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与えられた禁忌の魔術で復讐を ~凛として咲く仇花~  作者: 一ノ瀬 凪
第一章 異世界で芽を出すクロユリ
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12. マイとサキのデート

 鳥のさえずりが微かに聞こえる。


「・・んん」

 舞は目が覚め、身体を起こし腕を伸ばした。


 身体が痛い・・。


 硬い地面に簡易的に敷かれたこの布団ではあまり身体は休まらなかったようだ。


「おー!起きたか!」

 サキは既に起きており、準備運動のようなことをしていた。


「おはよう・・。朝から元気だね・・」

 目をこすりながらサキに挨拶をする。


二人は適当に外を出る準備をし、持ち物を手に取った。


「さて、どーすっか!」

 サキは元気にそう言った。


 舞は昨日話してわかった純粋な性格のサキに、目一杯の贅沢をさせたらどんな反応をしてくれるんだろうと考えていた。


「あたしにプランがあるから取り敢えずセントラルタウンまで案内してよ!」

 舞はそう言ってサキに案内を頼む。


「別にいいけど、あたいこんな格好だしなあ・・。

 舞はこんな姿のあたいとセントラルタウンで行動して大丈夫なのか・・?」


 サキは自分の身なりを気にして躊躇していた。


「サキはそんなの気にするタイプじゃないでしょ!

 いいからいいから!」


 舞は半ば強引にサキを連れ出そうとする。


「うわあちょっと!!!」

 サキは舞に腕を取られ、無理やり外に出された。


 こうして二人はしばらく貧民街の抜け道を通り、玉風の国で一番栄えている国の中心に位置するセントラルタウンへと足を運んだ。


 セントラルタウンは四大国を合わせて考えても随一のお洒落さを誇るショッピング街だ。

パステルカラーで彩られた建物たちは現実世界でいうヨーロッパのような雰囲気を感じさせる。


街を歩く人々も様々な服装でお洒落を纏っていた。



「さて、まずはあのお店から入ろっ!」


「うぇ!あんなお洒落な店入ったことねえよ・・」


 二人が入ろうとしているお店は洋服店だった。

庶民が着る衣服より一つグレードの高い、お洒落なブランドのお店でサキからしたら今まで縁のないお店だ。

 

