16. 新たな目的
「よーし!完成だあ!!」
ルカは一枚のチラシを両手で持ち上げそう叫んだ。
「本当ですか!見せてください!」
凛はルカの方へ駆け寄り、チラシを確認する。
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〈 異端能力者よ集え!! 〉
能力の制御の仕方がわからず、扱えない!
自分の能力を世の中に役立てたい!
そんな悩み・想いをお持ちのあなた!
我々は生まれ持った異端能力によって迫害され、
能力を隠し、怯えながら生きなければならない
異端者を救う為に立ち上がった集団です!
差別を無くし、全員が同等の暮らしが
できる世界を共に作りましょう!
少しでも共感してくれた同士よ!!
毎週月曜 18:00 にこの掲示板前に集合!
異端が認められる世界を!!
共に革命を起こす仲間求む!
異端解放団 より
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凛はチラシを一通り見ながらうんうんと頷く。
「シンプルでいいかもですね!」
凛はルカの方を向き直してそう言った。
「だろだろ?俺は文才もあるかもしれないな!」
ルカはやっと完成したチラシに満足そうな表情を浮かべていた。
そこに後ろからダンがチラシを覗き込むように割って入る。
「とはいえ警戒はするだろうな」
ダンの呟きに凛とルカは怪訝そうな表情になり、その二人を見てダンは補足するように続ける。
「ウィズダムは国ではないし、四神教の拠点もない分
異端者が変に追われることは無いが
一般人から煙たがられるのはどこにいても変わらんからな」
ダンの懸念は最もだ。
しかしルカはそれを理解していたかのように返答する。
「勿論そうだ!なるべく異端者とバレたくないだろうね!
なんなら罠なんじゃないかと疑う者もいるだろうしな!」
凛は今からしようとしている取り組みに否定的な会話をしだした二人を見て、困惑した顔つきになる。
「え?・・・じゃあ・・・」
凛が不安そう呟くのを他所目にルカは話を続ける。
「でもだからこそ、その状態でも志願してくる人間を
俺は仲間に入れたいと考えてるよ!」
ルカは決して否定的でなく、それも踏まえた上でのこのチラシ作成をしていた。
凛はその言葉に安心し、ルカに同意する。
「・・・ですね!!」
凛はこのままボツになるのかもと一瞬疑念を抱いたが、そうではなかったことに胸を撫でおろす。
話が一区切りつき、ダンは再びチラシをまじまじと見つめ、顔をしかめて呟く。
「しかし・・・異端解放団はちょっとダサいな・・・」
ダンのその呟きに凛とルカはガーンという音が聞こえてきそうな表情で俯いた。
「あっ・・・すまん。
名前が一番触れてはいけなかったか・・・」
何故、凛達が仲間の募集に動いているかというと――――
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「ウチらで魔物討伐!?」
ナギは机をバンっと叩き、大きい声で疑念の表情をした。
ルカの突拍子もない提案にナギはまだ理解が追いつかない。
「そうだ!
昨日リンちゃんから詳しい話を聞かせてもらって閃いた!
危険だが成し遂げられれば対価はでかい」
ルカは冗談っぽくも真剣な眼差しで説得する。
ダンは腕を組みながらナギと同様に怪訝そうな表情をしていた。
「一体どういう事だ?」
ダンは取り敢えず詳細を聞こうとルカに問う。
「リンちゃんの話を聞く限りだと、
四大国は連合軍を組んでいて、勇者と共に魔物の討伐に動くっていう話だ。
実際、俺の情報網でも最近玉風の国で勇者が訓練しているという話は回ってきた」
ルカは全員に目配せしつつ、話を続ける。
「おそらく勇者が修行中ならまだ魔物討伐に動くには時間がかかるはずだ。
そこで、俺達が先に魔物を討伐してしまえば、
"異端者"のお陰で世界が救われることとなる!」
ルカは真剣なトーンから一気に陽気な声になり、そう言った。
ダンは少し考えるように斜め上に目線をやり、ルカへと視線を戻す。
「つまり、世間的な"異端者"のイメージ向上を狙うって魂胆か」
ダンはルカの話を理解したようだ。
ルカの横にいた凛も、ダンの言った言葉に反応して同調する。
「そ、そういう事です!」
おどおどしながら様子を見て同調する凛の反応を見る限り、ルカの提案に凛も既に同意済みの様子だった。
というよりは凛がルカに提案を持ちかけた可能性すら感じる。
凛の意見なのであればと思い、ナギも真剣に話を受け取った。
「・・・まあ言いたい事はわかるけど、不確定要素も多いわよね?
