24. ハウンドドッグと謎の異端者
僕は廃墟の二階を秘密基地にして、普段から一人で本を読んでいたんです。
本に没頭していて気付かなかったんですが
いつの間にか様子の悪い人達四人くらいが下に集まっていました。
なんだろうと思って覗いてみたら、何かの取引をしているようでした。
見渡すと出入り口には見張りもいたので、僕はきっとやばい取引なんだと思いました。
「中身を確認しろ」
「・・・本物で間違いないです」
「よし。金を払おう。
今後のハウンドドッグとの取引は君とすればいいかな?」
「・・・・・・・・」
「ふっ。
こんな場所でもジェスチャーとは、徹底しているな。
ではまた連絡する」
ハウンドドッグの一員と思われる人間は最低限の取引を終えると、瞬く間に姿を消していました。
何かを購入し、廃墟に残った二人はすぐには移動せず購入したモノを袋から開封してる様子でした。
僕はそれが気になり、よく見える位置で覗こうとしたその時でした・・・。
ジャリッ
「ん?今物音がしなかったか?」
「・・・確認してくる」
廃墟に落ちてる小さな石ころに足を滑らせ、音を立ててしまったのです。
やばいっ・・・!!見つかってしまう・・・!!
僕は両手で口を抑え、廃墟の柱の影で息を潜めました。
コツ。コツ。
とコンクリートに響く革靴の音が徐々に近づいてくると同時に、自分の心臓の鼓動音も大きくなるのを感じ、相手にこの鼓動の音が届いてるんじゃないかと、そんな心配をし始めた時。
ドォォーンッ!!!
轟音と共に廃墟の扉が吹っ飛んできて、そこには見張り役の二人が倒れている姿がありました。
「てめぇ何者だ!!」
僕の方へ向かってきていた人は途中で足を止め、吹っ飛んだ扉側に一人で堂々と立つ、金色の短髪の男に向けてそう言いました。
「お前らこそ何者だ。こんな廃墟でコソコソと」
その人は全く動じていない様子で、取引が行われた事を知っていたかのような口ぶりでそう言ったのです。
まるで正義の味方のような彼の登場で、僕は目を奪われました。
「はっ。ガキのくせ。に張ってたって訳か。
じゃあ二度と口が聞けないようにしねぇとなぁ!!」
輩の一人がそう言い、彼に魔術を唱えようとします。
「フレイムバーン!!」
輩の右拳から炎が溢れて出て、輩はそのまま彼に殴りかかりにいきました。
それでも彼は全く動じず、身動き一つ取らずに魔術を詠唱します。
「・・・シェド・ライトニング」
彼がそう呟くと、彼の周りから雷が発現し轟音と共に輩へ向かって雷光が纏われました。
「ぐわぁぁああっ!!!ウッ・・・!!」
輩は雷によって身体を痺れさせながら燃え焦げ、気を失っていました。
なんて強さだ・・・。
しかも見た事のない魔術!
若そうな人なのに圧倒的だ・・・かっこいい。
「てめぇやりやがったな・・・。
俺達に手を出した事を後悔させてやるぜ」
もう一人の輩は取引で購入した何かを腕に注射しました。
「うぅおぉぉおおお!!!」
注射と同時に輩は叫び出し、身体全体の血管が赤く光り出したように見えました。
「チッ」
それを見て、彼の方も流石にまずい雰囲気を感じているようでした。
「ハハッ。こりゃ上質だ・・・」
輩は自身の身体を瞳孔の開き切った眼で見つめ、彼の方へ向き直ります。
「オラァ!!!」
輩は地面に拳を振り下ろし、そこから氷の結晶が続々と隆起し彼の方に牙をむきました。
「くっ・・・!」
彼は地面から飛び、廃墟の二階に飛び乗りました。
二階から見下ろす彼と一階から見上げる輩はお互い睨み合い、そこから激しい魔術の戦いが始まり、勝負は拮抗していました。
僕は被害を被らないように頭を抱えて隅にいるしかありませんでした。
その混戦の中、僕が身を隠していた方向に魔術が飛んできてしまい、瓦礫が崩れ落ちてきたんです。
間一髪で下敷きになるのは免れましたが戦ってる二人に僕の姿は丸見えになってしまいました。
輩はニヤリと笑みを浮かべ、僕の方に勢い良く飛んできました。
僕は足がすくみ、それを眺める事しかできず一気に血の気が引きました。
死んだ・・・・
そう思い目を瞑ったその時。
ドゴッ!!
鈍い音がし、目を開くと目の前に迫っていた輩を彼が蹴り飛ばしている姿が目に映りました。
「なんでこんな所にいる!早く逃げろ!」
彼にそう叫ばれ、僕は逃げようとしましたが、腰が抜けてしまい立ち上がることすらままなりませんでした。
「ごめんなさい・・・動けません・・・」
僕は振り絞った声でそれだけ伝えました。
「くっ、なるべく離れてろ!」
バコーンッ!!
吹っ飛ばされた輩が瓦礫を蹴り飛ばし壁から這い出て、こちらを睨みます。
「・・・・うおおおおッ!!!」
輩は再度こちらに飛び込んで、腕に氷の槍を生成してこちらに向けてきました。
「ライトニング!!」
その言葉と同時に彼から眩い光が発光され、一瞬で視界が真っ白になりました。
「ぐおっ!!小癪な・・・」
輩は視界を奪われ、目を瞑ります。
「これで最後だ・・・デトロイト・ライトニング!!!」
輩の視界が奪われている内に、彼は両の手の平から雷の魔術を発動しました。
ドゴオオオオンン!!!
