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与えられた禁忌の魔術で復讐を ~凛として咲く仇花~  作者: 一ノ瀬 凪
第一章 異世界で芽を出すクロユリ
18/67

18. 氷壁の国での謁見

- 氷壁の国 -


「流石に寒いな」

 卓也が腕をさすりながらそう言った。


「あたしも震えが止まらないよお・・・」

 舞も小鹿のように足を振るわせている。


 勇者達は玉風の国を出る時にダウンジャケットのような厚着を渡されていたものの、氷壁の国の近辺は所々がアイススケートのように氷漬けになるほどに氷点下だった。


「こちらが氷壁の国の王宮になります」

 氷壁の国の将軍に案内され、勇者達は王宮の門をくぐる。

王宮内は温度調整がなされており、門をくぐった勇者達は想像以上の暖かさに思わず笑みが零れた。


 王宮内も氷を基調としたデザインになっており、綺麗に磨かれた氷のようなガラス細工が勇者達を反射させて鏡のように映す。

まるで神殿のような造りのこの王宮は空間を神秘的に感じさせた。


 早苗は王座まで真っ直ぐに敷かれた絨毯の上を歩きながら、王宮内を見渡して呟く。


「素敵ね・・・。今まで一番好きな王宮だわ」

 

 現在は氷壁の国の到着直後なので、これから女王への謁見の時間となる。

勇者の視線の先の王座の前で立つ女王は、歩み寄る勇者達を見つめてにこりと微笑んだ。


「ようこそおいで下さいました。

 氷壁の国、女王のアンデルです」


 黒髪のショートカットで青いドレスを纏った女王が挨拶をした。


 勇者たちは片膝をついて跪き、顔を地面に向けて忠誠のポーズを取る。

これで三度目の謁見になるのでもう慣れたものである。


 そんな中、茶化すように瞬太郎が無駄な口を開く。


「・・・この国の女王の顔キツめだよな」


 瞬太郎の小声のその言葉を全員は無視した。

そんな言葉を囁かれているとは知らずに女王は話を続ける。


「そして私の横にいるこの子は、息子のクライアです。

 息子は魔術こそ扱えませんが、剣の腕は立ちます。

 年齢も皆様とさほど変わらないので、

 彼の修行の為にも共に修行相手としてお付き合いいただけるとありがたいです」


 女王がそう言うと、息子のクライアが一歩前にでる。


「アンデル・クライアと申します。

 僭越ながら、勇者様と稽古をさせていただきたく存じます。

 本日から100日間、何卒宜しくお願い申し上げます」


 クライアは自信に満ち溢れたような笑顔で、堂々と丁寧に挨拶をした。

誠実そうな顔立ちで黒の短髪が彼の誠実をより助長させる。

腰に差している剣は通常よりサイズが大きい大剣の為、筋力もあるのだろう。


 その後、勇者たちはこの国の滞在期間中に宿泊する客室を案内され、お昼まで時間があるので例のごとく一つの部屋に集まった。


 扉を閉めて早速口を開いたのは瞬太郎だった。


「ちょっとあの息子の感じ鼻につくんだよなあ」


 瞬太郎は立派な挨拶をしたクライアに何故か嫌悪感を抱いているようだ。

それに対し、早苗は反論する。


「はあ?あんたが礼儀も見た目も劣っているから嫉妬してるだけでしょ?

