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partner  作者: 皐月 悠
5/12

【5】


【5】


 休日。

 玲は、大手のショッピングモールの中の本屋で、普段は行かないコーナーで足をとめ、本のタイトルを見ていた。

 調理が初心者で、お菓子作りが初心者でも、溶かして固めるぐらいはできるはず。

 『簡単だよ♪』という雰囲気の本を引き抜き、ページをめくって見ては本棚に戻す作業を数回は繰り返している。

 「はぁ」

 ため息を吐き出す。

 もう少しどうしたいのかを決めてから、本を買おう。

 そのまま玲は、別のコーナーに足を向けた。

 ウィスキーボンボンのように、外が固くて中身がとろりとしている。そんな感じで作りたいと思いながらも、本を見ていくうちにチョコレートを使っていれば、ケーキやクッキーも良いかもしれない。そうなると、もう一度何を作りたいのかを考え直そう。

 他のコーナーに移動して、気になっていた本を手にとる。パラパラと目次を読みながら、気になっている部分に視線を走らせた。

 知っているのは、基本知識のみだ。

 カカオから作るのは、方法を検索してみたけれど、私には無理だと悟った。まろやかにするためには牛乳と砂糖を追加する。カカオ成分が多いと、大人の味になる。焼き菓子でチョコレート味にするのには、ココアパウダーを使用する。冷やして固めるのにはゼラチンを使用する。

 家にオーブンがないので、物理的にクッキーとケーキは候補から消えた。加熱するのはフライパンと電子レンジ。冷やすには冷蔵庫がある。となると、調理器具を考えると混ぜて、『冷やして固めて作るチョコ味の何か』が現実的だ。

 「はぁ」

 「どうしたの? ため息ついて」

 視線を向けると、春が立っていた。

 20代の頃からの付き合いで、最近はメールでのやり取りだけになっている。今はギャラリーでバイトをしていて、あの頃に比べて表情が穏やかになっていた。

 真面目な性格で、どちらと言えば美人になるから、声をかけにくいと周囲に思われる事が多かった気がする。その頃から優しさを感じる事があった。

 「チョコが」

 「チョコ?」

 「どうして、チョコなのか。渡すイベントだから、チョコにしなくてもいいのに」

 「何だったら良かったの?」

 「いっそ、ホットケーキ」

 「キットを使用すると、簡単に作れるのを思い浮かべている?」

 「はい」

 中身に生クリームとか入ってなければ、常温で平気そうだし。たぶん、失敗もそこまで心配しなくてもいいと思う。

 「でも、チョコか。今年、どうしよう・・・頼もうかな」

 「誰に?」

 「作るのが好きそうな友達が居て、その人に」

 「その人、紹介して」

 「そうだね・・・連絡は、とってみる」

 「うん」

 考えても答えが出ない事は、他人に聞いてみる事にしてみた。


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