28. ハウンドドッグのNO.2
- ハウンドドッグ アジト -
薄暗い静かな空間。
地下にあるこのアジトは冷たい空気が流れ、酸素が薄く息苦しい。
その中で縦に長く伸びた大きい椅子に腰かける灰色のローブを深く被った人物と、その横に立つ、図体のでかい同じく灰色のローブの男が一人居た。
「ロイド様、先刻、炎威の国を出発した輸出の馬車が
何者かによって襲撃を受けたようです。
馬車の残骸を西口で発見致しました」
その二人に跪く格好で斥候のような男が報告をする。
「ほう。遂に我々に仇なす輩が現れたか・・・。
大方トランプの仕業だろうな」
灰色のローブを身に纏った図体のでかい男、ロイドはそう言った。
「どうやら積み荷は燃やされてしまったようですが、
出荷はどう致しましょうか」
膝まづいている斥候のような男はロイドに指示を仰ぐ。
「ふむ。出荷のスケジュールは明日以降に変更した方が良いだろう。
それよりもトランプが手を出してきたという事は
なにか情報を掴まれた可能性が高い。
東のアジトは割れてると予想はしていたが、
このアジトまで辿り着く可能性も考慮せねばな。
出荷のスケジュールの調整はその後だ」
・・・・とはいえ、トランプはおそらく一人。
私が直々に相手をして決着をつけてもいい。
いい加減あやつらにコソコソ嗅ぎまわられるのは
うんざりしていた所だ。
丁度ここ最近は命を削る戦いをしたくて身体が疼いていた。
「よし、ジェイド。
貴様は西のアジトへ行き、警戒するように伝えろ。
あと念には念だ、これを持っていけ」
ロイドは斥候のジェイドに注射器を投げる。
それは魔術を強制解除する例のあの薬だった。
ジェイドは投げられた注射器を受け取り、懐へとしまう。
「もし西のアジトに鼠がいた場合はそれを使え」
「かしこまりました」
ジェイドは下がり、西のアジトへ向かった。
「さて、今夜はもしかしたら荒れるやも知れませんな。
あなたが今、ここにいるかどうかはわかりませんが・・・」
ロイドは椅子に腰かけるローブを深く被った男に話すようにそう言い。
立て掛けてある取っ手の長い戦斧を手に取った。
「・・・・・・」
腰かける男はいまだ無言で微動だにしない。
「フンッ!」
ロイドは自身の身体を纏う筋肉を隆々とさせ、戦斧を勢いよく振り下ろす。
重い戦斧はブゥンと大きい音を立て、風を切る。
「あぁ。私の筋肉が疼く。
もはやこのアジトまで辿り着いてほしいとまで思うぞ。
来るなら来い・・・誰でもいい・・・肉を断たせてくれ・・・」
ロイドは目を血走らせながら不気味な笑みを浮かべ、戦斧を強く握った。
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「ナギさんが到着するまで待機してください!」
「わかった!」
ブツッ
ルカと凛は北のアジトに到着し、
カレン、キースからの連絡を待っていた。
「いやしかし、リンちゃんが居てくれると心強いな」
「ナギちゃんに鍛えてもらった成果を出さなきゃいけないですから!
全力で頑張りますよ!」
凛は元の世界にいた頃に比べて随分と自信がついていた。
ナギとの修行もあって体力も相当向上しており、運動能力も高くなったからだ。
ただ、アジトの地下でのナギとの修行では全力での黒魔術の発動は危険すぎる為、黒魔術の力は抑えて修行をしていた事が多かった。
そういう制限もあったからか、凛は全力で魔術を発動したい欲が高まっている。
「それもそうだな!ナギに怒られないように結果を出そう!
頼りにしてるぜリンちゃん!」
・・・誰かに必要とされる感覚が凄く心地がいい。
私が頼りにされているという事実が、私に居場所をくれる。
自分の存在価値を感じられる。
本当にこの力には感謝しなきゃならない。
この世界で力が覚醒した時、この力は復讐を成す為のものだと思っていた。
でも今はそれだけじゃない。
この力をルカさんの異端者を救う活動に使いたい。
ナギちゃんのママの仇討ちの為に使いたい。
ハウンドドッグを止める為に使いたい。
そう思えるようになった。
私は知らなかった。
人と支え合える事がどれだけ素敵な事なのかを。
人との関わりを拒んでいた昔とは違う。
今はこの繋がりを大切にしたい。
「・・・ルカさん、私を受け入れてくれてありがとうございます」
「なんだ急に!」
「いや、何となく伝えたくなっただけです」
凛は俯きながら優しさに溢れた笑顔で、照れ臭そうにそう言った。
ルカは凛のその表情を見て、ブンっと顔を逸らした。
今のは油断した・・・・!
思わず顔が緩んじまった!
そんな表情で言われたら・・・・・
「・・・り」
ピーピー
ルカが何か言いかけたタイミングで通信が入る。
「みんな聞こえる?全員指定の位置についたわ。
合図と同時に一斉にアジトを攻め落とすわよ。
各自、突入後に私への連絡を忘れないで。
本丸のアジトは一つ。最終的には全ての戦力をそこにぶつける。
相手はハウンドドッグ。危険な相手だから油断しないで」
変なタイミングで通信がきたな・・・。
顔緩ませてる場合じゃねえ!気合入れろルカ!!
「「了解!」」
兎に角、今はアジトを制圧する事に集中だ。
リンちゃんの黒魔術による攻撃と俺の魔術無効化のディストピアランスがあれば隙はないはず。
ふう、大丈夫だ。
俺達ならやり遂げられる。
「じゃあ行くわよ!!
三・・・二・・・一・・・突入!!」
「いくぞ!リンちゃん!」
「はい!!」
二人は北のアジトの入り口へと駆け出した。
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