 中々イケメンだし、謙虚そうで良いじゃない」


 逆に早苗はクライアを気に入った様子だ。

その早苗の様子を見て、卓也は早苗に笑みを浮かべながら話しかける。


「早苗は魔物討伐後はこの国配属だしな。

 イケメンもいるし、王宮も気に入ってるみたいだし

 良かったんじゃないか?」


「そうね。今の所は満足いきそうな気がするわ」


 早苗は上からの物言いで返事をした。


 舞はこの会話を聞いていないのか、ぼーっとした表情をしていた。

卓也は会話に入ってこない舞を案じて舞に話を振るように会話を展開する。


「俺も炎威の国の雰囲気は悪くないと思ったから

 配属になっても別に不満はないな。

 舞は玉風の国は気に入ったか?」


 舞はあまり元気がない様子で答える。


「んー。あたしは配属されても旅に出たいなって思ってる。

 国から出させてもらえるかはわからないけど・・・」


 舞の心の中はずっとサキの事でいっぱいだった。


―――


 玉風の国に配属されても、あたしはウィズダムに行ってサキを探したい。

サキとずっと一緒に居られるようにしたい。


元気にしているといいな・・・サキ・・・。


―――


 そうこうしてる内に昼食の時間となり、一同は食事に案内される。

そこには話題に上がっていたクライアも同席していた。


「勇者様と一緒にお食事なんて光栄です。

 皆様のお力は常々伺っております。

 この世界出身の者とは比べ物にならないレベルの魔術を扱いになると」


 クライアは流石は貴族と思わせるような勇者を立てる話しをしてくる。

それに気を良くしたのか、瞬太郎は乗せられてる事にも気づかずに口を開く。


「まあ、地形を変えてしまうレベルの魔術くらいはお手のもんだな!」


 瞬太郎が虚勢を張って大袈裟に話した。


「素晴らしいですね。魔物などあなた方なら簡単に蹴散らすのが目に浮かびます」


 クライアもまた大袈裟ともいえる言葉で返した。


「楽勝だろ!負ける気がしねえぜ!」


 どんどんと調子に乗る瞬太郎の様子をみて、他三人の勇者は瞬太郎の単純さに呆れていた。

これ以上は見てるこちらも恥ずかしいと思い、早苗は話題を変えようとする。


「クライアさんは魔物を見たことあるんですか?」


 早苗はクライアに普段より丁寧な話し方で質問した。


「何度もあります。実は魔物の襲撃件数はこの国が一番多いんです。

 なぜかはわかりませんが定期的に国境付近に現れ、その度に討伐しております。

 時には群れでの襲撃、時には凶暴な一匹での襲撃。様々な形で過去襲撃を受けており、

 その強さと脅威は年々と増しております」


 卓也は初めて聞く生の魔物の情報に興味が湧き、質問を重ねる。


「どのくらいの頻度で魔物は現れるんですか?」


「氷壁の国の場合は・・・年に二~三回程度ですね」


 クライアは斜め上を見ながら少し考えた後にそう話した。


―――


 卓也は率直に思ったより多くないな。と感じた。


 良く考えたら炎威の国、玉風の国に滞在した時も一度も魔物を見ていない。

そもそも被害と言っても大した被害には合ってないのか。

どちらかと言うと大きい被害を未然に防ぐ為に俺達を召喚したんだろうか。


んー。ゲームの世界と比べたら圧倒的にぬるいな。

リアルの王達は打つ手が早いってことなのか、それとも実は魔物自体が大した脅威ではない存在なのか。

魔王のような存在も聞いていないしな・・・。

だが自分の命を懸けた旅だし、楽にこしたことはないか。


―――


「俺達がこの世界に来る前に誰かが魔物の討伐に

 向かったことはあるんですか?」


 卓也は疑問を解消すべく、多少の失礼を承知で質問責めを続ける。


「勿論あります。当時はまだ四大国が連合を組む前で

 四大国同士もそんなに良好な関係ではなかった時代ですが、

 土塊の国の部隊が一度と、我が国の部隊でも一度あります。

 結果は、どちらの部隊も戻ってこず、消息不明という結末です」


 クライアは遠征の結末をそのまま話してくれた。

それを聞いた卓也は少し顔をしかめる。


―――


 なるほどな。

魔物からの襲撃被害は少ないがこっちから魔物生息エリアに出向けば全員亡くなってるのか。

確かにいつか魔物から全力で攻め込まれたら被害は想像できない。


はあ・・・。

となるとなんだかんだハードゲームになりそうだな・・・。


―――


 卓也はそう思い、ナイフとフォークを握りながら天を仰いだ。


 早苗も不安な様子を隠せないでソワソワしていた。


「それを聞くとちょっと不安になるわね・・・」

 

 勇者を見渡しながら早苗は力なく呟き、舞もそれに同意して頷いた。


「そう・・だね・・・・」


 悪くなっていく空気を察してか、クライアは口を開く。


「勇者様の実力ならきっと大丈夫です。

 私も勇者様のお力になれるよう尽力します」


 クライアは真剣な表情でそう言葉をかけてくれたが、不安がる勇者達に対して心の底から安心しているようには見えなかった。


 勇者達もその言葉に勇気づけられる事はなく、自分達が間違いなく勝てると安心できるように強くならなければとむしろ焦りを感じる。


 その後の会話はさほど盛り上がる事もなく、他愛もない話で食事は終了し、午後からの訓練に備えて勇者達は各々の部屋に案内された。




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投稿頻度を週四回で行っています!

投稿する曜日〈 月、火、水、木 〉

※2023/6/19~ 上記曜日に変更してます。


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