焦燥
再び工事現場の看板の所まで来た。
懐中電灯を片手に、廃病院の周りを照らしながら足場を一歩ずつ確かめるようにゆっくりと歩きだした。すごく怖い・・・。帰りたい・・・。誰かに救いを求めるにも、不法侵入で警察にも電話出来ない。いっそ朝になるまで待ってから探した方がいいのかと思ったが、逃げ出したい気持ちを抑え、なぜか今行動にうつさなければいけない気がして、自分に気合をいれ、鋼鉄の立ち入り禁止の穴の中をくぐる。生暖かい風が出迎えるようにふきぬけた。中庭みたいな場所に出ると、また懐中電灯が点滅してきれた。懐中電灯の調子が悪いみたいだ。ポケットから携帯を取り出し携帯の写真を撮るモードにして光を照らした。携帯はちゃんと起動しているみたいなので少し安心した。懐中電灯が邪魔なのでポケットに入れる。そんなに大きい物ではないのでポケットにすっぽり入った。でもパンパンに膨らんだポケットなので足に懐中電灯が、ズボンの生地ごしにあたっている感触がある。使えないけど置いていくきがしなかったからだ。携帯のライトを片手で周囲を照らして友人がいるか確認するが、やっぱりいない・・・武史の携帯がなった所に向かうしかないか・・優喜は再度気合をいれて廃病院の正面入り口と思われる方に足をむけ恐る恐る歩き出す。L字形になった方である。重い足を一歩ずつ歩いていると、左右に建物が見える。左側が廃病院の入り口みたいだ。右側の建物は一階建ての廃病院に比べて小さな建物みたいだ。おそらく本館と別館であろうと思えた。本館と別館らしくある建物には、入り口にコンクリートで舗装された道が続いている。所々隆起しているみたいだ。本館らしい建物の入り口の前に立つと辺りを携帯のライトで照らし入り口辺りは、何か縄みたいな物でぐるぐると巻いてドアを塞いでいる用だった。シャッターみたいな防火壁の扉みたいだ。凄く頑丈そうな扉だった。こんな頑丈にしているのにどうやって友人達は中に入ったのだろうと思っていると、ふと物音が聞こえた。ギュィーーとした金属が擦れたような響く音だった。一瞬ドキッとして、唾を飲み込み、その方向にライトを照らして目を向ける。どうやら本館と思しき建物の奥にあるL字路の奥の方から聞こえたみたいだった。その音の方向に歩くと
鉄の扉がみえた。どうやら非常口のような扉だった。扉は所々錆び赤茶色に変色していた。扉の下には縄のような物が下に落ちていた。なんだこれは?さっきまでドアに巻き付かれていた縄みたいな布が千切れて落ちていた。その非常口のような入り口しか入れそうな所がないので、錆びたドアノブを回すと甲高い音が響きながら開いた。
そのとき、ドアの奥の通路から声が響いた。
「ぎぃゃぁーーーーーーーあ」
慌てて優は、友達だと思い咄嗟に駆け出した。
武史やみんなの事しか頭になかったから冷静な判断ができなかった。
病院の通路を、声をした方に向け真っすぐ走った。
その先の通路の奥の階段付近で、人影が見えたので近づくと、また声が上がる。「で・で・で・で出た~っーーー!」「ぎゃーーーあ」
優もビックリして腰が抜けた様に後ろに倒れこんだ。よく見ると武史達、男共ではなく女の子が二人抱き合っていたのだ・・。優はつかさず、「誰だお前らは」と叫ぶ。
そうするとその女の子の一人が、「ゆ・優君・・優君だよね・・?」「私・・ななだよ・」そうするともう一人も驚いたような声で叫び出す。「な・・何~ゆうだとー・・」奈々は、つかさず言う「間違いないよ~。私の優君だー」「お前の・・優君ではない!」って怒った声が響いた。
優は、驚いたが声を聴いて大学の奈々だと分かると人影に近づいて声をかけた。「奈々と、・・・えっと明美さん・・。」「な・・・なんで・・ここに・?」
そうすると奈々が泣きながら、優に抱き着いた。
「私の優君だ~」そういって明美さんが、「だれが、お前の優君じゃー!」「抱き着くなー優が汚れるから離れろっ」「早く離れろて言っているのが分からんのか。」二人が優と会えて落ち着いたのか、次々と喋り出す。「優くん。こんな所出て、早く帰ろう。」「優よ、昔にも言ったつもりだが、興味本位で肝試しなんぞするものではないって行った筈だ」
「それより、この雌犬は誰だ!」優は答える「大学の友人ですが、なぜここに奈々と明美さんがここに?」「それより一旦外に出てからだな」明美さんが早く外にと促す。
「優君、昔私たちが出会った時の事を、覚えているかい?」「小さい時ですよね・・あまり覚えてないです。」手をグーにして口に当てるそぶりで優は考えながら答えた。「そうか・・・君ならこういう所には、近づかないと思っていたよ。」「それにしてもこの雌豚は、なんなんだい?」「優に抱き着くじゃない!」「雌豚とは失礼ね。いきおくれのババアにいわれたくないわよ!」両手にしがみつくように片方ずつ優の腕をつかむ・・
「ちょっと、今そんなことしている場合じゃないよ。」今は・・