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partner  作者: 皐月 悠
10/12

【10】


 【10】


 「寒さってさ、気温の寒さと心の感覚の寒さがあるよね」

 冷えた指先を温めようと指を動かしていると、玲にそう言われた。

 「そうなの?」

 「私の中では、そう」

 言われてみれば、登場人物の悲しい心境を表現するために、雨を降らせたり晴れたりする事があった気がする。天気に気持ちがひっぱられる経験があるから、そういう表現があるのかもしれない。

 「はい」

 「ん?」

 片手の手首を掴まれて、玲のポケットの中に入れられた。温かいなと思いつつ、マンガのシーンを連想してしまい、慌ててポケットから手を出す。

 その様子を華さんは何も言わずに、微笑ましく見守っている。

 「そこまで慌てなくていいのに。今度、華さんのところに遊びに行ってもいいですか?」

 「いつでも、どうぞ」

 「休みの日に行きます」

 「場所は?」

 「大丈夫です」

 「では、お待ちしています。・・・じゃ、私は寄り道して帰宅するので、このへんで」

 そう言って、華さんは道を横にまがって行った。


 帰宅してから、玲はチョコを冷蔵庫の中にしまう。

 「展示、考えてみようかと」

 「そうなんだ」

 「直接の反応が見たくて。サイトの画面越しじゃない反応が見てみたいな、と。それでゆくゆくは、上手くいくなら売りたい」

 「いいね」

 「ありがとう」

 挑戦していく姿がまぶしく感じた。玲の場合は、材料費を稼げるくらいの作品での収入がある。全く認められていないわけではないから、可能性がゼロなわけでもない。それに、自分の支払い分はすべて家に入れてくれている。

 「それでさ」

 「うん」

 「理佳に文章書いてみてほしい。前に見せてもらった事があるけど、作品の感想とか宣伝文みたいなのを書いてほしい」

 「・・・書けるかな」

 「私は、理佳に書いてほしい。それで、展示の看板デザインに掲載する」

 「とりあえず、書いてはみるね」

 「楽しみにしている」

 今まで書いてきたものは、すべて趣味で書き続けてきた。

 見たい、読みたいと思わせる事を意識して書いた事がない。書くのが上手くなりたくて、書籍を数冊読んだ事もあったが、我流の勉強だ。  

 「飲み物、何を淹れる?」

 お湯を沸かしながら玲に視線を向けると、スマートフォンを操作しながら何か考え事をしていた。

 「んー・・・今日は、この後少しやりたい事があるから、珈琲」

 「分かった。私は、早めに寝るね」

 「うん」

 「・・・はい」

 自分にはカモミールをいれてから、珈琲の入ったコップを玲に渡した。

 「ありがとう」 

 テレビを見ながら飲み終わったコップを片付けてからベッドに横になると、まだ早い時間だというのに1週間分の疲れですぐに熟睡してしまった。


 翌日。

 目を覚まし、枕元に置いているスマートフォンで時間を確認すると、まだ夜も明けきらない夜中だった。そーっと冷蔵庫のある方に移動すると、食器籠にボールとゴムベラが入っていた。ポットの白湯をコップにいれて飲みながら、昨日、玲が少しやりたい事があると言っていた内容に大体の心当たりがついて、冷蔵庫を開けてみる。

 そこには、100円均一で売っていそうな四角い透明なプラスチックの容器が数個入っていた。二段に分かれていて、下段は赤茶色、上段はホワイトチョコレート色をしていた。アレンジをしてみたらしい。

 ふっと笑みを浮かべると、そのまま冷蔵庫を閉めてから飲み終わったコップを片付けた。

 疲れて寝てしまっている玲の寝顔を見て、楽しみにしていようと思った。

 ベッドに横になってから、私は文章関連の記事を読みながら勉強する事にした。


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