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異世界勇者たちのための葬送曲  作者: 浪人生NEW
異世界に来て
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死んじゃいました 神の失敗?

 「うーん。どうしよっかなー」

少女は一人悩んでいた。ギシッと背もたれによりかかり椅子を傾けバランスをとる。

「でもまさかこうなるとはねぇ」

口が裂けるように口角が上がっていく。

「アハハハハ!やっぱ人間っておもしろいわ!これだから実験はやめられない!」

響きわたる笑い声。どこまでも続く白。彼女を止める者は誰もいない。

「ふぅ。このままでもいいけど、なんか変化がほしいな。さて、どうするか」

悩む少女の顔はどこか楽しそうだ。そして、ニヤリと笑う。

「ああ、いいこと思いついた」








深紅の血は白色によく映える












「我は神だ」

「はあ」

目の前に座る少女はそう言った。

誰だ?      知り合いに神を名乗る少女はいない。

状況が分からない。駄目だ。疲れる。

整理しよう。



うん、記憶はある。

今日は2018年2月14日○○大学の入試の朝

そうだ。電車に乗るために駅のホームにいた。

あ、思い出した。

ボーッとしてたら人の波に押されて突き飛ばされて、ああそうだ、電車に撥ねられたんだ。一瞬過ぎて痛みに現実味がなかった。死んだかと思った。


で、此処は何処だ。



病院であろう。

じゃあ、この子は入院中の子供か。 神、か。微笑ましいなあ。

「おい、お前なんか失礼なこと考えてないか?」

こちらの生温かい視線に気づいた少女が呆れ顔で言う。

「え、いや、そんなことないよ~」


「はぁぁぁぁぁぁああ」

長い溜息をつかれる。

「自分の姿、よく見てみろよ」

? なんでだ? 正座をしている足に視線を落とす。





血の気が引く。    なんで正座ができているんだ?


「そういうことだ。お前さん、死んだんだよ」





ついてない。入試当日に死ぬとは。やっと、戻れたかもしれないのに…





くそが。




「生きたいか?戻りたいか?」


当たり前だ。戻れるものなら。

「なら、チャンスをあげよう」

視線を上げる。


「異世界って興味ある?」

眩しい笑顔で少女は言う。




...なんか、急に、なんか...

「えーと、魔法とか、ドラゴンとか出てくる感じの…?」

「そうそうそんな感じの。興味ある?」

「まあ、魔法とか使ってみたいなあとか思ったことはありますけど。」

だからなんだっていうんだ。

ニヤリと笑う自称神。あ、やな予感。

「じゃあぴったりだ。」

「何が?」

「まあ聞いてくれ。実はな他にも異世界行ってるやつはいるんだ。暇だったからさ、暇つぶしに異世界召喚ー!!て感じで。で、そいつらなんだけどさ、無駄に強いチートみたいな能力与えてしまったの。ちょいとした実験でな。いきなり力を与えたらどうなるのか。まあ最初の内はよかったんだけどさ、だんだん勘違いしたやつが増えてきてさ、いま、あっち大変なのよ」

「はあ。」

「で、我は直接干渉できなくてな、我が送ったんだしな。バツが悪い。でも、さすがにやりすぎた。荒れてるのよ。そいつらのせいで。まあ今のままでも何もしなくてもいつかはまた元に戻るだろうけどさ。まあ我が原因だから少し気分が悪い訳よ。我がなにもしないわけにもいかない。だからさ、おまえさん異世界行ってあいつら殺してきてくれないか?」



笑顔




「ただとでは言わんよ。それが終わったら元の世界に生き返らしてやる」

だからといって、殺していいのか?

「行ってみたら分かる。転移者たちがなにをやっているか」



「で、でも」




笑顔



「やり直そうとしていたんだろう?これは、最後のチャンスだ。ただの我の気まぐれ」

怖い、でも、生きたい。





まだ生きたい。


人を殺してでも。


「...行きます」

ニッと歯を見せ神は笑う。

「よし。ああでもちなみにおまえさんがあいつらのようにならないともいえないしな。特別な力は与えない。ちなみにおまえは異世界の人間じゃないから魔力もないから魔法も使えない」



…は?

「案ずるな。おまえさんはこれからある森で目覚める。そこである果実を食べろ。魔力が全くない人間が食べれば魔力に触れ魔力を作り出す回路ができる。だからその果実を探せ。姿は特徴的だから見つければすぐ分かるだろう。森の危険度も異世界の中ではかなり低い方だ。」

見つけるまでが危険な気がしますけどね。


今、此処でしなくてはいけないことはなんだ?

考えろ。力はもらえない。だが、欠点を補うことは許されるのでは?

筋力、肺活量は鍛えられる。じゃあ...

「1つお願いがあるのですが」

これなら、

「なんだ?どんなにいっても力はあたえんぞ」

力、といえば力だが...






「いや、僕視力がかなり悪くてですね、眼鏡がないと全然見えないのですよ。標準的な視力でいいので視力を上げてくれませんか?」

くだらないことに思えるかもしれないが、割と重要なのだ。

キョトンとする少女。

「なんだ、そんなことか。それくらいならいいぞ」

「ありがとうございます」

ホッとする。

「よし、じゃあそろそろ飛ばすぞ。簡単に死ぬなよ。足掻いてもがけよ」

うん、簡単には死にたくない。もがく。みっともなく、自分のために。


僕の耳元に顔をよせ呟く。



「我を失望させるなよ」

冷や汗が流れる。



「はい。じゃあバイバーイ」

雰囲気が元にもどり、笑顔で手を振る神。


意識が薄れていく。

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