凄まじい轟音が鳴り響き、輩の身体を鋭い雷が貫きます。
「ぐあああああっ!!!!」
輩は氷で防ごうとしていましたが、瞬時に氷は粉々になり、身体は焦げ、力なく落下しました。
彼は焦げた輩に近づき、死亡を確認し、僕の方へと振り返りました。
「君みたいな子供がなぜこんな所にいた」
「いつもここで本を読んでて・・・気づいたら怖い人達が・・・」
「そうか・・・これに懲りて本は家で読め」
「あの・・・あなたは何者なんですか!」
「俺は・・・別に何者でもない。
子供は帰れ。俺はこの取引の代物を調査する必要がある」
「名前だけでも・・・!」
「知ってどうする。 早くいけ」
その言葉のあと、彼は急に顔つきが強張り、何かを感じた様子でした。
「おい・・・やはりここにいろ・・・敵がくる」
「なっ!!」
僕はすぐさま身を隠す場所を探しました。
「この穴に入れ!ここなら戦いの影響を受けにくい」
彼にそう言われ、地面に空いた穴に入り、人ひとり入れる程度のスペースを開けて彼が瓦礫で塞いでくれました。
「俺が声をかけるまで出てくるな」
「・・・はい!」
僕はそこで耳を塞ぎ、目を瞑り、じっと丸まりました。
時々起こる衝撃での揺れに怯えながら、早く過ぎ去ってくれと願いながら。
どれくらいの時間が経ったのかは分かりませんでした。
真っ暗な瓦礫の下で衝撃に身体を震わせていた時間はあまりにも長く感じたような気がしますが、
衝撃が収まり、静かになった時にはあっという間にも感じていました。
僕は目を開け、恐る恐る瓦礫から顔を出し、外を覗きました。
すると、二十人程の人が倒れていたんです。
僕はあの人が勝ったんだと思いました。
そして瓦礫から這い出たのですが、這い出てすぐ後ろ側に彼が傷だらけで壁にもたれかかっている光景が目に入ってしまいました。
「・・・大丈夫ですか!!!」
僕は彼に駆け寄りました。
「ゴホッ・・・ハア。
俺は・・・もうじき死ぬ・・・」
「そんな・・・!!」
彼は全身ボロボロで、腕も足も動かないような状態でした。
「なあ小僧・・・異端者をどう思う・・・?」
彼はそんな状態なのに何故かそう聞いてきました。
「・・・なんでそんなこと!助けを呼ばなきゃ!!」
「いいから!・・・答えてくれ」
彼は怒号混じりの声でそう言い、僕は一瞬固まってしまいます。
「あなたみたいな異端者だったら、とてもかっこいいと思う・・・」
僕はその時の素直な気持ちを伝えました。
「ふっ、そうか・・・。
なら・・・頼みたい事がある」
僕はそれが死に際の最後の頼みだと察し、耳を傾けました。
「・・・はい」
「異端者を・・・異端の能力を研究し・・・仕組みを暴いてくれ・・・。
皆、理由がわからないから・・・忌み嫌っている。
納得できる仕組みが・・・解明されれば・・・世界はまた一歩、前進できる」
彼はそう言っていました。
異端の謎を解明してくれと。
それが世界の前進に繋がると。
「自信はないけど・・・わかりました。
・・・全力でやります!!」
幼かった僕は無責任ながらもそう言い、彼の意志を継ぐことにしたのです。
「・・・ありがとう。
ではお前はここから離れろ・・・。
また増援がここに現れる・・・ゲホッ」
「そんな・・・!あなたを置いてはいけない!」
「・・・はやくいけ。
あと・・・俺の名は・・・トランザだ」
「トランザさん・・・僕の名前はキースです。」
「キース・・・いい名だ。
あぁ・・・最期くらい両親に感謝くらい伝えたかった」
彼はその言葉を最後にゆっくりと瞼を閉じ、それ以降動くことは無かったです。
「トランザさん・・・トランザさぁぁああん!!」
僕は泣き喚きながら、トランザさんの言う通りその場を離れました。
だから僕は、僕の事を命を張って助けてくださったトランザさんの意志を継いで、異端の研究をしなければならないんです!
わかってくれますか!!
「うぅ・・・グスっ・・・」
ルカとサキは二人とも泣きじゃり、真っ赤な顔をしていた。
「えっ・・・」
キースは面を食らったかのように固まった。
「ルカはこういう奴なの。他人の話にすぐ感情移入し過ぎちゃうから
大体こういう時は泣いているわ」
ナギは呆れたような顔でそう言う。
「サキちゃんまで泣いてるよ・・・。どうしよう」
凛は泣きじゃくる二人を見てあたふたしていた。
「・・・うーん。でも雷の魔術なんてのも存在したのね」
ナギは異端能力の底知れぬ謎に思考を沈める。
ギィィィ
入り口の扉が開く音が聞こえ、全員が入り口の方へ振り返る。
「おう。今日はなんだか賑やかだな」
ダンが戻ってきたのだ。
「お邪魔しまーす!」
ダンの大きい身体からひょこっと覗くように紹介所代表カレンが挨拶した。
「・・・カレンさん!!」
ナギは驚愕の表情で目を丸くし、そう呼んだ。
「ナギちゃん久しぶり~!!」
カレンはすぐさまナギの方へ駆け寄りナギを強く抱きしめる。
「苦しいですぅ・・・」
ナギは息が詰まりそうな声でそう喘いだ。
その光景を見て凛は疑問がいっぱいになり、怪訝そうな顔でダンとカレンの方を交互にきょろきょろと見つめた。
ルカもさっきまで泣きじゃくっていたがカレンの登場の衝撃で涙も止まり、固まっていた。
ダンはルカの方へ向かう。
「ルカ、話があるからちょっといいか」
ダンはルカに外へ出るように促しそう言った。
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