあげた。
「うっ・・うあぁァあ・・ああああ!!!!」
その唸り声と共に、凛を纏っていた骸骨のオーラも暴風に吹かれているかのように揺らぎ始め、形が不安定になる。
トランプは発狂する凛を固唾を飲んで見守る。
凛から放たれる殺気で自分も攻撃の対象に成り得ると感じ、冷や汗を流しながら固まっていた。
「あ・・」
突如、プツンと糸が途切れたかのように凛は意識を失い、地面に伏せた。
それに連動するように骸骨も蝋燭の火を吹かれたかのようにブワッと消失する。
ドサッ
骸骨の手から解放されたロイドは地面へと落下した。
だが目は白目を剥き、口からは泡が零れ出て、完全に意識を失っている。
た、助かった・・・。
一歩間違えれば俺も同じ様な目に遭ったかもしれん。
・・・それよりルカを!!!
「ルカ!!起きろ!!ルカッ!!」
ルカからは返事が返ってこない。
トランプはルカの呼吸を確認する。
まだ息はある・・・!
とにかく止血だ、背中の傷口が広い。
この出血量だと長くは持たん・・・!
トランプは自身の服を破り捨て、ルカの背中の傷口に手慣れた手つきで巻き付けていく。
人手が足りない。
ルカと凛は早く運び出さなければ。
それに・・・
トランプは気を失っているロイドと、椅子に腰かけて微動だにしないフードの男に目線をやる。
気を失ってるあいつは一旦いいとして、あの座っている奴はなんだ。
なぜ一歩も動かん。 あいつがボスなのか?
トランプはまずあの男の様子を伺うのが最優先と考え、警戒しながら近づいていく。
徐々に距離は縮まっていくが、やはり動かない。
そして薄暗いこの地下でフードの中身はより一層暗く、
顔の様子も伺えない。
ついにそいつの目の前まで立ち、トランプは恐る恐るフードに手を伸ばす。
そして、バッとフードを外す。
・・・!!!
そこには、トランプのよく知る人物の顔があった。
「・・・トラン・・・ザ?」
だが、その瞳はもう霞切っており、身体の血管が赤く発光し、全身の至る所が氷ついていた。
「なんだ・・どういう事だ・・・」
トランプは訳が分からず、目は泳ぎ、頭を抱える。
ピーピー
通信機が鳴る音がした。
トランプは服の中にしまっていた通信機を取り出す。
しかし、鳴っていたのは自分の通信機ではなかった。
反射的に周りを見渡し、音の出所を探す。
「あー、あー、聞こえるかな?」
トランプは衝撃で目を見開く。
目の前で座る、死んでるはずのトランザから声がしたのだ。
「・・お前は・・誰だ・・?」
トランプは恐怖と怒りが入り混じったような声でそう問う。
「おう!聞こえているなら良かった!
いやー、凄い物を見せてもらったよ!
君も見てたよね? あのリンとかいう少女の魔術を。
あの力は本当に興味深い。 まだまだ魔術というものは底が知れないね!」
その声は、トランプの問いを無視し、ただ無邪気に自分の興奮を知ってほしいかのように語り出す。
同時に座っているトランザの口は不自然にぱくぱくと動き、その声の主の言葉を代弁する人形と化していた。
「おい。俺の質問に答えろ・・・!」
トランプは楽しんでいた様子のその声の主に対し、怒りを顕わにして再度問う。
「あー!ごめんごめん!
ついつい自分の事を話してしまった。
僕が誰かだよね?僕はただのしがない研究者さ!
そしてハウンドドッグのリーダーでもある」
「貴様・・・!トランザになにをした!!」
目の前でトランザが打ち上げられた魚のようにピクピクと動くのを見て、トランプは我慢ならない気分で憤慨する。
「ん? あー君の目の前にいる人形の事かい?
彼はかなり希少価値の高い雷の魔術の適応者だったからね!
ちょっと僕の発明のモルモットになってもらったのさ!」
「モルモットだと・・・?」
先ほどまでは椅子で見えていなかったが、よく見るとトランザの背中には複数の管が刺さっているのが見えた。
それを見たトランプは、自分でも冷静さが失われていくのがわかった。
「そうさ!彼の扱う雷のエネルギーを利用して、
僕専用の人形にしたんだ!
どうにも組織を大きくすると、
部下を完全に信用するのも難しいし、僕の顔が割れても困るだろ・・?
だからこうやって彼の雷が流れる身体を借りて、
通信機として利用したり眼球から視界を覗けるように改造したりして、
遠距離でもやり取りを可能にしたんだ!
素晴らしい発明だと思わない? 彼も喜んでるといいなあ。
彼の今の状態がどうなっているかと言うとね、
彼には例の魔力を高める薬を注入した状態で
身体が腐らないように半分冷凍保存にしていてね、
それで―――
「もういい!!黙れ!!
・・・お前は頭がイカれてる。俺が必ず殺してやる」
トランプは怒りで震えていた。
しかし目の前で話しているのはトランザの死体。
声の主はどこにいるかわからない。
このどこにもぶつけられない怒りで頭が熱くなり過ぎて
どうすればいいかわからなくなっていた。
「あれ? なんで君はそんなに怒っているの?
あ、ごめん! そういえばその死体は・・・君の息子だったよね?」
通信機越しのその声は、馬鹿にしたように半笑いでそう言った。
「貴様ぁぁああああ!!!!!!」
トランプは怒りで獣のように叫び上げた。
「・・・んっ・・」
その怒りの叫び声で、凛は吐息を漏らし、意識を取り戻す。
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