順番や手順や進行を大事に思うんだったら落とすなよ。
31日目? 最果ての迷宮 83F
トラップゾーンだ。罠満載って言うか全部罠?歩くところ無いんだよ?だって全部罠だから。
「お次の階は83F、お降りの方は皆殺し?みたいな?だって殺る気満々罠満載なんだよ?」
突っ込みはない。ジト目はずっとだ。気にしたら負けだと思う。
83Fは「グラウンド・イーター Lv83」、巨大な口を開けて通路の真ん中に埋まっている。周りは罠だらけ、「罠察知」が全方位で反応しまくってる。罠を掻い潜るか? グラウンド・イーターに飲み込まれるか? って、ずうーっと口開けてるよ?良いの? 本当に良いの?
「ぽい?」
毒茸を放り込んでみる。因みに滅茶猛毒のやつです。良いの、毒耐性無いよね? なんか地面がのたうってるけど?
「ぽい。」
2個目だよ? うおおぁ~う、地震? あっ、死んでる? うん、大きな窪みに大きな魔石が落ちている。
あとグラウンド・イーターが14匹口開けて待ってるんだけど……良いの? 本当に良いの? 本当だね?
全滅しました。
どうやらグラウンド・イーターさん口が閉じられないし、動く事も出来無いみたいだ。って言うか、だった?「完全物理耐性」も「完全魔法耐性」も持ってたんだけど「毒耐性」が無いんだよ。誘ってる?それで口開けてじっと待ってるとかさー?それって入れるよねー?毒。入れろって誘ってるんだよね?絶対。良いの?って聞いたもん、俺。最後は震えていたような気もしたけど良いのだろう。
さて隠し部屋があるんだけど罠がある。
見るからに地面が怪しい。色が全然これ見よがしに違う。ここですよと言わんばかりに色違い?これが落とし穴なのか?これを飛び越えると罠があるのか?両方とか?って?空歩で空中を歩いて行くんだけど?良いんだよね?踏んでみなくても?いや、踏まないけどさー?なんかこれ誰かが一生懸命造ったとかだったらなんか悪いじゃん?踏まないけど?ねー?
下ばかり見ながら空歩で歩いてたら、天井で頭打ったよ。罠だった様だ。
「宝箱です。もう好感度は諦めつつあるけど宝箱です。どうせ貴金属は巻き上げられるんだけど宝箱。」
嫌味満載で開けてみた。もしかしたら同情してくれるかもしれないじゃん? 宝箱的に?
「トラップリング 罠を自動的に解除する」──フラグだったーっ!順序が逆だけどー!俺が逆走してるんだけどさー。
これで、「罠察知」の意味は完全になくなったよ、落とし穴に落ちて獲得したのに。そしてこれが有れば落ちなかったのに。
上から来れば隠し部屋を見つけてトラップリングでグラウンド・イーターを回避して通り抜けるのだろう。グラウンド・イーターさんは物理攻撃も魔法攻撃も効かない、倒せない。周りの罠に突っ込むしか道がない。そんな時にトラップリング。うん、良く出来てるよ?確かに。でもさー?下から来る人の事も考えようよ?少しくらいさー?通り抜けてからトラップリングって滅茶ありがたみ無いよ?全然ないよ?なんで今更って感じだよ?グラウンド・イーターさん殺され損じゃん?これじゃあまるで俺が空気読んでないみたいじゃん?まったく。
ジト目甲冑委員長さんは西洋人風にやれやれだぜって感じのジェスチャーしてるし? 元迷宮皇は何処に行ったんだろう? あの死闘は何だったの? やれやれだぜ。
これで上が82F? あとちょっとで5分の1? 20%? 落ちるのは一瞬だったのに。まあ落ちた甲斐は有っただろう。新たなジト目とも出会えたし。
で82Fが「ミラー・ボア Lv82」え~?ミラーなら鏡?鏡像?反転? ボアは猪だけど?猪はワイルドボアだ?飼い猪? まあ突進してくるんだろう、それよりミラーだ、鏡なら魔法反射、鏡像なら幻惑、反転なら幻影なのか?まさか突進してきて、反転して引き返すとかはしないだろう。
う~ん、「魔法反射」が有るんだから鏡の方の意味だ。問題は「衝撃耐性」突進するんだから必要なんだろうが落としても駄目みたいだ、そして「悪食」毒や状態異常の茸をあげてもおいしく食べてしまう。懐くかも知れないが、まあ、駄目だよね? 普通さー?
