【8】
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「「あれ?」」
金曜日の夜、仕事帰りに喫茶店に行くと玲も居た。
ドアを開けた瞬間に玲と目があう。喫茶店の中に入ると、通常の閉店まであと1時間あるが、今回はその前に閉店にしていると言っていたので、他にお客さんは居ない。エプロン持参のため、エプロンをつけている学生みたいな女性が一人居るが、その人は参加者のようだ。
「どうして、ココに?」
「春の知り合いに教えてもらおうと・・・」
「私は、この人に教えてもらおうと・・・」
眼鏡の執事を2人で見ながら、そう答える。春の知り合いで、この人の眼鏡の執事はふと笑みを浮かべている。
「世の中狭いって本当だね。もう、この場で早めに渡してもいいんじゃない?」
「「・・・そうですね」」
玲は残念そうな口調で言い、私はため息混じりに言った。
「全員そろったところ申し訳ないけど、もう少し準備に時間がかかるので待っていてください」
「材料費は先に集めますので、準備できた方からこちらに来てください」
レジの近くに喫茶店のスタッフが立っていて、手に手書きの領収書とペンを持っている。
「丁度で、お願いします」
もう一人の参加者はバックの中から、さりげなくレザーの小銭入れを取り出す。市販品にしては、色付けと刻印のバランスが手作り感が溢れている。丁度の金額を取り出すと、スタッフに手渡した。
「では、こちらが領収書になります」
「はい」
受け取った領収書をバックの中にしまっている。
「あの人、作るのが好きそう」
玲の目には好奇心が溢れてきている。
「そうだね」
私達が参加費を支払い終わる頃には、準備も終わっていたようだ。黒いエプロンをつけた眼鏡の執事は、キッチンに案内してくれた。貴重品は持参で移動をすると、材料を出していきながら、説明をはじめる。
「全員、成人しているので、お酒使います」
「「・・・え?」」
玲と私は成人しているという部分で、もう一人の参加者に視線を向ける。
「一応、成人してギャラリーのオーナーをしています」
その人は、苦笑を浮かべてそう答えた。玲は、ギャラリーのオーナーの部分で反応して、質問をしている。
「・・・もしかして、華さんですか?」
「はい」
「春から、話をよく聞いています」
「春の知り合い?」
「はい、玲です」
「玲の同居人です」
「えーと、自己紹介が終わったところで、次の説明を続けます」
淡々とマイペースに眼鏡の執事は、説明を続けた。