夜が長いのは自転の問題じゃないかと後日言ったら怒られた。
23日目 昼 宿屋 白い変人
結論は出なかったが、折衷案で森に偵察に出て来た、入り口付近までだ、魔物を狩りLvを上げながら様子を見る。
言い訳だ、ただ皆、少しでも遥君の近くに行こうと、近付こうとしているだけだ、5パーティーで分散させずに雁行で進む。
「魔物が一匹もいないよー、Lv上がらないよー?」
本当に一匹もいない、誰も戦っていない、森の中なのに、撃滅された、殲滅されて、全滅した。思い当たる人も、心当たりも、犯人も一人しか居ない。
名推理は出来たのだけれど、「中身は高校生で、身体は小学生」は禁句だ、副委員長Cさんが大暴れするタブーなキーワードだ。
「もう少しだけ奥に行ってみる?」
見るもなにも、みんな取り付かれたように奥に進む、何度止めても、留めても、進んでいく。
「止めてる人が、一番進んでたら、説得力ないと思うよ?」
駄目だしされちゃった、駄目駄目だった、遥君が近づけさせないなら理由が在る、為らば、近付いてはいけない。
でも、皆一歩でも前に行こうとしてる、一歩でも近付こうとしてる、そうすればいつか辿り着けるんじゃないかと、そうしないと居なくなってしまうんじゃ無いのかと、、、、。
せめて、Lv上げと思っても、魔物はいない。
ただ森の奥へ、奥へと。
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もう、数時間、多分3時間は過ぎている、予定の時間はオーバーしているだろう。
でも、誰も、誰一人として戻ろうと言わない、言ってくれない、私が言わなければならないのだろう、一番言いたくなくても言わなければならないだろう、遥君はちゃんと委員長出来てるって認めてくれたから、認めてもらったから、私は言わなければならない、のに、また一歩、また一歩と、あの洞窟へ向かっている、、、こんな世界に連れてこられて、笑うことも、明日の事を考える事も出来なくなって、今何をしていいのか解らなくなって、何でって、どうしてって、そればかりで、そんな世界で、私達が始めて、ほっとした場所、笑った場所、笑ってしまった場所、毎日毎日、遥君を怒って、毎晩毎晩、遥君に感謝して、明日は、明日は、ってみんなではしゃいだ場所、其処に遥君は一人で居る、まだきっと、居てくれる。だから、、、、、。
幾ら進んでも魔物は一匹もいない。
帰りはみんな無言だった、足取りは重く、魔物も出ないのに帰ったのは夜になっていた、こんなんじゃいけないのに、私達はLv上げしてるべきなのに、何も出来ずに帰る。
みんなに、「帰ろう、、。」と、言うと、痛々しい表情で、痛ましい表情で、無惨な顔で、哀れな顔で、いたわしい顔で私の顔を見詰め、下を向き、頷いた、頷いてくれた、苦しく、辛く喘ぐように、、、、きっと、私もそんな顔してたのだろう。
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小田君達も、同じ宿に部屋を取り、誰も抜け出さないように、部屋分けを変えて、監視状態にする。じゃないと、行ってしまうから、みんなも、私も。
何時以来かの静かな食事、看板娘ちゃんもおろおろしていた、ごめんね、やっと小田君達に合流できた、そう、それが最初の目標だった、なのに、みんな言葉少なに食事を済ませ、することも無く佇んでる、たった一人遥君がいないだけで、何時も賑やか過ぎて、大騒ぎして怒られてる娘達が、空気読まない才能とまで言われた小田君達でさえ、物思いにふける、悩み、苦悩し、苦患する、答えも何も出ないままに、、、。
こんなに夜が長いなんて知らなかった。
何時も大騒ぎしてる間に、
大はしゃぎしてる間に、
一日が終わってたから。
あっと言う間に過ぎてしまって、
時間が足りない、もっとって、
誰も、こんなに夜が長いなんて知らなかった。