31. 西のアジトの激戦
- 西のアジト -
「・・・ハァ・・片付いたか」
ダンは一息ついて、周りの様子を見渡す。
「・・ダンさん体力めっちゃあるんだな・・・。
あたいは流石に少しばてちまった・・・」
サキは膝に両手をつき、汗を垂れ流していた。
二人は西のアジトに潜んでいた敵を倒し切った。
魔術を扱えた敵は数名程度しかおらず、それも大した事のない威力の魔術だった為、二人は大きく苦戦を強いられることなく敵を片付けることができたようだ。
「サキは少し休んでおけ。
俺は奥に薬の開発魔道具がないか確認してくる」
ダンは広い空間を見渡しながら、敵がでてきた方へと足を進めた。
「いや、あたいもついていく!
そんなに歩けない程ばててはねぇからさ」
ダンはサキが少し無理しているように見えたがそれ以上は何も言わず、ついてくるサキの様子を見つつ進む。
しかし、案の定疲れがでているようで、サキの歩く速度は明らかに遅く感じられた。
そんなサキに合わせて、ダンも歩く速度を遅く調整する。
「・・・・」
ダンさん。 あたいに合わせて歩いてくれている。
こんなに強面で渋い見た目なのに気遣いは繊細であったかい人なんだな・・・。
おい。
!!!
突然耳に響く見知らぬ声に二人は振り返る。
ドゴッ!!
「かはっ・・・!!」
振り向いた時にはそいつは目の前にいてサキの腹に回し蹴りが直撃する。
サキは口が開き、息の詰まるような声を漏らしたのち、後ろに吹っ飛んだ。
がっ!
ダンはそれに反応し、吹っ飛んだサキを受け止める。
「大丈夫かっ!!」
ダンは腹を抱えて苦しんでいるサキに声をかける。
「ぐっ・・・なんとか・・・!」
サキは痛みで顔をしかめながらそう答えたが、動けそうな様子ではなかった。
ダンはサキの状態を即座に確認し、敵の方へと顔を向ける。
ちっ。
まだ敵が残っていたのか?
いや、俺達が歩いてきた道のりからこいつはきた。
おそらく増援だろう。
そして、こいつはさっきまでの雑魚とは違う・・・。
「我々の構成員の寝床をよくも滅茶苦茶にしてくれたな」
その男は同胞を倒された怒りに震えていた。
北のアジトでロイドに指示を受けて駆け付けたジェイドである。
「やはりここはお前らの住処だったんだな。
道理で数が多かった訳だ」
ダンはサキを壁にもたれかけさせ、そう返す。
「・・・貴様、生きては返さんぞ!!」
ジェイドが片足を少し上げ、足裏を後ろへと向けた。
ピュウゥゥゥゥゥウウ
その足裏から甲高い風の音が響き渡る。
風を圧縮させ、高密度の風の塊を生んでいるようだ。
バフッ!
風が弾ける音がした。
気付いた時にはダンの目の前にジェイドはいる。
はや―――
ガンッ!
ダンは間一髪で硬質化しジェイドの蹴りを防いだが、衝撃で身体は数メートル後ろへと引きずられた。
「ちっ」
ジェイドは舌打ちをし、ヒラリと軽い足取りで後ろへ下がる。
「貴様、異端者だな。
殺す前に聞いておこう、お前らはトランプの手下か?」
「違うな。俺達は異端解放団。
うちの馬鹿が掲げる正義についていく集団だ」
「異端解放団だと? くだらない。
正義で世界が変わるとでも思っているのか?
そんな生ぬるい考えでは何も成し得れないというのに」
「ふん。 だからいいのさ。
そういうお前らは何の為にこんな事をしている?」
「我々は現実的に世界に革命をもたらす組織だ。
お前らのように正義がどうなどという
道徳的な綺麗事だけを並べる弱者とは違う」
「だがお前らはそんな弱者に追い詰められているぞ」
「フンッ! 強がっていられるのは今の内だぞ!!」
ピュウゥゥゥゥゥウウ
再び、甲高い風の音が鳴り響く。
またあの速い攻撃か・・。
だが、俺の身体から棘を拡散させればあいつも只では済まないはず。
バフッ!
次の瞬間、ダンは身体をハリネズミのように変形させる。
しかし、突っ込んできたのはジェイド本体ではなかった。
ザシュザシュザシュ!!!
「ぐっ!!」
ダンの身体の至る所から血がポタポタと流れる。
飛んできたのはジェイドの足から放たれた密度の高い真空の風の塊だった。
ダンは瞬時にサキを庇い、真空の風を身体で受け止めた。
サキは無事だったが、ダンは全身に切り傷を負うこととなる。
「ダンさんっ!!!」
サキは血の滴るダンの背中を見て叫ぶ。
ダンさん、あたいを庇って・・・。
情けねぇ・・・くそっ!
足引っ張ってる場合じゃねえだろ!!
「大丈夫だ。 心配するな」
ダンは平然そうな声でそう言い、ジェイドの方を見据える。
遠距離攻撃を持つ相手は分が悪いな。
しかし硬質化した俺の身体にこれ程の傷をつけるとは中々厄介な魔術だ。
どうする・・・。
「さっきまでの威勢はどうした? 異端解放団よ。
いつの時代も勝った方が正義を語る権利がある。
貴様らは負けて、ただの逆賊となるだけだ」
ジェイドは余裕そうな表情で次の魔術の準備に入る。
ピュウゥゥゥゥゥウウ
「次はもっとでかいのをいくぞ・・・!」
ジェイドが足裏に風を圧縮し始める。
ボオオォォォオオ!!!!!!