 二人は緑と黄緑によってポップに塗装されたそのお店に入る。


「どれがいいかなー?」

 舞はテキパキとした手際でドレスをかき分け、選定を始める。


「すげえな・・。 並んでるの全部上物の服じゃねえか・・」

 サキは目の前に広がる景色に呆気にとられていた。


「これと、これがいいかな~」

 舞は目星を付けたようで、顔が見えなくなるほどのボリューミーなドレスを三着ほど抱えた。


「これ試着お願いします!」

 店員さんにドレスを渡し、舞はサキの方に顔を向ける。


「なにぼーっとしてるの?早く試着室に入って!」


「え!あたい!?」


「当たり前でしょ!ほら早く早く!」

 サキは舞に押され試着室に放り込まれる。


「・・・・どうかな」


 試着室のカーテンを恐る恐るあけたサキは、フリルが豪勢なバルーンスカートのドレスに身を包んでいた。

心なしか、キャンディーピンクのドレスと共にサキの頬も照れ臭そうにピンク色に染まってみえる。



「え!!可愛いー!!!めっちゃ似合うじゃん!」


「ちょ・・恥ずかしいからそんな大きな声だすなよ・・・」


「じゃあ次こっち着てみて!」


「まだあんのか・・!」


 この調子でサキは代わるがわるに色んな服を着せ替え人形のように着させられたのであった。



「ありがとうございましたー!」


 店員さんに見送られ二人は店を出る。

舞は観光資金を使い、サキにコーディネートした洋服を買い与えた。

結局ドレスは動きづらいからというサキの意見を汲み取り、青いデニムパンツに黒いタートルネックのセーター、そして首元に光る金のネックレスを購入してあげた。

そして髪型も服装に合うように、舞はサキの金髪を後ろで結びポニーテールにしてあげている。


「おいおいこんな高い服本当に良いのか!?」


「勿論!あたしは貴族の娘だからこれ位朝飯前」


「まじか・・!」


「しかし、馬子にも衣装だね~」


「アゴニモイショウ?なんだそれ?」


「似合ってるってこと!」


「おお!!まじでありがとな!!」


 サキは初めての綺麗な洋服に感激しているようだった。


 ふふっ。

可愛い姪っ子を見てるみたいな気分。

サキは本当に純粋。

反応がいちいち面白いなぁ。


「じゃあ次は、ランチにしよっ!」


「おお!飯か!腹減ったぜえ!」


 二人はテラスのあるお洒落な料理店に入り、少し遅めのランチタイムに入る。

そこは現実世界でいうイタリアン風のお店だった。


「・・おいこれ何が何だかわからんぞ・・」

 サキはメニュー表を凝視しするが、見たことのない名前ばかりで困惑している。


「お肉とかお魚とかジャンルは何がいい?」

 舞はサキからメニュー表を取り上げ質問する。


「肉が食いてえ!!」


「お肉ね!じゃあ代わりに頼んであげる」


 舞は自分の分の料理とサキの分の料理を代わりに頼んであげた。

舞が頼んだのは、牛ヒレ肉にグレイビーソースを添えた一品で値段も張る料理だ。

きっと食べた時もいい反応するんだろうなと想像し、舞はニヤニヤしながら料理が来るのを待った。


 待ちに待った料理が店員によって運ばれてくる。

サキの目線はその料理に釘付けになっていて、口は半開きで何とも間抜けな表情をしていた。

その料理が目の前に置かれた瞬間、サキはナイフなど見向きもせずにフォークだけを逆手に持ち、肉のど真ん中に突き刺す。

そしてお皿のもとへ顔を近づけて肉に被りついた瞬間、目をキラキラと輝かせた。


「うめえぇ!!」


 サキは天井を見上げて雄たけびを上げる。

舞はそのサキを見て満足気な顔をしながら自分も食べ進める。


「美味しいねー!」

 

「マジでうますぎだろ!ぶっ飛ばすぞ!」

 なぜかサキは皿の上の肉を睨みつけてそう言った。


「アハハ!誰に言ってるのそれ!」


 これだけ喜んでくれるなら色々してあげたくなっちゃうなあ。


 歓喜しているサキを見て、舞はどんどんと気分が良くなった。


 二人は料理を心ゆくまで味わい尽くす。

サキは皿についたソースすらも綺麗に舐めまわしていた。


「これだけの恩を貰っちまったらマイにも何か返さねえとな~。

 ・・・あ!そうだ!とっておきの景色が見れる場所があるんだ!