「う~ん、直接戦闘かー? Lv82を相手に?100匹は居るのに?突進されちゃうの? 牙に刺されちゃうの?」
実はダンジョンの魔物に最も必要なものは衝撃耐性とか落下耐性なんじゃないだろうか?
槍衾。
突進してくる大量の猪の群れ。
魔法は効かないから、槍衾。
何せミノタウルスさん達の槍が沢山有る。地面に槍の石突を斜めにさせる様に穴を開けて置き、ミラー・ボア達が勢い近づいて来たら、一気に並べて完成です。勢いも付いてるし、後ろから押されてるから止まれずに次々に突き刺さっていきます。之で突破力は消えた、只の塊だ。
そして突進を止められ動けない。その間に空歩で猪たちの後ろに降り立つ。手にはいつもの樹の杖?さんだ。おひさの異世界版神道夢想流杖術だ、俺はまだ杖術だと言い張るらしい。神道夢想流異世界支店から苦情が来るまではいいだろう。今日は狙撃しないし。
猪はバック出来ない。って言われてるのは間違いなんだよ。急停止も反転も後退りも出来る、だが後ろ向きに走ることはない。確実に動きが止まる、反転出来ても勢いを付けるだけの距離はもう無い。遅くなる、俺でも戦える程度までに。そして密集し過ぎて動きが取れていないなら、撫で斬りだ。
まずは更に混乱させる。
動きを更に悪くする為に穴ぼこを造り、堀で囲むと後は殲滅戦だ。やばくなれば槍衾まで逃げればいい、飛べるんだから。
群れの中に躍り込み、動き、廻り続ける、止まれば勢いを失い、斬る事が出来ない。囲まれてボコられる。お手本は何度も見た、ジト目甲冑委員長さんから、そして虚実の使い方も、一歩を繋げ、踊る様に駆け、剣戟を舞わせる、間隙に滑り込み、斬撃を見舞い、惨劇に変える。
考える前に動く、どうせ俺に出来る事なんて大して無いし、悩めば動きが止まる。
あの迷宮皇との斬り合いで覚えた、覚えさせられた。斬撃を繋げ、組み立て、終わらない虚実、捉えさせずに一方的な斬線を舞わせて剣舞にする。
緩やかに流れる様に、無駄も無理も削り落とし、単純に、純粋に、純然に斬り踊る。
猪と猪の合間に歩み入れ半回転し切り捨てれば、また斬撃と共に歩み入る、止まる事無く、留める事無く、身体が流れる儘に。きっと、全然美しくも無いだろう、舞えてなんかいないだろう、でも例え無様な虚実でも、見苦しい剣舞でも、その先に歩む。まだ先が在ると見せ付けられたのだから。
槍衾の片側からは、本家のジト目甲冑さんの剣舞が始まっている、躍り込んだ瞬間に周りに空白地帯が出来ている。速さが違う、一瞬の間も無い。
急がないと全部殺られそうだ。
「ぷはあ~っ、なんか久しぶりな気がするよ? 戦ったの? 迷宮の中なのに何故だろう?」
悩んでる俺にジト目を豪雨の様に浴びせ掛けながら魔石を回収するジト目甲冑委員長さん、言いたい事は解るが聞きません。正面から戦ったら死んじゃいます。
次は81Fになる、ちょっとずつだが上がって来てる。先が長いのは相変わらずだし。
いつの間にかジト目も相変わらずになっているし。
誤字ぺったんさせて頂きました、いつもありがとうございますm(_ _)m