26. 輸出の阻止作戦
「積み荷はこれで全部か?」
「ああ、これでラストだ」
「よし、では向かうとするか」
あたりは夜も更け、明かりもない暗闇の夜道。
深くフードを被った二人は人影のない場所で木箱を馬車に乗せていた。
「なあ、お前リーダーと直接話したことあるか?」
「いや、数回会うことはあったが、声を聞いたことすらないな」
「・・・あの人は何者なんだろうな。
俺らみたいなはみだし者からしたら生活する為の
基盤を与えてくれるのは助かるが、何の目的で組織を動かしてるのかは不明だし、
なにより身元が割れないような徹底具合は目を見張るものがある」
「どうだろうな、この薬もやばいものなんだろ。
トップの考えなんて俺ら下っ端には理解のできない世界さ」
「まあそうだな」
二人はハウンドドッグのリーダーについて話しながら馬に乗り、ウィズダムの西側の出口へと馬をゆっくりと歩かせる。
「炎威の国まではどのくらいだ?」
「大体七日間だな」
「そんなもんか」
ガタンッ
「ん? 積み荷の方で変な音がしなかったか?」
「馬車の揺れで積み荷同士がぶつかっただけだろ」
「・・・・にしては大きい音に感じたけどな」
「そんな事より、そろそろ西口につく。
炎威の国への入国証を受け取る手筈だろ」
「あぁそうだな、俺が受け取る」
ウィズダムの西口が近づき、馬の速度を緩める。
それに合わせたかのようにフードを被った人物が姿を現す。
「・・・・時間通りだ。
受け取りにいってこい。
合言葉は忘れてないか?」
「あぁ、覚えてる」
二頭の馬の右側に乗っていた人物が馬を降り、西口に現れた人物の方へ近づいていき合言葉を言う。
「家に鼠、国に盗人」
「・・・・・」
フードを被った相手は黙り込んだままだ。
「・・・・おい。
合言葉は?聞こえなかったか?
・・・・・家に鼠!国に盗人!」
返事のない相手に対して痺れを切らし、合言葉の語気が強まる。
「まさか・・・・!」
男は嫌な予感がよぎり、一歩下がろうとしたその時。
「捕らえて」
誰かの呟きが耳に響く。
同時にフードを被った人物が動きだした。
ガッ!
フードを被った人物は素早く手を伸ばし、男の首に腕を回す。
「ぐっ・・・・やめ・・・」
男は首を絞められて苦しそうに呟くが、フードの人物は容赦せずに締め上げる。
さすがに馬車で待機していた男も異変に気付き、声を上げる。
「おい! どうし――
「黙って」
その瞬間後ろの積み荷からナギが現れ、馬車で待機していた男の首元にはナイフが突き立てられる。
「くっ・・・・!」
男は自分の首元に触れたナイフに気付き、言葉を失う。
なんだこいつら・・・!
手際が良すぎる・・・・今回の薬の輸出は情報が漏れていたのか・・・!
西の門の前でフードの人物に首を絞められている男は、苦しそうにしながら馬車に乗る男に助けを求めるような目線を向ける。
「・・・・・ぐっ・・・うっ・・・」
ナギにナイフを突き付けられた男はそれをどうする事もできず、ただ顔を歪めながら眺めた。
畜生っ!
何もできない!!
すまない・・・!
