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partner  作者: 皐月 悠
11/12

【11】


【11】


珈琲を飲み終わった後、玲はチョコの材料を食卓にひろげながら今日の事を思い出していた。

久しぶりに会った華は、綺麗になっていた。

当時からどこか可愛い雰囲気だったが、ますます美人になっていたので、気づくのが遅れてしまった。

当時から接点は少なく、話した回数もそこまで多くもなく、告白することもなかった。直接の知り合いというより、共通の友人を交えて時々は世間話をするような学生時代だった。ギャラリーを経営しているという事も、その頃の友人と春から話を聞いて知ったくらいで、まさか、今日会うとは思っていない。

 チョコを作っていく作業をしながら、そういえば、溶かして冷やして固めるだけで作れるとはいえ、講習を除外して、人生の中で友チョコも全部含めての2回目だ。

 「・・・・・・言わないでおこう、うん、そうしよう」

 自分の年齢でそれはないだろうと、つっこまれそうだし。もらってほしいし。

 溶かしたビターチョコとホワイトチョコレートに蜂蜜を入れ、まざりきったところに、苺をざっくり切ったものを入れ透明な容器の中に流しいれた。

 アレンジしたくなるのは、いつもの私の癖だ。上手くいく事もあるが、失敗する事の方が多い。けれど、考えている間はいつも楽しい。

 今回の場合、数冊本を読んだ結果、粉等の固形物と、液体の基本割合は忠実に守る必要がある。一つをぬいて、一つをいれるのなら、同じ分量にすれば上手くいく可能性があがるのかもしれないなと感じた。実験をするのに似ていて結果が出るまでの間がわくわくする。失敗しても、全部食べてしまえばいい。

 冷蔵庫にしまって、後かたづけを終わらせると、今日はそのまま寝る事にした。


 翌日。

 目が覚めると、いつもよりも陽が高く明るくなっていた。

 「おはよう」

 理佳よりも早く起きる予定だったのに。

 「おはよう」

 起きあがると、お湯をコップにいれて飲む。

 冷蔵庫の中を見てみると、固まっているのが見えて一個を食べてみた。

 「うん、美味しい」

 「食べてみていい?」

 「どうぞ」

 食べてみてから、理佳は柔らかい笑みを浮かべていた。それを見て、私はニヤリと笑みを浮かべ、ドヤ顔をした。

 「昨日の話だけど」

 「うん」

 「看板の文章、書いてみる」

 「うん」

 「それで、それを読んでみてから決めて」

 「・・・分かった」

 同居する事になったのだから、理佳のプラスになれているのなら嬉しいと思う。

 最初の一歩を踏み出す時は、不安になり怖く感じる。だけど、上手くいかない事を必要以上に怖がっても、時間は待ってはくれない。それなら、これから掴めていけると思う。掴もうと意識しているのだから、何も意識していないよりも、一歩をすでに踏み出している。

 「紅茶、飲む?」

 「ありがとう」

 紅茶をコップにいれると、理佳に渡した。

 二歩を踏み出すのも時間の問題だ。それは、自分のやりたい事を探す事だけではない。

 「理佳ってさ、喫茶店の人が気になっているよね」

 「な、気になってないよ」

 分かりやすい動揺では、否定にはならないよ。

 「好みなの?」

 「・・・・・・」

 言えなくなっている様子を見て、これも肯定かと思い意地の悪い笑みを浮かべる。

 「なるほど」

 最初の頃に探りをいれられた時、当時は恋愛対象じゃないというのは本当だ。だけど、今は違ってきている事を自覚している。自覚しているからこそ、二歩を踏み出すのに時間がかかっている。今はまだ距離をつめる事が大事だと感じている。


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