変な人は、惹かれあう
時間は少し遡り、今より前に戻る。丁度半年前のことだ。今日も優は、大学の講義を受け終わり、図書室に向かう。大学の講義では得られない情報や知識が書物にはあるからである。今日は、世界の宗教について書かれた本を手に取り、いつも座っている図書室の隅に座る。早速キリスト教、イスラム教ユダヤ教、カトリック教、ヒンズー教、儒教、仏教、神道など、多数ある宗教について興味があったからだ。宗教は新旧によっても教えが違うし、人類にとって宗教は、密接な関係であったからだ。歴史を知るうえでは、外せないものであるし、宗教の教えの違いで、戦争があったりするからだ。そして何より予言や神話など、心が引き付けるものがあるからだ。偉そうに思うが優は、実は、ただ純粋に本が好きである。この間読んでいた本は、宇宙の事に書かれた本で、ブラックホールは、恒星が燃え尽きた後に出来る事、地球が
9mm以下に圧縮すればブラックホールが出来るなど、とても面白くて興味が惹かれる内容がかかれているからである。平凡な学生生活では得られない事が書物には書かれているから好きなのである。そんな事に目を輝かして、書物を漁っている事ばかりしているから、学生のなかでは、変人扱いをされていた時々周りから、「またあの変人来ているよ。」「変な病気移るから、近くに来るなよ」とか「めっちゃっキモイ」、聞こえてきていた。全く気にもせず一人、隅の席で自分の世界に入っていた。周囲と違う事をすると、目立ち嫌われる。ある時他の生徒に目を付けられて執拗に嫌がらせされたこともあった。でも優が興味の一環として武道を習っていたことがあるのが分かると、誰も直接悪口を言われたこともなかったし、執拗で陰湿な嫌がらせをされた事もなくなった。たかが陰口言われるぐらいだ。優が本を読んでいると、向かいに立ち、席に座る人がいた。優は、誰も近くに来たがらないはずなのに、近くにきた人がいる事が不思議に思い向かいの席に目を向けた。それはマスクをした眼鏡をかけた女だった。その時マスク女と目が合った。気にせず読書をし始めた時にマスク女が話しかけてきた。「いつも、ここにいるのを見かけるけど・・・本当に本が好きなんだね・・」優は黙ったまま目を本に向けたまま無言で何事もなかったように本を読んでいる。そうしてまたマスク女が喋る。「・・私・・佐伯奈々。あなたは、斎藤優喜君だよね・・。」「いつも楽しそうに本読んでいるから話してみたかったんだ・・」「こんな・・私で良かったら・・色々・本について教えてくれないかな?」本を読んでいる手をとめて優は答える。「教える程偉くはないし、ただ気になった本を読んでいるだけだよ。」周囲がざわつきはじめた。こちらを見て所々に喋り始めたのだ。「類は友を呼ぶって言葉本当なんだー」「うける~変人には変人ってキモすぎるーw」「病気移るから、早く家に帰らないと、臭いし。w」優はマスクの女を見ると、マスクの女は瞳を下に目を向け悲しそうにうなだれていた。自分が何言われようがお構いなしだったが、目の前の女に言われている事には、耐え難い気持ちになり、優はマスク女に優しく声をかける。「気にしない。気にしない。」「言いたい奴は好きに言わせとけばいい。」「それより、ななさんだっけ?」「自分ならともかく、君が自分と同じ変人扱いされている理由は、良くわからないけど・・」「見た感じ可愛い感じだし不思議なんだけど・・」その言葉を受けてマスクの女、奈々は答えた。「私、臭いから・・・」今にも泣きそうな声で、小声で答えた。そうすると優は鼻で大きく深呼吸するようにして答えた。「俺・・こう見えて鼻は、イイ方だから分かるんだけど、臭いことないよ。」「むしろいいにおいだと思うよ。」優は少し考えた後やってしまったと後悔した。変態ぽい言い方してしまったと思い、恥ずかしく顔が少し赤くなった。奈々も恥ずかしそうに顔を赤らめて黙ってしまった。しばらく沈黙した後、奈々が再び喋り出した。「・・・私、小さい頃から、口が臭いって虐められたことがあって・・今でもそのことが忘れられなくてずっとマスクしているの・・。」優は、奈々の小さい時の事は分からないが、被害妄想でいつもマスクしているから、偏見で口が臭いって思われているのだと思った。優は、頭をポリポリと頭を掻きながら少し不機嫌に答えた。「くだらないな、人それぞれで感性が違うし、好みも違う。個性も違う。周りと同じじゃないといけない理由はないよ。」奈々はショックを受けた。今まで悩んでいたことをくだらないといわれたからだ。「匂いも生活習慣が違うのだから、人それぞれだから、他の人が臭い匂いだって思っても、自分にはいい匂いだったこと。ただそれだけだ。」イライラとしながら優は言った。「君は、ただ自信をもてばいい。」「ただのネガティブからくる被害妄想だ。」そう言って優は、ため息を吐き再び奈々に言い放った「そんなことより、俺は、見ての通り周囲から変人扱いされているけど君は、変人だからって、面白半分で、近づいて声をかけたのかい?」「違うだろう。本に興味があって図書室に来ていて、たまたま俺がここにいたから、声をかけただけだろう?」奈々はしずかに頷いた。そしてしばらく沈黙した後、奈々は急に笑顔になり笑い出した。「いい匂いってホント変態だね・・w」うふふと笑っている奈々。そして小さな声で優に聞こえない程度に呟くように「ありがとう・・」っていった。優は、先程の失言の、いい匂いだといってしまった事に、変態扱いされたことに、失敗したと思った。明日から周囲から、変人から変態って言われるのかと思っていた。何かマスク女が喋っていたが、多分変態って言っていた気がした。これは気まずいと思い、優は本を読む雰囲気ではなくなった為マスク眼鏡に向かって喋る。「そろそろ時間遅いし帰るわ・・・」その場を逃げるように帰っていった。奈々は考えこむように一人ポツンと図書室に取り残され何か考える様に壁を背にしていた。
佐伯奈々、年齢21歳、血液型B型。
今日も図書室で、噂で変人っていわれている斎藤優喜がいた。度々図書室の隅でよく本を読んでいる姿をみかけた。私も本が好きでいつも見かける男がなにをいつも楽しそうに読んでいるか気になったからだ。いつもの私なら、声をかけようと思ったりしないのに・・・その男の良いうわさを聞いたことがないし。周囲になにを言われようが全く気にしていないみたいなので、どうしてなのか気になっていてもたってもいられなくなった。少しでも話してみたいと思った。私は臭いから嫌われているけど・・その噂の変人なら、どんな反応するのだろう。他の人と同じように臭いから近づくなって言われるのかな?勇気を出して近くに行ってみる。目の前に行くとその変人は、こちらをチラッと見たが何事もなかったようにまた本を読んでいる。意を決し、変人の向かいの席に座る。