29. 凛の異変
- 東のアジト -
バーン!!
トランプは扉を蹴り破り、ナギと共にアジトへと突入した。
建物自体は通常の民家のようになっている。
ただ情報によるとその民家の中には地下に通ずる隠し階段があり、そこが地下のアジトへと通じているというのだ。
「トランプさん!入り口はここみたい!」
ナギが先に階段を発見する。
「ナイスだ!行くぞ!」
トランプとナギは階段を駆け下りる。
するとそこにはアリの巣のように広がる地下空間があった。
「思ったより広い・・・・」
「油断するな。 奥にも空間が続いている。
どこから敵が来るかわからん。 様子を見るぞ」
二人は慎重にその空間を隅々まで練り歩くことにした。
灯りのない道は奥へ歩けば歩くほど、暗闇で視界が悪くなっていった。
「暗い・・・・」
ナギは心細いかのように小声で呟く。
「ライトニング」
トランプがそう唱えると優しくぼんやりとした光が発光した。
「凄い・・・これが雷の魔術なんだ」
「ああ、四属性に該当しない異端の魔術だ」
その光により、トランプのグレーの短髪がぼんやりと照らされる。
ナギは今回トランプと初めて対面を果たした。
以前からあの綺麗なカレンさんの旦那さんはどんな人なんだろうと想像を働かせていた。
先ほどまではよく見ていなかったが、照らされた顔を見て意外と渋いおじさんなんだなと失礼な事を考える。
「・・・そういえばキースって子の話の中でも
雷の魔術を扱う人がでてきたんだけどさ――
「それは本当か!!」
先ほどまで落ち着いていたトランプが急にナギの話を遮り大きな声で聞き返した。
「え・・・・うん」
ナギは少し面を食らったように動揺し、返事をする。
「すまん・・・・・どんな内容だった?」
怖がらせたかと思いトランプは謝罪し、話を続ける。
「キースがハウンドドッグに襲われた時に助けてくれた人みたい。
でもその時にその人は亡くなっちゃったって・・・」
「名前は言ってたか?」
「たしか・・・・・トランザ?」
「・・・・・・!!
・・・・・そうか」
トランプは苦悶さや無念さ、はたまた怒りをも飲み込んだような複雑な表情を浮かべていた。
ナギはトランプに対しその表情の意味を知りたがったが、飲み込んだ感情を溢れ出させてしまうのが良くない気がしてトランプの次の言葉を待つ。
しかし、以降トランプが口を開く事はなく無言のままアジトの調査が続いたのだった。
二人の無言の調査は結果的に不発。
東のアジトはもぬけの殻だった。
薬の開発装置も存在せず、ハウンドドッグの人間も誰も居なかったのだ。
「ちっ、ハズレか」
トランプはようやく口を開き、通信機を取り出す。
ピーピー
「カレン、東のアジトはもぬけの殻だった。
薬の開発装置も存在しない。
他のアジトはどうだ」
トランプはカレンの応答を待つ。
「二人とも西と北にそれぞれ向かって!
二つのアジトでそれぞれ交戦中!!
おそらくボスは北のアジトよ!」
こっち以外は交戦中か。
ボスは北。
仇討ちをする時が来たな・・・!
「了解した!」
ブツッ
「ナギ!お前は西へ迎え!俺は北へ向かう!」
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- 西のアジト -
ガキンッ!ガキンッ!
ダンの硬質化した腕と敵の持つ剣が交じり合い、金属音が地下に響く。
「サキッ!こいつらは魔術が扱えない奴が多い!
俺が敵を引き付ける!その間に魔術で片づけるんだ!」
ダンの指示に従い、サキは少し距離を置いた位置で魔術を唱える。
「バースト・フレイム!!」
大砲のような炎弾が敵へと放たれる。
バアアン!!!
「「ぐわあああ!!」」
着弾し、爆発した炎弾は敵を複数吹き飛ばした。
「よし!いいぞ!」
ダンは敵を引き付けながら、そう言った。
西のアジトは結構な人数の構成員が潜んでいた。
だが基本は魔術も扱えないごろつきばかりで、油断さえしなければダンとサキで対応できる範囲である。
しかし想定より敵が多いな・・・!
ここはこいつらの家なのか?
地下空間の奥からぞろぞろと武装した敵が出てくる。
ガキンッ!ガキンッ!
