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与えられた禁忌の魔術で復讐を ~凛として咲く仇花~  作者: 一ノ瀬 凪
第一章 異世界で芽を出すクロユリ
15/67

15. 本当の敵はどこに


 高速で舞の後ろから風が通り、男に風穴が空いた。

舞の頬に浅い一閃の切り傷ができ、静かに血が頬を伝う。

舞はその傷に意識がいかない程に目の前の光景に凍り付き、固まってしまう。


 なにが・・・・・起きたの・・・。

頭の理解が・・・追いつかない。


 コツコツ


 急に近くで足音が鳴る。


 さっきまで周りに人影なんてなかったのに・・・。


 舞は背筋が凍った。

本能的に身体が恐怖してるのがわかる。

舞は恐る恐る固まった身体を無理やり動かし、後ろを振り返る。


「おやおや、無事で良かったです」


 目の前には立派な教会の服を着た男がいた。

顔のしわや整えられた髭を見るに、五十代くらいだろう。

背丈も高いからか、背の低い舞からすれば見下されているような視線に感じる。


 四神教の・・・人・・・?


「お怪我はないですか?

 賊に襲われたのかと思い、助けにきたのですが」


 男はとても落ち着いた声で淡々とそう言った。


「あ、はい・・・大丈夫・・・です」

 舞は何者かわからぬ男に緊張が抜けず、身体は硬直していた。


「実は教会近辺で賊が現れたので、事態を収めようと回ってるのです」


 男はそう言うが、舞にはなんとなく説明じみた言い方に聞こえた。


「賊ではありませんでした。

 ・・・彼らは雇われた傭兵でした。

 まだ今回の件は片付いてはいません」


 舞は震えた声でそう言った。


「なんと、彼らはそう言ってましたか。

 どこまで話を聞かれましたか」


「いや、話を聞き出そうとした所、死んでしまったので

 それ以上はなにも・・・」


「そうでしたか!

 いやはや助けようとしたのが早とちりだったとは・・・。

 では今回の事件は私が引き取り調査します」


「あの・・・あなたは一体」


 舞は怖気づきながら質問した。


「ああ、名乗っておらず申し訳ありません。

 私はこの国の四神教司祭、アルベルトと申します」


「・・・・・!!」



この人が司祭・・・・!


「こちらこそ、気づかずごめんなさい!」


 舞はすぐさま頭を下げ謝罪する。

しかし、この人の雰囲気・・・なんだが異質過ぎる・・・怖い。


「いえいえ、しかし私に気付かないという事は

 他国からいらした方なのですか?」


「いや、あの、あたし一応勇者として

 玉風の国に訓練をつけてもらってる彼方舞と言います」


 舞は名乗るのを一瞬躊躇ったが、勇者と名乗った方が安全と判断しそう伝える。


「ああ・・・なるほど・・・。

 それはこちらも大変失礼いたしました。

 まさか勇者様だったとは・・・。

 道理で傭兵を返り討ちに出来たわけですね。

 となるとサキさんをご紹介いただいたのも、あなたですね」


 司祭アルベルトは勇者と聞いた途端考えるような間が空き、そう言った。


「サキさんは今どこにいるのかご存じですか?」


 舞はその言葉に本能的に狂気を感じる。

ただ居場所を聞いてるだけなのに舞の身体がざわついた。

咄嗟のその質問にどう答えようか舞は迷う。


 サキはいま路地裏で休んでいる、この噴水広場から目と鼻の先の路地裏で。

けど・・・あたしの直感がこの人に教えちゃいけないと感じている。


「いや、それがわからなくて・・・。

 あたしも探してるんですが、逃げれてるかどうかも・・・」


 舞は自分の直感を信じ、アルベルトに嘘をついた。


「ふむ・・・そうですか。

 では私は引き続きこの件の調査をします。

 同時にサキさんも探しましょう。

 舞様はお気をつけてお帰り下さい」


「わかりました。ありがとうございます」

 舞は頭を下げた。

その顔には汗がにじみ垂れていた。



 なんで司祭はこんなに落ち着いているの・・・。

なんで夜中に国の端っこまで司祭自らがきてるの・・・。

変わった人と訓練官は言ってたけど、そんなレベルじゃない・・・。


 ブワッ


 司祭は風の魔術で宙へ浮かび、飛び去って行った。


「ハア・・・」

 舞は力み過ぎて強張っていた身体が緩み、溜息をつき俯いた。


「うっ・・・オエッ・・・」


 俯いた先には司祭が殺した賊の死体が転がっている。

赤黒い血液は噴水広場の水を赤く染め、内臓は死体からただれ落ちていた。


 先ほどは司祭の気配に集中していて意識がいかなかったが、舞は目の前で人の死体を生で見るのは当然初めてだ。

司祭が飛び去ってから血の匂いと人間の中身からでる腐敗臭に意識がいきだし、瞬時に舞は嘔吐した。


 あの司祭・・・この人を殺すのもまるで躊躇が無かった。

やっぱりどう考えてもおかしい。

確証もないし、疑い過ぎなのかもしれないけれど、

あの傭兵がもし、口封じの為に殺されたのだとしたら・・・。

今回の事件が司祭の仕業の可能性がでてきちゃう。

だとしたら・・・やっぱりあたしは

サキの事を間接的に追い詰めてしまったって事だ。

司祭が犯人の可能性が1%でもあるなら、

もう身元が割れてしまったサキをここに置くわけにはいかない・・・!

