21. 紹介所のカレン
ダンは異端解放団のメンバーの装備を資金内で揃える為、紹介所から仕事を委託している職人の中でも優秀な職人に絞り、交渉を行っていた。
「ふむ。 安く魔道具を提供してほしいという事ですね」
「そうです。今後、優先的に仕事の紹介を斡旋する分、
あなたの作る魔道具を安く購入させてください」
「話はわかりました。
この話はまた後日、より具体的にゆっくりとお話させてください」
「・・・わかりました。本日は引き取らさせて頂きます」
ダンはそう言い、深くお辞儀をしたのちに店を後にした。
やはり警戒心が強いか・・・。
俺の交渉力が乏しいのもあるが、あまり乗り気になってくれる人はいないな。
とはいえ装備に妥協はしたくない。
ここで妥協して誰かが命を落とすなんて事があったら耐えられん・・・。
「戻りました」
ダンは紹介所に戻り、勤務しているメンバーに挨拶をする。
「・・・ダンくん。最近疲れているように見えるけど大丈夫?」
紹介所を運営している代表のカレンがダンを心配する様子でそう言った。
彼女はこの仕事紹介所のトップで、仕事の能力もコミュニケーション能力も高い。
四十代とは思わせないワインレッドの艶のあるショートヘアがよく似合う。
「いえ、問題ありませんのでお気になさらないで下さい!」
ダンは即答で答え、自分の机の席に着く。
「本当?前より出勤する日数も増えてるし、なにかあるんじゃないの?」
流石に勘が鋭い・・・。
元々職場ではキャラを作ってテンションを上げていたのが仇になった。
最近は余裕がなく素で仕事をしてしまっている。
うまく誤魔化さなければ・・・。
「いえいえ!どうせ働かないと暇ですし。
疲れっぽいのは急に日数を増やし過ぎて疲れてるだけかもしれません」
「なるほどねえ。 ちょっと今日仕事終わりに飲みいこうか!」
「あ・・・はい! 喜んで!
宜しくお願い致します!」
ダンはカレンの唐突な提案に咄嗟に返事をする。
完全に怪しまれてるな・・・。
まさか飲みに誘われるなんて。
酔い過ぎないように気を付けねば。
――――
「かんぱーい!!今日は気にせず飲んでね!」
代表のカレンの乾杯の音頭と共にサシ飲みが始まる。
「わざわざお誘いいただきありがとうございます。
心配をおかけしてしまっていたなら申し訳ありません」
ダンは丁寧にそう言い、頭を下げる。
「そんな辛気臭い事言わないでよ~。
ダンくんはうちに勤めて長いし、後輩の面倒見もいいし
うちからしても助かってるんだから~」
カレンはグラスを持ちながらダンの顔を覗き込んでそう言った。
「そんなとんでもないです。
働かさせていただいてるだけで代表には感謝してます」
ダンは代表のカレンに頭が上がらない。
「ナギちゃんは元気にしてる?」
「おかげさまで何とかやり繰りして元気にやってます」
「そっか・・・。良かった」
ダンとナギが玉風の国からこの街に辿り着いた時、行くあてのなかった俺達二人は代表に助けられ、紹介所で雇用してもらった経緯があった。
当時ナギはまだ幼かったので、俺のみが働かさせてもらった。
今まで直接言葉にはされなかったが、きっと代表は俺達が故郷を追いやられた異端者と気付いていただろう。
「でさ、ダンくん。最近、魔道具制作の職人さんと何かやろうとしてる?」
その言葉を聞き、ダンは思わず息を吞んだ。
「・・・何でそう思われたんですか?」
ダンは先にカレンの意図を知る為、質問で返した。
「いやいや、急に出勤日数増えたかと思ったら
明らかに魔道具職人の人とのアポイントが多いし
なにか企んでるんじゃないかと思ってさ!」
いやらしい表情でカレンはそう詰め寄る。
「・・・・特に深い意味はなく、
魔道具に個人的に興味があったからです」
ダンはカレンの顔を見ることなくそう答えた。
「なんで嘘つくの?」
カレンはそう言い、一枚の紙を机の上に置く。
ダンは目を見開いて固まった。
「報告書よ。ダンくんが魔道具を安く卸せないか
紹介所のツテを使って交渉してきたと職人さんから聞いたわ」
「くっ・・・・申し訳ありません・・」
ダンは逃れられないと思い、素直に謝罪した。
「ダンくん、私はあなたを心配しているの。
何をしようとしているのかは知らないけれど、
怪しい動きは辞めた方が良い」
ダンは弁解しようか一瞬迷ったが、発言を控えた。
「私はね、ダンくんかナギちゃんのどちらか、もしくは両方が異端者だと思っている」
カレンのその言葉にダンは思わず目が泳ぐ。
「私が言いたいのは、異端者と仮に知られた状態で
魔道具を買い漁るような真似をした場合、
客観的に見て不穏な動きと捉えざるを得ないの」
カレンは真剣な表情だった。
その目にダンはなにか覚悟を感じた。
「昔も今も、異端者のイメージが悪いのは
異端者が事件の一端に関わってることが多いからなのは
あなたも十分知っているでしょう・・・・お願いだから白状して」
真っ直ぐダンを見つめてカレンはそう詰め寄る。
「・・・・ふう。
・・・わかりました」
ダンは一息つき、異端解放団の事、今後の活動の事を話すことにした。
魔獣の討伐も、現在の活動状況も、ありのままのすべてを。
カレンはその話を真剣な眼差しで無言で頷きながら聞いてくれた。
「・・・以上です」
「・・・・思ったよりも壮大で正直驚愕しているわ・・・」
カレンは手で開いた口を覆いながらそう言った。
「無理は承知ですが見逃していただけないでしょうか・・・」
もし、俺のこの頼みが断られたらあいつらに合わす顔がない。
カレンさん、頼む。 聞き入れてくれ・・・!
ダンは目を瞑り祈るように頭を下げた。
「見逃すのは難しいわ」
くっ・・・終わった・・・。
「むしろ協力させなさい。」
「・・・え?」
ダンは目を見開き、顔を上げる。
「あなたには私の・・・・いえ、私たちのすべてを話すわ」
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