遭遇
続いていきます
森で暮らし初めて何日かたった。呪文を組み立てることも慣れてきた。すこし魔力も増えたらしい。
メイヤードからもらった食料はもうなかったが自分で野菜を出せるので何とかなった。
が、やっぱり。
「肉が食いたい…」
鹿らしき動物は遠目だが何度か見かけた。筋肉のためにも肉が欲しい。狩るか。いや、狩りは現実的ではないな。解体ならできるんだけどなー。
町に行ってみるか。町で野菜でも売ってみようかな。その金で肉を買う、と。これが一番現実的だな。転移された奴らの情報も聞けるかもしれないし。
よし、そうと決まれば町へ行こう。地図を取り出し現在地を確認。一応自分がどこら辺にいるかは毎日調べていたので楽だった。
「けっこう遠いな…。まあでも行くか。いつまでも森にいてもしかたないし」
町を目指してから二日目、そろそろ近づいてきたはずだ。木に登って高いところから町が見えないか確認する。木に登るのも慣れた。
「うん?」
町らしきものは見えたのだが、いくつも煙が上がっている。
怪しい。とりあえず周囲を注意しながら進む。町に近づくとだんだんうるさくなってきた。
悲鳴や怒号が聞こえる。
これは、危険じゃないか…?
見たところ同じような鎧をきた兵士たちが暴れているようだ。どこかの国の軍だろうか。もう少し近づいてみる。木の陰から様子を疑う。
「うわっ」
目を疑いたくなるような光景が広がっていた。
人が血を流して倒れている。
何人も。
臓物が飛び出ている死体もある。気持ち悪い。
「く、くるな!」
三人の兵士に若い男女が囲まれている。男は鍬を手にもっている。鍬を振り回し女を守ろうとしている。が、振り下ろした鍬を兵士に足で押さえつけられる。焦る男。思わず力を入れて鍬を引き抜こうとする。
「あっ」
斬られる。武器を取り戻そうとしたところをやられてしまった。血が飛びちる。
「に、逃げろっ…!」
それでも、兵士に抱きつき女を逃がそうとする。足が動かない女。
「じゃまだっ!」
引き剝がされる男。
「ぐはっ」
胸に剣を刺され動かなくなる。震える足でなんとか逃げようとした若い女。
「きゃあぁぁあああ!!!!」
だが、すぐに捕まり地面に倒され兵士たちに押さえつけられ服を引き千切られ脱がされる。
「やだっ!やめて!やめて、やめてやめて!」
「あ、」
なぜ僕は見ているだけなんだ?
ニヤニヤと笑いながらカチャカチャとベルトを外す兵士。涙を流しながら必死に逃げようとする女。だが、兵士を引き剝がせない。
そして、女は犯された。
悲鳴が響き渡る。
反対に兵士たちは笑っている。
頭がおかしい。
冷や汗が止まらない。足がすくむ。助けないと。動け、動けよ!でも、足が前にでない。鼓動が速くなる。
「おい、あそこに人がいるぞ」
やばい見つかった!ぞわっとする。
やばいやばい逃げなきゃ。震える足を無理やり動かす。
「逃げた奴だな。お前始末してこい」
女を犯している兵士が二人の兵士に命令する。
「隊長ー。後で変わってくださいよ?」
兵士が二人追ってくる。やばいやばいやばい!
ま、魔法。頭が回らない。呪文を思いつかない。
「おいまてよ。殺しゃしねえよ」
絶対嘘だ。
足が震えてまともに走れない。それでも、逃げる。こ、殺される!
し、深呼吸。
「ふ、ふ、ふ、すぅー、はぁー」
まだすこし距離はある。
思考をとめるな、考えろ。どうきりぬける?
落ち着け!
落ちつけ!
切り替えろ!
戦うしかない。逃げ切れない。
正面からいっても殺されるだけだ。できるだけ簡単で効果がある魔法を考えろ。相手は油断してる。なら勝機はある!
内容がすこし暗くなります。