22. ウィズダムの始まり
話は今より七十年ほど前に遡るわ。
この街、ウィズダムの始まりの話。
魔術混迷期が終わり、
今の四大国が生まれてしばらく経った頃、
当時の神の使いの最後の言葉に、皆従っていたわ。
「属性ごとで集落を作り、それぞれで平穏に暮らしていけ」
そのたった一言ですら影響力があった時代だから
別の属性持ちの魔術師が同じ場所で暮らすことは
ダメなんだっていう空気が漂っていた。
しかし、それぞれの国で文明が発展していき、
利便性が上がると同時に、どうしても他の属性の魔術を
自分の国の生活に活かしたいという意見が増え始めた。
各国の代表は、その意見を汲み取り、
国同士で魔道具の貿易を実施する事になったの。
それからは四大国がそれぞれの属性に特化した便利な魔道具を
輸出入し、当然、他の属性の魔術師との接点も増えたわ。
そしてある日、魔道具商人として貿易の旅に出ていた
とある魔術師二人が、禁断の恋に落ちてしまった。
その人達の名は、
炎威の国の魔術師アトラス、氷壁の国の魔術師ペトラ。
二人は当時では考えられなかった
異国の術師同士での交際を始めたの。
でも仕方がないわよね?
好きという気持ちは抑えようがないもの!
「はあ・・・・」
ダンは恋愛には縁がなかったので変な返事をしてしまう。
それでね、その二人は貿易の回数を重ねる度に
どんどん親密になってね、
今回の貿易ではペトラに会えるだろうか。
今回はアトラスはいるのかしら。みたいな感じでね
お互いを想い、恋焦がれていったのよ。
「それで・・・・どうなったんですか」
ダンは恋愛パートは不要というかのように結論を急かす。
それでね、ついに二人は我慢ならなくなって
国から出ていき、ひっそり二人で暮らそうという強行手段にでたの。
他に同席していた商人にも協力してもらい貿易の途中、
行方不明になったという体裁を装ってね。
禁断の愛は誰の目にも触れない場所で
誰もいない地で、ちゃんと成し得れたってわけ。
「国側は二人の計画にはその後も気付かなかったんですか?」
当然気付いたわ・・・でも黙認した。
気づいた頃にはもう貿易も盛んな時代で交流も増えていたし、
別の属性同士の暮らしが本当に悪影響を及ぼすかも疑問だったし、
国としてもある意味いい実験のサンプルだったって事ね。
「なるほど。それでそれがウィズダムとどう関係してくるんでしょうか?」
その後がね、商人の間で二人の禁断の愛の話が噂として広まりだして、
一部の魔術師で同じような愛の脱走が起きたりもしたの。
他にも当時の四大国はまだ国としても未熟だったから
国の意向に納得できない一部の民衆とかが国を抜け出したりする事も起きていてね。
そういった国を抜け出す人達が集まった先が、
アトラスとペトラが暮らしている場所だったの。
アトラスやペトラは、元々魔道具職人という事もあって
少ない集落と言えど生活の利便性は申し分なかった。
そこに惹かれてなのか、国を離れた人のほとんどが
アトラスとペトラの元に集まっていったわ。
当然、その人達の中には各国の魔道具職人もいたから
発展スピードはかなり速く、独自の進化を遂げた街となった。
・・・それが、今の『ウィズダム』よ。
「・・・・!!
そうだったんですね・・・」
そう。その後は暮らしてる人の中で新たな子が産まれ、人口も増えていった。
ただ来るもの拒まずの街だったから
あなた達のように異端事件で追放された異端者も多く受け入れた。
それが良かったのか悪かったのかはわからないけれど
ある程度の治安は守られていたから不便までは無かったみたい。
それもこれも、アトラス、ペトラが裏側で良好な治安になるように
受け入れた全ての人と関わりを持ち続けたからだそうよ。
「それは凄いですね」
そして、アトラス、ペトラの間にも新たな命が誕生した。
その子の名前は ・・・"トランプ " 。
「トランプ・・・聞き覚えがあるような・・・」
ダンは腕を組みながら記憶を辿った。
「そりゃあ聞き覚えあるはずよ。私の旦那だもの」
カレンはとぼけたような顔でそう告げる。
「ええ!!旦那さんがそうなんですか!」
ダンは机にバンと手を叩きつけ立ち上がり、声を上げた。
「ハハハッ!!良い反応ねえ!その反応が見たかったの!」
カレンは腹を抱えて笑い出した。
「ちょっと衝撃過ぎます・・・詳しく聞かせてください」
ダンは少し混乱し、頭を整理し始める。
「結論から言うとね?今のウィズダムは
旦那のトランプと、私で治安を維持させているわ」
「・・・カレンさんが紹介所の長として、経済と治安のコントロールを
しているのは理解できますが、トランプさんはどこで何をしているんですか?」
「旦那は影の人間として、たった一人で犯罪者を取り締まっている。
今もこの街のどこかでね」
カレンは少し悲しげな目でそう言った。
「・・・一人で・・・影でですか」
ダンは絶句した様子でそう言い、更に話を続ける。
「ウィズダムは異端者もならず者も多く存在します!
それを一人で規制しているなんて・・・。
なぜもっと大々的に組織を立ち上げて規制しないのですか?」
ダンは疑問をカレンに投げかける。
「トランプが表舞台に立たないのは・・・彼もまた、異端者だからよ」
「・・・・・・・!!」
「組織がない以上、仕方のないのかもしれないけれど
彼の業務は影での犯罪者への武力行使。暗殺がメイン。
大きな事件を未遂で済ます為に、私が情報を集め、彼が裁く。
この繰り返しでこの街は今まで成り立ってきた」
カレンのその言葉からは色々な決意が垣間見え、ダンはそれ以上なにも言えなかった。
「でもね、最近は腕の立つ犯罪組織も出来始めている。
トランプ一人で全てを解決するのにも限界は感じているわ」
「・・・だから・・・取引をしましょう」
カレンはダンの方を見つめ直してそう言った。
「取引・・・ですか?」
「ええ。取引の内容はあなた達のリーダー。
ルカと決めさせてもらいたいから、一度会わせて頂戴」
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