可能性が1%以下でも、100万回それを遣っても、ずっとその1%以下で良い、0にはならない。
24日目 夕方 洞窟
延々と繰り返される剣戟の応酬、終わりなく続く連撃の繰り替えし。
世の中には天才が居る。性格や人格は問われない、能力的天才だ。努力も経験も関係ない只の天才だ。
この山田君は数学的天才という奴だ、計算能力ではなく演算能力だ、隠して普通を装っていたが見え見えだった。
きっと、今、困っているだろう、演算通りに行かなくて、再演算し、確率を重ね合わせても、また外される。
無駄だよ。運がLvがMaxで限界突破してるから。
生き残る可能性が1%以下でも、それを100万回遣ったとしても、ずっとその1%以下で生き残るから、ずっとその1%以下で良い、0にはならない。確率論を限界突破しているのだから、可能性では俺は殺せないよ。
既に戦闘中、というか、向こうからすれば未だ戦闘中、既に俺を何度も殺しているはずなのに終わらない。終わってやる気なんかないし。
そして終わらない縦横無尽に切り裂く斬線を、滅多矢鱈に打ち落とす。
うん、相当混乱しているだろう、納得なんて出来ないだろう、完璧な計算をしてきたのだろう、でも俺が死なない。溜め込んだスキルを全て吐き出させるまで。
「ずいぶん沢山スキルが使えるみたいだねー、ずいぶん殺して奪ったんだろーねー」
只の、近接戦と中距離戦、こっちは魔法無しだ、どうせ効かない。とにかく、使わせれば良いだけ、使い切る迄死ななければいい。
「遥君?何で死なないの?」
「いや、自殺願望とか無いし?殺されるのも嫌いだし?みたいな?」
ずいぶんご不満のようだ、ずいぶん不機嫌だ。カルシューム不足かも知れない、魚食べろよ。
もう、何百回も殺しているのだろう、計算上は、
「何をしたんだ?いったい?」
無限の連撃の応酬、攻撃を防ぐ度に、攻撃を躱す度に、感情が表れる。
「何について聞きたいのかな?山田君」
「どれほど強くてもLv11ではレジスト出来ない筈だっ」
成る程、確率的に計算していたのだろう、もう何回も殺したと。何十回も殺したと。
数学的にも、確率論?的にも有り得ないのだろうが、文学的にはゼロじゃなければ何とかなるんだよ?
「さすが、数学的天才さんだ、戦いながら確率を読みきったのかい?」
おっと、魔法は樹の杖?で掃い、剣戟は躱す、出し惜しみじゃ殺せないよ?なんで、詰めに来ないんだ?
「大体、何故動ける?何故、攻撃できる?何故、見えている?」
あんなに、ずっと普通に振舞っていたのに、ずいぶんと我を出すようになった物だ。
「ああ、「ちょっかい」と「まねっこ」の事かい?」
「何故知ってる!?鑑定できないはずだ!どうやって、、、、?」
もちろん、鑑定なんてしてない、見えないし。絶対こいつが持っていると思っていただけだ、白い部屋で、黒い板を見た時に。
「まねっこの強奪はずいぶん性能が劣化するみたいだねー」
「劣化しても、Lv11相手なら即死が効いてるはずだろう!何でだよ」
うん、レベルの壁の問題は、異常状態がレジストできない事だ。でもね、確率は100%にならない。何故なら、
「あー、俺「健康」だから効かないよ」
莫迦達でも無理だった、麻痺や盲目に毒を浴び、強奪した幻覚を囮に「ちょっかい」を掛けられていたのだ、精神に、神経に、だから当らない。
身体が気付かない程度に、干渉されている、勝手に動かされる、真っ直ぐに切ったつもりだが、避けて切ってる。だから当らない。
もちろん、俺の身体も「ちょっかい」かけられてる、無視してるだけだ。しかとだ。
いやー、身体操作系が簡単に取れるし、上がりが良いと思ったよ、
「木偶の坊の意味知ってるか?」