あの司祭の手の届かない所まで逃がさないと。


 舞はそう決めて鼻をつまみ、気分の悪さを抑えつけながらサキの元へと駆け出す。

そして戻った舞の目の前には目を瞑り、床に倒れ込み、静かになっていたサキがいた。


 嘘でしょ・・・そんな・・・。


「サキ!!サキ!!!」


 舞は一心不乱にサキに声を掛ける。


助かったと油断した・・・!

サキの回復に出来る事を最優先するべきだった!

あたしの馬鹿・・・自分が嫌になる・・・。



「お願い・・・目を覚まして」

 舞はサキを抱きかかえて願うように呟く。



「・・・・すぴー」



「・・・・・・」


 どうやら舞の早とちりで、サキは疲れで眠ってしまっただけのようだ。


舞は自分の勘違いではあるが、あまりにも間抜けな面で眠るサキに少しだけ腹が立ち、サキの頭にげんこつをした。


「・・・痛てっ!! なにすんだ!」


 サキは目が覚め、頭を両手で抑える。


「なんでもない・・・」

 舞はサキの元気な反応を見て、心配して損した気持ちを相殺させた。


―――――


 舞はサキにこれからの事と、舞が思う仮説の話をした。


一つ目。

二属性を使える事を隠し生きる事。

これは異端者として扱われてしまうかもしれないから。


二つ目。

玉風の国から離れる事。

この国にサキを狙う存在がいるから。


三つ目。

四神教には近付かない事。

サキを狙うのが四神教関係者の可能性があるから。


この三つをサキに説明した。



「サキ、この三つを必ず覚えておいて。国を出るのは私が手助けする」


「・・・舞がそこまで言うなら・・・守る。

 あたいの親友だしな!」


 サキはあたしの仮説を受け止め、笑顔でそう言ってくれた。


「ありがとうサキ。

 じゃあ国をでた後、どこを目指すか伝えるね。

 四大国は四神教の息がかかってるから避けた方がいい。

 だから身を隠して生きれる場所がいいの」


「貧民街みたいな場所ってことだな!」


「そうだね!でも多分、貧民街よりはずっと快適だと思う。

 あたしも直接見たことは無いからわからないけど

 ここから北に進んだ先のウィズダムっていう場所を目指して」


「わかった!舞は物知りだな~」


「伊達にずっと勉強と向き合わされてた訳じゃないもの。

 あと、あたしもサキのお陰で魔術を使えるようになったから

 サキの行動のサポートを少しだけ出来ると思う!」


「おお!心強いな!!」


 二人はその後、夜が明けぬうちに身を潜めながら国境まで移動した。


「そよ風よ導け・カインドインサニティ」

 舞がそう唱えると、サキの周りに微かに風が舞う。


「その風がサキの行くべき方角を示してくれるから

 きっと迷わないと思う」


「おお!すげえな!助かるぜ!」


「じゃあ、これで一旦お別れだね・・・」

 舞は涙を堪えて、サキに別れを切り出す。


「おう。色々あたいのせいで振り回してごめんな・・・。

 こんな傷だらけになっちまったけど、

 生きてる内にこんなに楽しい時間過ごせるなんて思ってもみなかったぜ」


「あたしもだよ・・・絶対にいつか逢いに行くから!」


 舞はそういって右手を差し出す。


「必ず来いよな!待ってるぜ!マイ!」


 サキもそう言って舞の右手を強く握り、二人は固い握手をした。


「フロストタワー!」


 サキは魔術を唱え、氷の足場で国境の壁を上がっていく。


「ばいばい・・・サキ。 あたしの親友」


 舞はどんどんと遠ざかるサキを見上げて一人呟いた。



 何年かかったとしても、必ず魔物を倒してサキに会いに行くよ。


 舞は心の中で誓い、サキの姿は遂に見えなくなる。

氷で上へとあがるサキは、舞が見えなくなった途端に涙が溢れ出た。


「・・・ぐすっ・・・我慢してたのに止まらねえな。

 ・・・あたいのたった一人の友達・・・ぐすっ

 こんなにも寂しいもんかあ・・・」


 サキは涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、もう最後になるかもしれない夜の玉風の国の景色を涙で歪んだ視界で見納める。



 舞・・・次会う時までに色んな土産話ができるように、あたいも必死に生きていくからな!



 サキが見納めした夜の玉風の国で影からその様子を眺める者がいた。


「なるほど・・・勇者と繋がられたらこちらからの手出しは難しいですね。

 全く。四属性の時と言い、今回と言い、貴重なサンプルを

 二度も取り逃すなど・・・あの傭兵団は使い物になりませんね」


そう言い残し、その人物は陰に溶け込んで去っていった。




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※2023/6/19~ 上記曜日に変更してます。


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