100階層は特別階段が長くて大変だったのに誰も解ってくれない。
37日目 最果ての迷宮
帰り道。
ただ登って行くだけの帰り道。
誰も彼も納得出来ずに、意味不明のままだ。
誰もが生き延びた事に驚き。
誰もが生き延びた事に感謝し。
皆が遥君に喜びと嬉しさを伝え。
皆が遥君に驚愕し絶望し説教した。
余りに有り得ない話。
常識の埒外の更に外の斜め上。
そして遥君なら遣りそうな事。
誰もが考えもしなかった真実。
「「「「全然苦労してないし!?そもそも、全く戦っても無いじゃん!?」」」」
死よりも惨い地底の最下層で、戦い生き延びて居ると思われていた遥君は、普通に何時も通り遥君していた様だ。
傷つき、苦しみ、ぼろぼろになりながら、戦い抜き、戦い続けながら、上を目指し、必死で生き延びていると思われていた人は、傷一つなく、相変わらずに、戦う事すらさせず、ただ一方的に、魔物達を虐殺しながら、何時もの様に帰って来ていた、感想は「階段が多くて大変だった。」、だそうだ。うん、43階分の階段だもんね?タイヘンデシタネ。
何の心配もいらない、只の日常の様に、只罠に掛け、只狩り、只虐殺し、只上って来ただけだった。最悪の迷宮の地下第100層から。
「いや?だって、戦って勝てるわけないじゃん!?戦える分けないよね?Lv99のミノタウロスの群れとLv100のリビング・アーマーだよ!?無理だから!あんなの倒せないから!?」
で、倒せないから殺したらしい。みんな転落死したそうだ。間違いなく落とした犯人はいつもの常習犯だ、毎日反省もせずに再犯してる人だ。
「私達、サイクロプスにあんなに苦労したのに、アキレス腱って、向う脛って、急所って、、、其処は非道過ぎるよ。」
「ウェアウルフなんか、最強の魔物かと思ってたのに、、、お酢って、、、鼻を抑えて、キャンキャンって、、、。」
「マイマイの塩釜焼とか食べないから!!あれ、エスカルゴじゃ無いから!!食用って書いて無いよ!!絶対!!」
「牛って、怖かったのに、頑張ったのに、、墜落死?転落死?それ事故じゃないから!?殺牛者の犯行だから!!」
「無効化を無効化したって、、、其れって、何て無効化?不死身を必殺って何?スキルの意味って何なの!?」
話を聞く程に阿鼻叫喚が広がって行く。
困惑し、混乱し、混迷していく。
迷宮皇も諦め顔で相槌を打ってる。
皆が呆れ、驚き、悔み、諦める。
迷宮皇も呆れてる。この人は常識人みたいだ。
きっと良い人だ。悪者は迷宮皇をも呆れさせる非常識人だ、寧ろこっちが人外だ。
私達だったら瞬く間に皆殺しにされていた屈強な魔物達を、 頑強な迷宮主を、強大さを発揮する事も無く狩り尽くす。
その牢固さも役に立たず、その堅固さも意味が無く、その強固さも見せる事無く、虐殺されたんだ。
そこに戦いなんてない。
戦う前に死が決定されている。
出会う前に死が強制されている。
戦うには強過ぎるから、只殺してきたんだ。
闘ってすらいないから負ける事が無い。
だから結果的にだけは無敵。
無敵と言うには、圧倒的に一方的だ。
迷宮皇とは全く別の意味で触れる事すら許されない。
迷宮皇とは全く別の意味の圧倒的な迄の無敵。
だって戦ってないもの。
負ける訳が無いんだ。
唯々、殺し尽くして来ただけなんだ。
唯々、殺戮者が殺戮していただけだ。
最悪の意味で無敵だ。
敵対すら出来ていないから。
だから敵が居ない。
無敵。
殆ど皆が、誰に殺されたのかも、敵が誰かも、敵が居た事すらも知らないままに死んでいったんだ、敵対すら出来てないんだ。もう好感度どころの騒ぎじゃないよ!?命を助けられた私達から見ても迷宮の魔物よりずっと悪逆非道だよ、悪鬼羅刹だよ、悪役千万だよ、悪事満載だよ、悪の限りだよ、だって、迷宮皇さんすらドン引きしてるもん。
だから、生き残ってくれたんだ。
だから、死ななかったんだ。
だから、大丈夫だったんだ。
良かった?