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北の国へ、1
目を閉じてハルムさんが呟くとまたあの黒いドラゴンが現れた。
ハルムさんの顔に自分の顔を擦り寄せて…かなり仲が良さそうだ。
「タイガ!来てくれ!」
ドラゴンに乗っていくガイたちを見て俺はタイガに手を伸ばす。
タイガはアリアさんを見て…アリアさんに背中を押されて俺の前に来た。
「僕、勉強しか取り柄のない普通の高校生ですよ」
メガネを上げてじっとこっちを見てくる。
「俺なんて何の取り柄もない…高校生としてもかなりモブだよ。マントと剣はあるけど俺だって制服にスニーカーだぞ?」
深緑のブレザーを摘んで言うとタイガは笑った。
「赤茶のマントにその茶色のズボンが合ってて後ろ姿はちゃんと勇者に見えますよ」
俺の手を握ってくれて、俺たちは一緒にドラゴンに乗り込む。
てか、後ろ姿はって言ったな!!
「ユースケ!あなたの力を信じてる!必ず魔王を倒して来てね!」
アリアさんが両手を口に添えて叫ぶ。
いや、それは自信ない。
でも、俺には心強いみんなが居るから…
「いってきます!」
笑って手を振った。