イケメン?
武史が雄たけびを上げながら本棟から出ていくのを見届け、さっき声をした方を視線を向けると、見知らぬ男性が歩いてこちらに向かってきた。そしてその男が言った。「声が聞こえて、ここに来たんやけど、間一髪のタイミングやったわ。」奈々は安堵してじーっとその人を見ていると「なんや。お前、オレに惚れたんか?」こんな状況で、何言っているのと思ったが、突然目の前に現れた男が声を出して助けてくれなければ、今頃どうなっていたか思うと恐ろしくてたまらなかった。「あ・・ありがとう。」か細い声で言った。「そんなことより、ここから、はよう離れなアカンわ。」「いくで」その男が言った。奈々は行きたくても足に力が入らないので起き上がれなかった。「そ、それが・・足が・・」奈々は腰を抜かしていて、力が入らなかった。
「なんや。ケガでもしてるんか?」「まあしゃーないな。おぶったるからしっかりつかまっておくんやで。エエな?」そういって男は腰を屈めた。奈々はその男の肩に手を回し力強く抱きついた。男は、言った「よっと、軽いなー。ちゃんとメシ食ってんのか。」「こっから離れるから、エエ隠れるトコ見つけたら言ってや」といい男は歩き出した。入り口から離れた所に向かっているみたいだ。「あの・・、あなたは?」奈々が沈黙と廃病院の暗さに耐えかけて言った。「オレか?ただのイケメンや。」