第一魔物は何体いてどのぐらい強いのかもわからないし、
魔物発生の原因も明かされていないわよね?
ウチらで根本的な解決まで持っていけるかしら・・・」
ナギは若いのにかなり冷静に物事を捉えていた。
だかルカはそのナギの分析を真っ二つにする。
「そんなもんはやってみないとわからん!!」
ルカのその発言にダンは呆れた表情になる。
「お前はいつもそうだな・・・」
ダンは頭を掻きながら呟いた。
「でも面白そうだろ?な?」
それでもルカは無理やり気味に全員に同意を求める。
こうなってしまっては止まらないと理解しているダンは、渋々とルカに乗っかることにした。
「・・・・まあな。取り敢えずはやる前提で考えてみよう」
「そうこなくっちゃな!」
ダンの同意に対してルカは嬉しそうな声で笑顔を振りまいた。
ナギもやる気になったのか、これからのイベントを楽しみにしてるかのような笑顔で皆んなを見渡す。
「じゃあ、今から作戦会議ね!」
ナギは元気よくそう言い、四人で話し合いが行われた。
この作戦会議で決まったことは三つだ。
一つ目が魔物の戦力の把握。
ナギが言った通り、そもそも倒せるレベルなのかどうかも規模もわからない為、敵情視察が必須だった。
幸い魔物が潜むと言われている領土に一番近い街がウィズダムだったので、偵察はしやすい範囲だ。
問題は誰がその役目を買うか。
これはナギが適任という事になった。
ナギであれば風の魔術で空も飛べるし、移動も早い。
もし仮に戦闘になったとしても四属性を扱えるナギなら強さとしても申し分ないということだ。
二つ目が戦力の強化。
流石に四人で立ち向かうのは危険なので、凛やダン、ナギと同じような境遇の異端仲間を募集すること。
これはリーダーのルカが面談して判断する事とし、広報も必要なので凛もルカを手伝う事となった。
三つ目が装備の調達。
魔物討伐に動くとなれば遠征になる為、それなりの装備や食料などが必要になる。
今までは半分仕事、半分修行の日々を送っていたので割とみんな最低限の生活費しか稼いでいなく、貯金はなかった。
ただダンだけは紹介所でそれなりの日数働いていたので、そこそこ貯めていたらしいが、それでも全員分の装備は賄えない額だ。
なのでダンには紹介所経由で繋がっている装備屋さんに融通を利かしてもらい、安く装備を買えないかの交渉をしてもらう。
そしてよりお金も稼ぐ為に出勤日数も増やしてもらい、調査中に軍資金を貯めてもらう事となった。
会議を終えて、全員がやるべき事の計画を立て始める。
その中で凛だけは別の計画にも思考を重ねていた。
皆を利用してるみたいになってしまって申し訳ないけど、
この作戦は皆の為にもなるし、私の復讐を叶える為の導線にもなる・・・。
凛の計画。
それは、魔物討伐に来た勇者達を殺す計画だ。
むしろ凛は、自分の計画を遂行する為にルカを今回の作戦に誘導した。
今回の表向きの目的は、魔物を討伐する事による"異端者"のイメージ向上で、異端者にとっても世界にとってもプラスになる話だ。
その裏で凛は、自分の目的の達成も視野に入れてシナリオを描いていたのだ。
凛が考え得る一番の理想のシナリオはこうだ。
勇者達は魔物討伐に失敗し、魔物に殺された。
そして、取り逃した魔物たちは"異端解放団"によって討伐し、無事に世界は救われた。
当然勇者は魔物に殺されたと偽装し、実際は凛が手を下す手筈だ。
この理想のシナリオが描ければ、凛の目標も、皆の目標も達成できる。
凛はこのシナリオを思い浮かび、少し前にルカに提案を持ちかけたという事だ。
まるで騙すかのような形になってはいるものの、異端解放団にとってプラスの事をしたい気持ちは凛も本心だったので、この提案が採用されて話が進んでいることに対しての罪悪感はそこまで感じていなかった。
むしろ勇者を殺したいという話を皆に話せていない事が凛にとっては心残りで、モヤモヤした気持ちが残る。
私個人の復讐に皆が力を貸してくれるかはわかんないな。
仮に力を借りれたとしても、大きなリスクを背負わせてしまうよね・・・。
勇者を殺すのに加担した事がバレたら世界に追われることになるし、そもそも勇者達との戦闘が危険が伴う・・・。
やっぱり、一人で成し遂げる場面を覚悟しないと・・・。
少しでも気になると思っていただけたら
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