 まだ誰にも教えてねぇ秘密の場所だ!案内させてくれ!」


 サキは恩返しの提案で絶景スポットを案内してくれるという。


「へ~!気になる!案内してよ!!」

 舞も乗り気で返事をする。


 そして二人はお会計を済ませ、店を出た。

勿論、ここも舞の奢りだ。




 サキが案内してくれる場所は宮殿の裏にある丘のようだった。

宮殿の背中側は丘と密接しており、宮殿も相当な大きさだが丘はその宮殿を覆えるくらいの大きさで君臨している。


「ここらでいいかな~」

 サキは人影の無い丘のふもとで上を見上げながら呟く。


「え?こんな絶壁どう登るの?」

 どう考えても登れなそうな直角の丘を見上げて舞は驚く。


「まあ見てろって!マイこっちに寄れ!」

 サキは舞に手を差し伸べそう言った。

舞は怪訝そうな顔をしながらサキの手を取る。

その瞬間、ぐいっと引っ張られ、サキに抱きしめられるような形で舞は密着した。


「え?え?」

舞は急に抱きしめられたので動揺し、疑問の声を上げる。


「いくぞー!フロストタワー!」

 サキがそう叫ぶとサキと舞の足元から氷が隆起し、エレベーターのようにどんどん上へと伸びていく。


「きゃあああ!!!」

 舞は怖がり一瞬叫んだが、みるみる遠のいていく地面と共に段々と見えてくる玉風の国の景色に目を奪われ始める。


「・・・凄い。」

 舞は呆然として無意識にそう零した。


「すげえだろ!一番上はもっとやべえぞ!」

 サキは歯を見せながらニカッと笑い、そう言った。

段々と夕日に当てられて輝くサキの顔をとても綺麗だと思い、舞は変に心臓を打たれた。


 サキは女の子なのに何この鼓動・・!

 なんであたしドキドキしてるの・・!!


「よし!到着だー!」

 サキがそう言い、丘のてっぺんまで辿り着いた。


サキに腕を引っ張られるような形で舞とサキはベストポジションまで移動する。


「どうだ舞!」


「・・・綺麗!!凄く!!」


 そこから見る景色は舞が今まで見てきた景色の中で一番感銘を与える景色だった。

落ちかけの夕日と、それに照らされた玉風の国の全貌がそこから一望できる。


 最高の景色・・・。

 初めてこの世界もいいなと思えたかも。


 刻々と色を濃くしていく夕焼けに照らされるカラフルな街並みが、色紙細工のように豪奢で、一人帰る夕暮れの道のように深い憂愁を秘めた光となる。

舞はその景色に目を奪われると共に、心が今までの人生を振り返らそうとノスタルジックな気持ちにさせてくる。

 

 ふと横を見ると、サキも同じ気持ちになっているのがわかるような儚げな表情を浮かべていた。


「あたいはな、ここからの景色を見ていつも夢見るんだ。

 いつか貧民街からも、この国からも抜け出して、

 世界ってのを見て回りてえってな」


「・・素敵な夢だね。」


「貧民街出身ってだけで職にもありつけねえ今だと

 全然現実的じゃない話だけどな!」


 サキは渇いた笑いでそう言った。


「・・叶えられるよきっと!

 あたしもサキに出来る限り出来る事はしてみる!」


「してみるって言っても・・。多分厳しい。

 今までも何回か試してみたけど、煙たがられて終わりだった」


「あたしは貴族よ!騙されたと思って一度だけ付き合ってよ!」


「・・まあマイがそこまで言うなら・・頑張ってみるか!」


「まだサキと付き合ってから短い期間だけど、あたしはサキの事を尊敬してる。

 ・・・昨日ね、あたし凄く落ち込んで、悩んで、ぼーっとして歩いてたら

 貧民街に迷い込んでしまったの。本当にしょうもない悩みなんだけど、

 あたしと同じ貴族出身の四人でね、魔術の訓練を最近ずっとしてて、

 あたし以外はみんなすぐに魔術を扱えるようになったのに、

 あたしだけずっと魔術が扱えないの。そんなことで絶望してた」


 舞の本音に、サキは真剣な眼差しで頷いて聞いていた。


「でもね、サキと出会って、

 どんな困難な状況でも前を向いて生きているサキを見て、

 自分が情けないと思った。自分の悩みなんかちっぽけだなって感じたの。

 だからあたしも頑張らなきゃと思った!

 あたしもサキに助けられたから!恩返しがしたいの!」


「・・・マイ。ありがとな。

 そんなに感謝されたのなんか初めてだ・・。

 なんだかくすぐったい気持ちだな!!

 あたいもマイと出会えて嬉しいぜ・・」


 サキは涙腺に溜まった涙を流さないように堪えていた。


「今日は近くの宿泊施設に泊まろ!

 今日の夜、あたし1回掛け合ってみる!」


 舞はサキをどうにか救うことを心に決めて、意気込んだ。


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投稿する曜日〈 月、火、水、木 〉

※2023/6/19~ 上記曜日に変更してます。


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