ちっ、面倒な奴らだ。
「ハッ!!」
ザクザクザクッ!!
ダンは身体の至る所から棘状に硬質化した槍を伸ばす。
それにより近くにいた構成員たちは一斉に串刺しになった。
「ダンさんつえー・・・」
後方からダンの背中を見つめていたサキは一人で小声で呟いた。
あたいも負けてらんねえ!!
やるぞおお!!
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- 北のアジト -
「随分と静かだな・・・」
ルカと凛は地下空間を進んでいた。
いまだ敵とは遭遇しておらず、アリの巣上の地下をしらみつぶしに歩いている。
「・・・思っていた以上に広いですね」
凛はそう言い、空間を眺めながら歩く。
「・・・ん? 何か聞こえる」
ルカはそう言い、耳を澄ました。
ブウゥン・・・ブウゥン・・・ブウゥン
地下空間に響く風を切る音。
しかしそれは決して軽やかな音ではなく、重い音に聞こえた。
「何かを・・・振る音?」
凛も耳を澄ませながらそう言った。
ルカは奥に何がいるかを察し、通信機を取り出す。
ピーピー
「カレンさん、北のアジトの奥に敵がいる。
雰囲気からしておそらくここが本丸だ。
今から近づき、戦闘に入る」
「了解、気を付けて」
通信機でカレンに報告を済ませ、ルカは深呼吸をする。
「リンちゃん、準備はいいか?」
ルカは凛の方を見てそう声を掛けた。
「・・・・・はい!」
凛も深呼吸をし、返事をする。
ブウゥン・・・ブウゥン・・・ブウゥン
奥に進むにつれて徐々に音が大きくなる。
そしてカーブ上に曲がった地下の先にその音の正体が姿を現す。
「・・・やっと来たか。
ここに訪れる人間を今か今かと待ちわびたぞ、鼠共」
灰色のローブを纏った筋肉質の男がそこにはいた。
眼光をギラつかせながらルカと凛を睨みつけ、振っていた戦斧を地面に刺す。
ルカはその大男の後ろにもう一人椅子に腰かける人物を確認する。
後ろに座ってるのはハウンドドッグのリーダーか・・・?
幸い敵は二人だけ、全然太刀打ちできる範囲だ。
「わざわざ待ってくれたのなら何かおもてなし位ないのか?」
ルカは敵を挑発する。
「ハッ、威勢のいい小僧だ。
・・・しかしここに訪れるのはトランプかと思ったが、なんだ貴様らは」
ロイドは予想外の訪問者に探りを入れる。
「俺達は異端解放団。
この世の異端者を救済する未来の導き手だ!
そしてお前らのような悪者を成敗する正義の味方でもある!
よく覚えておくんだな!」
「ほう・・・・中々面白い思想だ。
しかし我々を悪役と呼ぶのはいただけないな。
我々も魔術とはどういったものかを追求している組織だ。
その結果生まれたのが貴様らが邪魔したあの薬だ。
あれは魔力の素量がない者でも魔術が扱える代物であり、
魔術が扱える者には異端能力が顕現する代物」
ロイドは笑みを浮かべながらそう言った。
「なっ!! 異端能力が顕現するだと・・・?」
ルカは魔術を使えない者でも魔術が扱えるのは知っていたが、扱える者には異端能力が顕現するのは知らなかった為、大きな衝撃を受ける。
「そうだ、あれは人に秘められた可能性を引き出せる素晴らしい発明だ。
我々も貴様らと同様、異端者を否定しない。
むしろ可能性の塊だと捉えている。
・・・だが貴様らはその薬の輸送を邪魔した」
ブウゥン!!
ロイドは戦斧を振りかざし、こちらへと向けた。
「我々も掲げる思想がある。それを邪魔した貴様らは死罪だ」
ロイドは殺気を剥き出しにして冷たい声でそう言った。
「リン!!覚醒しろ!!」
ルカはロイドの殺気を感じ、凛に指示を出す。
「・・・・・どうして」
凛の呟きが聞こえ、ルカは凛の方を振り返る。
すると凛はなにやら困惑している様子で自身の手足を眺めていた。
「リン!どうした!!早くしろ!!」
ルカは戦闘態勢に入らない凛に大声を上げる。
おかしい・・・。
覚醒が・・・できない・・・。
・・・なんで・・・・・・?
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