「バインド・ロック」
ナギはそう呟き、馬車の男の手足に岩が生成される。
その岩は男の手足を縛るように形成し、男は身動きが取れないまま地面に落とされた。
「ぐはっ・・・!」
西門の前で首を絞められていた男も意識が遠のき、遂に完全に気を失った。
「っ・・・・・・」
すると門の裏の影から凛が現れ、気を失った男の元へと近づいていく。
「もう放していいよ」
凛がそう言うと、フードの人物は無言で男を放し、気を失った男は倒れ込んで泡を吹いていた。
ヒュウゥ
門を突き抜ける夜風が吹き、凛の命令に従っていた人物のフードが捲られて顔が月夜に照らされる。
「・・・・・なんだ・・・あの顔」
ナギの魔術で縛られ馬車から地面に落とされた男は、遠目ながらフードが捲れた男の顔を見て戦慄した。
その男の顔色はほんのり緑がっかた薄黒い顔色で、表情はまるで死人のようだった。
その酷くおぞましい顔立ちに、地面に伏せる男はゾンビを想像する。
実際、このフードを被った人物は凛がストレンジアンデッドで復活させたゾンビだった。
この日、凛、ダン、ルカは西口に先回りし、待機していたハウンドドッグの人員を先に捕えていた。
しかし男は舌を噛み切り自決してしまった為、仕方なく凛のストレンジアンデッドで蘇らせて使役していたのだ。
「はい、こっちも片付いたわ!」
ナギはそう言い、縛り上げたもう片方の男を突き出した。
ドサッ
「くっ! お前ら一体何者なんだ・・・!」
縛られ身動きのできない男は上を見上げてそう言った。
「質問するのはこちら側だ~。
死にたくなかったら全部吐け」
ルカはチンピラのような顔つきでしゃがみ込み、男にそう吐き捨てる。
「・・・これじゃあどっちが悪役かわかりませんね」
凛はダンに向かってそう呟いた。
ダンも呆れたような顔する。
「お前らはハウンドドッグだよなぁ?
わかってんだぞ?アジトの場所を教えろやコラ!!」
ルカはノリノリで尋問を始める。
「・・・俺らみたいな末端は何も知らない」
「あぁ??舐めてんのか?
何も知らねえ事はねえよなあ?
知ってる事全部吐き出せやー!!」
ルカはそこから暫くの間、大変楽しそうに尋問を行ったのだった。
その間、他のメンバーは積み荷の中身を確認する。
中身は予想通り、怪しげな薬が入っていた。
その一部はサンプルとして持ち出し、後ほどキースに研究を任せる事にし、余った大量の薬はナギの魔術で全て焼却処分で片付けた。
「・・・・知ってるのはこれで全部です。
俺らは本当に知らない事が多くて、
むしろあなた達が殺したその人の方が詳しいはずです・・・」
ルカの尋問によってだいぶ素直になった男はあらかたの事を教えてくれた。
まず、組織のアジトには立ち入った事はなく、アジトの場所も知らないという事。
薬の運搬は寄せ集めの下っ端が行っており、積み荷を受け取る、というより積み荷が置いてある場所で荷物を積む作業を行っていたそうだが、毎回その場所はバラバラという事。
また組織のリーダーが誰なのかや、顔立ちや声すらも聞いたことがないという事。
そして、本来、炎威の国の入国証を渡してくれる予定だった凛達に倒された男の方が立場が上で、その人の方が多くを知っているはずという事だ。
「こいつから聞けたのはこんなもんだ。
やっぱトカゲの尻尾切りって感じで
末端のこいつらはロクな情報持って無いっぽいわ」
両腕を広げて降参のポーズをするルカは、振り返りながら無言になったゾンビを指さして話を続ける。
「情報持ってるのは自決しちまったそのゾンビくんだな」
ルカのその言葉にダンも納得の表情をする。
「確かにそいつは捕まってから自決まで迷いが無かったからな。
相当な覚悟で組織に属していたはずだ。
中々アジトを見つけるのも骨が折れそうだな・・・」
凛はその会話を聞きながら申し訳なさそうに手を挙げた。
「あ、あのー・・・でしたらこのゾンビ状態からでも情報聞き出せますよ?」
凛は恐る恐る気まずそうにそう言った。
「「「えっ!?」」」
一同は驚きの顔で一斉に凛の方へ振り向く。
「・・・・ごめんなさい、そこまで伝えてませんでしたね」
凛は頭を下げてそう言い、ゾンビの方へ近づき指示を出す。
「ハウンドドッグについて全て教えて」
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