「役立たずだろ!お似合いだっ!」
残念、数学的天才だが文学的には駄目駄目だ。
「他にも、あやつり人形って言うのが有るんだよ山田君、神経に「ちょっかい」掛けられるなら、無視して無理やり自分の身体を操れば良いんだよ。」
だから、攻撃は当る、決められないが、戦える。操って歩く練習も駆ける練習もした、そして一歩だけ歩けば一撃振れる、虚実だ。この為だけに造ったのだから。
「宿り木の蔦 木の棒、杖の強化 魔技吸収 ? ? ?」の魔技吸収で範囲魔法を吸収できるお蔭でジリ貧にならずにすんだ、これで最後までやれるはずだ。
こいつは森の中でずっと殺し続け独りで森にいた、俺は無理やり街に連れて行かれてみんなに引き止められていた、その差だ。
これで俺を殺しきる為には、溜め込んだスキルを全て使わないと詰めれないはずだ。
それまで粘ればいい、魔法さえ見ればいい、幻覚も効かない、「神眼」さんありがとう、コンタクトさんには大感謝だ。
お蔭でしのぐ事は出来る、最後まで、、、最期まで。
「いいのかい?山田君。まねっこで奪った強奪では、制限が付くんだろ?回数制限があるのに此処で使い切って良いのかい?」
「くっ!なら奪えば良い!」
おっ、やっぱりビンゴだ。制限は回数制限か、つまり何時かは打ち止めになる、そして俺からは奪う物が無い。使い物に成らない物か、使いこなせないものばかり。
此処で俺に全部使わせれば勝ちだ、決まりだ、決定打だ。それでもう、委員長達は倒せない。
最初から、白い部屋に行った時からずっと、数学的確率論で計算しきったのだろう。ありとあらゆる状況で自分が最強に成る手順を、確率を、可能性を。
もし、最初から強奪を持っていれば、良くて封印、悪くすれば殺される。どの道、全員から警戒される。
だから計算したんだろう、数学的天才君は、確率に確率を掛け併せて。最も上手く行く手順を、高確率な方法を。
そして、同級生を分裂させるほど、計算の精度が上がり、不確定要素は減る。
そして、まねっこで強奪を真似た。後はバラバラの級友をバラバラに殺して奪い、求めていたのは、魔法無効、状態異常、そして幻覚。
これにちょっかいがあれば、絶対に安全だ。
打ち合う危険が無い。
一方的だ。
チート殺しだ。
これで、準備は終り。
後は、まねっこの強奪で本物の強奪を強奪する、要するに委員長を殺す、これで、オリジナルと同程度の強奪になる。
そして、順番に全員を殺してチートを奪えば、最強だ、無敵だ、無双だ、完璧だ。
だから莫迦達は運よく死ななかった、戦う能力だけ潰された、まだ、完璧に強奪できないから、後回しだ。スキルが惜しかったのだ。
本当は魅了と傀儡を復活させたかったのだろうが、其の為になんちゃって達を生かしておいたのだろうが、莫迦達が強すぎたのだろう、だから、なんちゃって達も殺して強化し莫迦達を無力化した。
なんちゃってや普通男子達も仲間の振りをして操って、スキルが足りなくなれば殺して奪う、だから一人。
なのに、欲しい能力が固まって逃げてしまった、無駄に殺すと強くなれない、追うタイミングは今が最後だ、だが、俺が邪魔だ。
普通に考えれば一番弱いのだ、強行突破すれば良いだけだ。
だが、確信できない。
だが、確定できない。
なぜなら確実ではない
計算が出来ないから。
スキルが意味不明だからだ。
だから、不確定要素の俺を隔離し、観察し、最期の仲間の2人も殺し即死を奪ってきたのだろう、これでLvの壁で確実に詰めれる。
なのに死なない。
それどころか、ちょっかいや幻覚や状態異常が効かない。
Lvも自力も勝ってるのに、圧倒的にしか戦った事が無いから動揺する。
こいつはやっぱり勘違いしている?