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partner  作者: 皐月 悠
4/12

【4】


【4】


 玲は、よく猫のようだと言われる。

 気まぐれで、自分の気持ちに素直に行動していて、そして、どちらかと言えば悩み事の少ないように見られるし、自分でも、自分が精神年齢が幼い事を自覚はしている。

 たとえば、こんな時だ。


 「今日は、機嫌がいいね。玲、何か良いことあった?」

 休憩時間、事務職のバイト先の先輩にそう声をかけられた。

 「あった」

 前回の休日に頼りにされた後、背中からでも音符が飛んでいるように見えたらしい。数日は経過している今日も、それは変わらないらしい。

 「ふーん、何を読んでいるの?」

 「手帳」

 「ん?」

 「だから、手帳。この手帳、読み物の部分がついていて、使いやすいの」

 そう言いながら、今読んでいたところを広げて見せた。

 単行本サイズくらいの分量の手帳は、予定を1日単位で書き込めるようになっている。友人にこの手帳をすすめてもらう前には、もっと薄く、ほぼカレンダーかと思えるデザインを使用していた。それこそ、スマートフォンのカレンダー機能でも十分で、1日の主な予定さえ分かればいいと思っていた。

 実際に書き出してみると、自分の努力では縮める事のできない時間帯、たとえば、バイト、家事、睡眠がどのくらい占めているのかが目で分かる。

 私の場合、バイトの日の自由時間は、約2時間。作品作りでの2時間は、一区切りつくかどうかで仕上げるところまでは難しい。

 休日で家に居る日は、日光を効率的に使いたいとなると、洗濯、布団干しなど、他の家事についてもする事のできる時間帯が限られている。その結果、作品作りに当てられる時間は、約4時間。昼の十一時~十五時頃。洗濯物を畳み、炊事をして片付けて一息をつくと、1日よく動いたと自分で自分を誉めたくなってしまうので、必要最低限の筋肉を、効率的につける方法はないものかと考えてしまう。

 「はぁ」

 浅くため息を吐き出す。

 もう、心で把握できるようになれてきているといいな。

 「それで、優しい」

 「そう、なんだ」

 手帳に優しいって何だ?と納得しきっていない口調で、先輩はそう言いながらもざっと目を通す。

 昔使っていた手帳に比べて読み物の部分が多い。時間管理を上手くする方法についてのコラムが書かれている文章は、確かに、優しい印象だ。

 「誰に教えてもらったの?」

 「・・・・・・友人」

 少し間をあけてそう答えた。

 過去、片想いをしてしまった相手だから、答えるまでに少し時間がかかってしまった。当時は20代で、30代になってしまった今となっては、あの頃は若かったと思わず遠い目をしてしまう。

「ざっくりいえば、趣味が共通で、性格で似ている部分もあって、それで、仲良くしてもらっていた」

思えば当時からすでに、華は、時間管理とか物事の進め方とか、現在のギャラリーを開くための勉強を少しずつ始めていた。階段を一段ずつ踏みしめてあがってきているから、今も軌道が上手くのっているのだろうなと思う。

 「そうなんだね。・・・・・・作るの?」

 「何を?」

 そう言いながら、今、自分がめくっていた月を確認する。開いていたページは2月で、そして、中身をどうしようかというメモを余白に書き付けていたところだったのを思い出す。

 「あ、いや、まだ、分からないけど。少し調べてみただけで」

 「そういう事にしておきましょう」

 「そういう事にしておいてください」

 アハハと乾いた笑みを浮かべた。


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