表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

甘さは控えめで

作者: 鬼桜天夜

バレンタイン。世の男女が浮き足立つ、特別な日。その日の為に抜かりなく準備する乙女心を、彼は理解してくれるだろうか。そう、私にも、渡したい特別な人がいる。


「はぁ〜、どうしよっかなぁ。マドレーヌ、カップケーキ、はたまたポップキャンディとか?」


「美香、独り言」


「はーいっ」

母の注意も上の空に聞き流し、美香は渡す相手の事を思い浮かべる。

学校一と名高いクールイケメン「待宮 司(まちみや つかさ)」君。高校二年生になって初めて同じクラスになったが、噂通りとても静かで私も滅多に話さなかった。

でもあの日、いつも話さない彼が、私のちょっとしたドジに反応して笑ったあの笑顔に、恥ずかしい話一目惚れしたのだ。最近は女子と話しているところをよく見かける。


「尚更、張り切らなきゃ・・・なんだけど」

彼が喜ぶ様なお菓子と言って、思いつくものが何も無い。思い切って聞いてみるのも考えてみたけど、やっぱり恥ずかしいし。

何より、彼はモテる。女子を敵に回すような行動はしたくなかったし、同じ様に考えてる子も居るはずだ。それで待宮君を辟易させたら、バレンタインどころではない。

どこかで買おうにも、どうしても手作りを渡したい気持ちがある。買った物の方が良いという男子も居るそうだけど、私の贈り物を棄てられてでも、手作りがいいという思いが捨てられない。

キッチンに寄りかかり、もう一度スマホのサイトをスクロールする。色とりどりのお菓子の説明や作り方がズラっと書かれている。目星は着いているが、最後の一歩が踏み出せない。

優柔不断な私自身の状況にため息が出ると、不意に手が揺れた。しかし手では無くて、手に持っていたスマホが揺れたのだ。画面には知らない番号が。警戒心を持ちつつも、私はコールに出る。


「もしもし、どちら様ですか?」


「待宮司です。立川美香さん、で合ってるよね」

私は目を丸くして、危うくスマホを落としかけた。考えていた本人が出るなんて。


「待宮君!?え、えっと、どうしたの?」


「そんな慌てなくても。ただ、言っておきたいことがあっただけ」

相手は冷静で、淡々と話を進めていた。頭の整理が追いつかないまま、彼は言葉を繋げていく。


「俺、甘い物嫌いじゃないんだけど、甘過ぎるのは嫌なんだよね」


「え?」


「丁度、蜂蜜ぐらいの甘さ、かな」


「それってどういう・・・それに何で私の連絡先」


「それじゃ、また学校で」

待って、という暇もなく電話は切れた。


「蜂蜜入りマカロン、作ろっかな」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 自分も学生なので、ウキウキしながら読めました [気になる点] なし!! [一言] 自分も貰えますように
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