「ぐあっ!!」
突如、ジェイドは後ろから放たれた炎の渦に包まれる。
「ダン!サキ!生きてる!?」
その炎を放ったのはナギだった。
東のアジトから駆けつけてきたのだ。
バフンッ!!!
ジェイドを包んだ炎の渦は足元で圧縮された風の解放により掻き消える。
ジェイドは魔術が飛んだ方向にナギを見つけ、鋭い眼光で睨みつけた。
「増援か、こざかしい・・・!」
ナギはダンと先に向けて声を上げる。
「ダン! サキを連れて離れて! こいつはウチが相手する!」
ナギの言葉にダンはこくりと頷き、サキを両腕で持ち上げながら敵の情報をナギに伝える。
「こいつは風の魔術を扱う!!
かなりのスピードで攻撃してくるから気を付けろ!!」
ダンは去り際にナギにそう忠告し、サキを抱えて走り出した。
ジェイドはそれを目で見送る。
「奥に逃げても外への出口はない。全員ここで始末する」
ジェイドはダン達を追う事もなく、片手をナギへと向けて分析する。
あの小娘は炎の魔術を使っていた。
なら相性的に私の扱う風の魔術で掻き消せる。
ピュウゥゥウ
ジェイドの周りの空気が動き始める。
ナギもまた、ダンの情報をもとに分析した。
相手は風の魔術師。
あれは風を使った遠距離攻撃ね。
それなら・・・!
バフンッ!!
真空の風がナギを目掛けて放たれる。
ドゴゴゴッ!!!
しかし、その風はナギの目の前に現れた土の壁に阻まれる。
「なっ!!」
ジェイドは驚愕の表情を浮かべ、真空の風は土の壁にぶつかって四散した。
土の魔術だと・・・!?
この小娘・・・揃いもそろってこいつらは全員異端者か・・・!
「侮らないで頂戴!!」
その声と共にナギは土の壁の上から飛び出る。
足元には風の魔術トウ・トルネードが発動されており、高く跳躍していた。
そして同時に構えられた右手には氷が顕現し始めている。
馬鹿な!!
風と氷の魔術まで!
それも同時に・・・!!
ジェイドは危機を感じ、風の魔術で後ろへと下がる。
「クリスタル・ドラゴン!!!」
ナギのその叫びと共に、右手から氷の結晶で出来た龍がジェイドへと牙を剥く。
その龍は小さい女の子の右の手の平から出てくるとは思えない程の大きさで、ジェイドにむけて突進していく。
くっ・・!!
ジェイドは足元の風の魔術で加速させながら後退するが、ナギもトウ・トルネードでジェイドとの距離を詰めながら氷の龍で追い詰めていく。
・・・逃げ切れな・・・!!
ズシャシャシャシャ!!!
ジェイドは氷の龍に嚙みつかれる形で凍てついた。
「一丁あがり!!」
ナギは地面に着地し、ガッツポーズをする。
「さて、ダン達に声をかけてウチも北のアジトへ向かわないと」
ピキ・・・ピキピキ・・・。
氷にひびが入る音がした。
ナギは凍てついた敵へと再び目を向ける。
すると身動きのできないジェイドの身体から赤い光が発光していた。
・・・なに・・・あの光・・・?
ガシャァーーン!!!
「・・・フゥ・・・フゥ・・・」
氷は砕け散り、中から息の荒いジェイドが再びナギと対峙する。
ジェイドは風の魔術で後退していた際、間一髪で身体に注射を打ち込んでいたのだ。
「貴様のような小娘にこの薬を使う事になるとは思わなかった。
さっさとあの世に送ってやる!!!」
ジェイドの血管は赤く光り、目は血走っていた。
その狂気じみた表情でナギを睨みつける。
「うぇ!きもっ!」
ナギはそんなジェイドに怖気づく事もなく気持ち悪がって目を細める。
「うおおおおおお!!!!!」
ジェイドはその態度に激昂し、両手に風を溜め始める。
「面倒だから一発で決めてあげる。」
ナギもジェイドに向けて、両手を掲げ、全属性の魔術を合わせ練り込む。
その手には、黄緑、赤、茶色、青、という四色の光が集まり出す。
「らあァああああ!!!!」
キイィィィンという高音を立てて、ジェイドから特大の真空波が放たれた。
「パーフェクトストライク!!!!」
ナギはそう詠唱し、全ての元素が入り混じった噴火、隕石、雷、台風、吹雪、この世の災害を詰め込ませたかのような魔術を繰り出した。
ドゴオオオオッ!!!!!!
ジェイドの特大の真空波はナギの大災害に吞み込まれ、貫通してジェイドを巻き込んでいく。
「なっ・・・・馬鹿なあぁぁァあああ!!!!!!」
ジェイドの身体はあり得ない方向に曲がりながら後ろへと吹っ飛んでいった。
その魔術は地下のアジトの地形をえぐるように突き進み、落ち着いた頃には文字通り災害の跡のような状態になる。
「あちゃ~・・やり過ぎたかも・・・」
ナギは頭の後ろを右手で掻きながらそう呟き、戦闘は終了した。
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