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プロローグ:人間13年、夢幻の如く

ルナーリリア・ラ・アルカイド


それは転生者として産まれた私の今世での名前。


アルカイド・ノイエ帝国第4皇女

『白銀の皇女殿下』


銀糸のように輝く美しい髪

白磁のように無垢で汚れを知らない肌


そして何より慈悲深き心


「ぷぷっ……自分で言ってて可笑しいわね」


自嘲するかのように私は笑う


「こんな時はそう……人間(じんかん)50年、下天のうちをくらぶれば……とでも言えば良いのかしら?」

前世の世界の有名な一句を思わず口ずさむ。


だって今私は炎の中に居る。


正確には炎上する離宮、

既に火は部屋全体に周りいつフラッシュオーバーが発生しても可笑しくはない。


「って!私まだ13歳の少女よ!!あと37年は生きるわ!」

いくら何でも13年は夢幻よ


茶番をそろそろ終えて次の行動へと移る。


「じゃじゃーん【転移札】ー」

私は懐から一枚の札を出す。


これは私の『魔法』を札に封じたモノ、便宜的に『即席魔法(インスタント)』と呼んでる。


これさえあれば、魔力跡や魔法跡を残さずに脱出できる。


「だって『本物の魔法』なんて存在しちゃいけないからね」

呟きと共に札は光の粒子となり、私を包んで消える。


そして彼女が消えた瞬間、部屋は炎の奔流で満たされたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆


アルカイド・ノイエ帝国は古来よりローレシア大陸中心国家であった。


これはアルカイド・ノイエ帝国の前身、古アルカイド帝国時代から変わらず、文化・軍事における大陸の頂点。


そして代々続くアルカイド王族には特別な力を持つものが多かった。


神に愛された血族(アマデウス)』とも称される血族からは多くの優れた『魔法使い』が産まれた。


それまで大陸に歴史時代が訪れてから人類は『魔法』を失いつつあった。


かつて先史時代は大魔法使いや賢者と呼ばれた魔法の使い手は消え、今では水を少し出す程度の魔法でも貴重とされる。


そしてついには魔法の力は完全に人類から失われると言われていた。


しかし、1000年前に英雄王ジャラルディン・ルナ・アルカイドが古アルカイド帝国を興して以降、その血族には失われた『本物の魔法』が使える人間が多数現れた。


魔法の力によってアルカイド家は神秘性を獲得し、永きに渡って帝国を支配し続けられた。


しかし、代を重ねる毎に初代ジャラルディンの血は薄まり、アルカイド家から魔法の使い手は減り、その力は弱まっていった。



その結果、禁忌である近親同士の交配が行われた。


勿論、王族以外知り得る事ではない上に外からの妃を迎える事も怠らず、誰が誰の子供を出産しても問題無い状況で行われた。


母が子の子を産み、娘が父や祖父の子を産む。

産まれた子はそれぞれの婚約者の子として育てる。


地獄のような近親交配の永久機関状態が少なくとも200年続いた。


そんな王家に産まれた私もそろそろ永久機関に組み込まれそうになっていたが………


そんな私を結果的に救ったのが祖父、ルナスター・ジャラルディン・アルカイドであった。


まだ転生直後で王家の闇も知らない私は、たまたま祖父の前で魔法を使ってしまったのだ。


その瞬間、いつも厳格な祖父の顔が七変化したのを私は一生忘れないだろう。


その日から『夜伽』名目で私が祖父の私室に呼ばれるようになった辺りから私は察した。


そして覚悟を決めて、最悪祖父の菊一文字には私の天翔龍閃(せっとく)でボキリと折れてもらおうと決心して部屋に向かった私に祖父はこう言ったのだ。


「リア、その力は隠して鍛えよ。さすればお主の翼となる、

。」


ん?


どうやらこの祖父、王家の在り方に疑問を抱いていたらしい。

そしてようやく見つけた希望が私だったみたいだ。


最初は私を王座に付けて国自体の変革を考えていたらしい、

その過程も相まって『白銀の皇女殿下』というとても痛い痛い渾名が付いたりしたが……


やはりあの祖父一度ボコッておいた方が良かったかも知れない……


閑話休題(それはさておき)アルカイド家の歪みは200年で取り返しのつかないほど大きくなり、祖父と私程度では修正のしようがなくなっていた。


その辺りで祖父は諦めたらしい、だから血族として私に生きて自由になって欲しいと


そして私が13歳の誕生日を迎えたつい先日、前皇帝ルナスター・ジャラルディン・アルカイドは永眠した。


祖父は最期に「私の死を利用せよ」と言った。


つまり祖父の死による混乱に乗じて死んだふりをしろという事だ。


案の定、皇太子ベルトラン・ジャラルディン・アルカイドもしくは第3皇子アギルギア・ルナ・アルカイドの手と思われる者によって私の離宮は放火された。


第2皇子のアラウディン・ルナ・アルカイドは何故か私を密かに救出するための者を寄越したが……


まあどうせ臣民に人気がある上に『祖父の御手付き』から離れた私を自分が皇太子にのしあがる為に有効活用しようと考えただけかも知れないが……


ノーブレスオブリージュの意味は理解するが、あまりにもあんまりな状況だったので逃げた私を前世の両親は許してくれるだろう。


ちなみに今世の両親は健在だが、二人のことを考えただけでもうお腹いっぱい胸糞なのでここでは割愛したい。


そんなこったで晴れて自由の身となった私だが、一つ問題がある。


明日から何をしよう………


ま、いっか。


とりあえずスローライフ!!異世界来たら王道!!

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