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その2「いじめとデート1」

 地味静香じみしずか、進級初日。


 僕はもの凄くおっぱいの大きな可愛い可愛い女の子に恋をしたのだが、どうやらクラスでは孤立し、陰口を言われ、友達のいない不人気な地味子だったのだ。


 だからこそ、僕は————彼女に‼‼



――――――――――――――――――――――――――――――――





 今朝、そんな可愛い可愛い地味子と帰る約束をしたはずなのだが——


『急用ができたので先に帰ってください』


 放課後、掃除を終え、適当な理由を付けて楓と出流いずるをあしらって廊下に出ると待ってると言っていた地味はいなかった。


 そして、その代わりに入っていた一通のライン。


「なんだ、急に……用事?」


 あの地味が急に用事とは……少し不思議だ。

 一体、何があったのか。


 彼氏にさせてもらった僕が言うのはなんだが地味にはあまり友達がいない。いや、あまりいないではない……ほぼ確実にいない。僕がすでに彼氏になったことを考えれば、友達は0である可能性が高いくらいにはボッチである。


 まあ、僕はそんなところも凛々しくて好きなのだが—―この話は今はやめておくとしよう。


 何か、心に思い当たる節はないか?


 自らにそう問いただし、廊下の窓にもたれ掛かって考えていると——ふと思い浮かぶことがある。


『地味、これやっといて』

『えっ……ぅ……』

『早く、ほら、やって』

『……ぁ、ぃ』


 こんな会話があった気がする。

 僕がその日に出た宿題を大急ぎでやっている最中、隣でそんな会話が行われていた気がする。


 記憶としてはあまり定かではないが、もしそれが本当ならそっち絡みで何かあるのかもしれない。


 一人ぼっちの奴は等しく学校ではいじめられやすい。

 特に、うちの高校の様な私立で偏差値の高い人間も低い人間の両方がいる学校の生徒なら尚更あり得る話。


 それに、地味は気が弱い。


 本当に僕の事が好きなのかも分からない間に返事しちゃってたし——いや、まあそこは僕が楽しませて、優しくさせて、可愛い女の子にしてあげて時間をかけて好きになってもらえばいいだけだ。


 しかし、それ以外の面でもその押しの弱さが裏目に出ることだってある。


 駄目だ。考えれば考えるほど、不安になってくる。

 ここはもう、こっちの方から探しに行くしかないな。


 そう思い、僕は自らのリュックを廊下に置いたまま走り出した。






「——っあ、ぁの……ご、ごめ……わ、私、べ……つ、に……」


「ねぇ、地味さん……って鈴木君と付き合ってるんだよね?」


「……っぅ、ぅん……」


「へぇ、そう……そうらしいわよ? 千夏?」


 体育館裏の自転車置き場にて、地味は隣のクラスと思われる女子三人に囲まれていた。


 そして、今。

 一人に呼び出され、後ろから出てきた女子。


「ふぅん……そ、あなたが翔君の……」


 ドキリ。

 まさかの名前呼び!?

 少し低めで色っぽい声が無人のその場に響き渡る。思わず、肩がびくりと跳ねてしまったがそんなことをしている場合ではない。


「——ゃ、ぁ、ぁの……」


「何、私に嫌がらせかしら? 涙目になっちゃって、ほんとっ……まじでウザいんだけど?」


「っ⁉」


 彼女の眼力で怯んだ地味は腰を抜かしたように地面に倒れ込む。


「——!」


 すこし遠くから覗いた僕も思わず、声が出そうになったが今出ていくわけにはいかない。この時点でかなり危ういが彼女に手を出そうとしているのならしっかりと証拠をつかむ必要もある。


 下唇を噛んで、なんとか抑え込んでいると——その女子が一歩前に出る。


「ねぇ、私……私の方が泣きたいんだけどっ——」


「ぅっ——!」


 悲壮感。

 一歩前に出た女子の顔にはそんなものが浮かんでいた。


「なんで……私、ずっと好きだったのに……なんで、なんでお前なんかが‼‼」


 バシンッ‼‼

 彼女はその足を地面に何度も踏みつけて、暴言を吐き散らしていたが——そんな姿に少し、思い当たる節があった。


「……あいつ」


 そう、去年。

 一年生の時のクラスメイト、滝川千夏。

 若干茶色に染めている少し我の強い女子だ。


「私の方が先に——‼‼」


「‼‼」


 そんな今にも暴れそうな滝川さんの足元でビクビクと身を丸めている地味。

 

 そして、次の瞬間。

 滝川さんの手が空に向かって顔を向ける。


「——ぁ‼」


 気づけば僕はその場を走り出していて、一気に下がった彼女の手をぐっと力を入れて掴んでいた。


 あまりにも急な出来事に驚いて固まる滝川千夏。

 僕の背なかには頬に涙が垂れ、怯えている地味がいた。


「な……ぇ、か、かける……くん」


「なぁ、何やってんだよ……地味に」


「ぇ、いや……それは——」


「それはなんだよっ? 僕は見てたぞ、後ろから……お前ら、地味をいじめてるのか?」


「そ――そういうわk……けじゃ、な、ないし……」


「じゃあ、なんで後ろで地味が泣いてるんだよ?」


「だって、だって——あいつが‼‼」


「——地味が、僕と付き合ってるから、か?」


「っ——! そ、そうよ……あいつなんかが翔君と付き合えるわけっ‼‼」


 しかし、その言葉で僕の堪忍袋はぷちんと切れる。

 冷静に、冷酷に、僕は淡々と口を開いた。


「……告白したのは僕だ、それに君がそういうことをする子だとも思ってなかった。そういうことをするやつとは天変地異が起こっても付き合いたくはない。本当に帰ってくれ」


「——!?」

「あ、あんた――千夏を‼‼」

「ちょっと‼‼」


 僕も対抗してギロッと睨み返すと————怯えたのか三人はそれ以上は何も言わず、小走りで帰って行った。




「だ、大丈夫か?」


 びくびくしながら涙を流す地味。

 その背中をゆっくりと擦りながら僕は頭を下げる。


「ほんと、ごめん……遅れた」


「い、いや……わ、私が悪い……の」


「いや、僕だよ。怖い思いさせて悪かった」


「ぅ……ん」


 そう呟くと僕の制服をぎゅっと掴み、彼女は小さな声で泣きだした。




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