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partner  作者: 皐月 悠
2/12

【2】


【2】


 即決すぎて本人にとめられかけ、普段の自分からは想像できない事だと冷静になる。

他人からは、「大人だね」と言われる事の方が多い。この状況がもし、友人の身に起こった事だとしたら、玲のようにとめるだろう。疑うつもりはないが、もう少し慎重になった方がいいのではないかと説得しにかかるのが、容易に想像できる。

 即決した理由をあげるなら、玲と同じだ。

 この人ならば信頼できると、本能が告げたからだ。

 「理佳も他人の事、言えないね」

 嬉しそうに言う玲の頭を撫でたい衝動にかられ、思いとどまり残りの紅茶をすべて飲み干した。

 「そうだね」

 「そういう部分は、結局、本能なんだよ。頭でどんな理由をつけようと」

 何か思いついたのか、さっと立ち上がり、玲はいつもの定位置のソファーに横になった。ズボンのポケットからスマートフォンを取り出して、操作している。両足を左右にパタパタ動かしている様子は、猫が尻尾を左右に動かしている様子に似ていた。

 何か思いついた時は、決まってスマートフォンのメモ画面に入力している。必要だと直感がささやいた時に入力されている単語は、すべてが作品になるわけではない。必要がなくて、そのまま消してしまう事もあるけれど、メモをする癖はぬけないのだという。

 私はコップを洗って片づけると、雑誌を片手にソファーの背もたれに背をあずけて座った。大きなクリスマスというイベントが過ぎても、冷たい冬の空気にはイルミネーションがはえるものらしい。特集ページを開くと、チョコレートが登場する時期になっていた。視線に気づいて顔を向けると、無言のまま玲が特集ページを見ている。

 「気になる?」

 「ううん」

 歯切れ悪くそう答えると、何か思考をめぐらせているみたいだった。

 これは、何か期待してもいいのかな? とは思わなかった。こういう時は決まって、作品のネタをどう使った方がいいのかを考えていると、今までの同居生活の中で学習している。そもそも、私が玲にとっての恋愛対象外だと確認は、それとなく遠回りに探りはいれてみた事があるからだ。

 玲はそのまま、そのまま何かの調べ物をしているらしい。

 私は雑誌を読み始めた。


 スマートフォンで作り方の調べ物をしていた玲は、寝息が聞こえ始めたので理佳に視線を向けた。船をこぎ始めているのを見て、手を伸ばしてベッドから薄手の毛布をたぐりよせて理佳の肩にそっとかけた。

食後の電気ストーブの近くは、どうしても眠たくなる。

 もう一枚毛布をたぐりよせると、今度は自分にかけた。肌触りのいい毛布に頬をすりよせると幸福な気持ちになる。スマートフォンでサイトを開いていたタブを閉じると、目を閉じた。

 寝付きはいつも悪く、横になっていても1時間は眠れない。そんな時は考え事をしている事が多い。

 いつものお礼に買おうかと雑誌の特集を見たものの、お財布の余裕はない事を思い出し、ならば、手頃な市販をどうにかできないかと検索してみたが、手を加えるにしても溶かした後に、『液体』を入れる事ぐらいしか変化させようがない。失敗は、したくはない。かといって、市販品をそのままというのも嫌だ。

 目を開けて、理佳の寝顔を見つめる。

 あの時、同居の話をしたのは、断られてもかまわないけれど、自分の中の本心を外に出して誰かに聞いてほしかったからだ。

 考えが甘い、もっと働かないといけない、自分の中の本心を言えば、大人ではないと嫌われる事も理解はしていた。だから、そう思われそうな事については、外に吐き出すのも次第にしなくなっていったから。

 まさか、OKをもらえるとは思わなかったから、慌ててあの用紙を作成して渡した。

 それでもOKが出るはずないと思っていたからだ。

 だから、感謝の気持ちをこめて、今度のその日までに、チョコレートの中に入れる中身を決めて一度作っておこう。

 そこまで、思考をめぐらせたところで、玲は、眠りに落ちてしまった。


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