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売り言葉の買い行動

作者: 埜桔

卒業パーティーには婚約破棄がつきもの。

もはや取り憑いてるのでは?という毎年の教師陣泣かせのイベントである…


さて、今年は何が起きるだろうか…?


『皆に聞いてもらいたい!クレア・ルメルディーク、私の愛しいサンドラに日々の嫌がらせ…亡き両親の願いだったとしても耐えられない!婚約破棄だ!』


と、王弟であるケンドールは卒業パーティーの初っ端から宣った。

これから保護者、王族が揃うというのに。

学園長、教師陣も鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をして少々血の気が引いている。




『ケンドール様、嫌がらせとは?』


クレアはキョトンとしている。


『お前の胸に手を当てて考えろ!』








ふに。


『大きい…です…かね?』



豊満なサイズである胸をふにふにと持ち上げていた。

両手で。




違う。そうではない。

と、近くにいた観衆は盛大なツッコミをしてるだろう。

確かにでかい。

男性陣は鼻の下を伸ばしていると思う。



『違う!貴様の胸のことではない!』



そらそうだ。観衆の意見は皆一致している。




『私には全く身に覚えがありません。そもそもなぜサンドラ様に嫌がらせをしなくてはいけないのです?そんなことが必要なら父がすでに手を回しております。』

ーーーーそもそも、婚約者がいる殿方に易々と声をかけるサンドラ様に問題もあるのでは?



ごもっともである。またしても観衆の意見は皆一致している。




『アレックス・シモン公爵令息様、ガイナス・ワグナール近衛騎士様、ギルドマスターのスニック様…かなりのお相手とお付き合いやお声掛けをしていらっしゃいますから、各々のお相手様も考えることがおありだと思います。』

ーーーーまずはそちらの方々にもお話ししてみてはいかがでしょう?







『『……は…?』』

2人の顔色が変わった。

ケンドールは、知らなかったと青い顔。

サンドラは、知られてはいないと思っていたことを知られ青い顔をしていた。




『父がケンドール様の素行調査をしておりましたの。

そうなれば必然とお相手の方も調査はするのは当たり前のことでございます。

また、私にも念のため()()()()()()()()()()()()調()()()()()()()()()()()()()()

なのでそちらの調査結果と共に私が嫌がらせをしたという事実がないことを証明できると思いますわ』



詰め寄った側にそれ以上の証拠がないのか、青い顔のまま黙ったままである。


いつのまにか卒業生の保護者が入場し、王様も入場することとなり、この騒ぎは収集のつかぬまま保護者や王様の目に止まることとなる。


やむなく全てを見ていた学園長はことの次第を王に報告。



『で、ケンドールは婚約破棄か。』


少々空気が凍りついている。


『はい…そうサンドラが言っていた…ので…』


『証拠もない。あるのは被害者の証言のみで。婚約破棄…』


流石の王様でも頭を抱えるしかないだろう。


『報告は届いている。お前の不貞と浮気相手の色々な話と共にな。

クレアの報告もきているが清廉潔白。何も瑕疵もなく。な。


このよき日につまらぬことで毎年問題を起こす者がいたが今年は愚弟とは…』


『…っ兄うえ…』


『お前が落ち着いたなら諦めて私も良き伴侶を娶るべきだと思っていたが…』


『…っ…』


『私は諦めるのをやめよう。

お前が婚約破棄をしなければこの想いも消し去るつもりだったが…諦められなかった想いを叶えよう。




…クレア。』


『『え?』』


ケンドールは驚いた顔をしている。

周囲も驚きを隠せないでいた。


等のクレアはもっと驚きを隠せないでいた。


『えええええ!わ!わたく…し…?』


『父君と一緒に王城にきたあの幼少時代からずっと、君だけを見ていたんだ。

あの愚弟がわがままを言わなければ僕の婚約者に。と望みたかった…。

でも愚弟が破棄してくれたからね…これからはちゃんと伝える。

お願いだ…クレア…私とこれからの一生を共にしてくれないか?』




王が直々に膝をついてクレアに手を差し伸べている。

真っ赤な顔をしたままのクレアは逡巡したのちそっ。と手を出して

とても小さな声で


『私には…とても大変な役目かと思います。』


『うん。愚弟のために色々勉強もしてたもんね。』


『少々、足りないことがあるかもしれません。』


『大丈夫、それを埋めるのは私の役目だよ。』


『…あき…らめて…ました…婚約者がケンドール様になって…。本当は…王様…カイル様のこと…』



手をぎゅ。と握り、目が合うと



『私で、よければ、貴方のそばで、一生を共にさせてください…』




どこからともなく拍手が鳴り、いつの間にか歓声と拍手が湧き上がっていた。



『皆、ありがとう。…さて、このめでたい日に無粋な奴はお引き取り願おう。』


近衛兵が2人を捕まえるとどこかへ連れて行ってしまった。



いつの間にか卒業パーティーは王様の公開プロポーズとなり、卒業生を祝うのか王様を祝うのか分からないまま大盛況のうちに終わりを告げた。











いつのころからか

『胸に手を当てて考えてみろ!』

という売り言葉に


『うるさい!こちとら貧乳じゃ!』

『少々自慢のサイズでして…』

という様々な買い言葉ができたという。



初投稿です。


読んでいただきありがとうございます。


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