やはりこの城はおっさんが憑き物の呪われたお城みたいだ。
71日目 夜 新ムリムリ城
皆が笑い歌い踊る。全てが終わった、やっと平和が訪れた。みんなが平和を勝ち取った。だから
「「「「宴会だー!」」」」
「「「「うをおおおおおおおおおおおおっ!」」」」
(ポヨポヨ~!)
飲めや歌えやお菓子も作ってねの大騒ぎだ、饗宴が供宴と共演で競演で大賑わいと大燥ぎの協演だ。
「唐揚げさん追加だって~、マヨネーズも付けてね~。レモン汁は許さない!」
「串盛りを盛り盛りで盛っちゃってね! もう串刺し侯爵さんって言うくらい盛っちゃって!」
「きゃあああ、かば焼き、かば焼き、かば焼かないと!」
(プルプル。)
狂乱の宴の犯人たちはみんなお知り合いだった、でもフライドポテトも追加してね! ケチャップさんも付けちゃってね!
そしてワイワイガヤガヤの喧騒の中一心不乱にお御馳走を食べている超絶な美女、絶世の美女アンジェリカさんと並んでも遜色ないまでの美貌に妖艶な雰囲気を纏いながら焼きそばを啜っている。
その印象は世界を変えた美貌って言われるクレオパトラさんってこんな綺麗な人だったのかなって思い見惚れてしまう優雅さと艶やかさで今度はかつ丼を頬張っている。
そして美貌だけでなく遥君が迷宮皇級と言い切るアンジェリカさんやスライムさんと比肩する実力の持ち主でその戦いを間近で見た尾行っ娘ちゃんが「綺麗でした。夢幻の様に舞って魔物が舞い散らされていました」と夢見るように答えていた、迷宮皇クラス2人の戦いを見た事のある尾行っ娘ちゃんが陶酔するレベルの強さ。その力で串盛りの奪い合いに颯爽と参加して串カツに齧り付いている。
髪はロングなおかっぱって言うか前髪ぱっつんだがそれがまた綺麗な顔を際立たせている、そして凄まじく煽情的な出で立ちは何故か遥君に用意された学校ジャージで隠されている。お口にはホットドックが咥えられている。
もう駄目かと思われた5番迷宮の氾濫はこのムリムリ城まで届いたが其処で潰えた、辺境の人達が自らの力で守り抜いた。やっぱり異世界でも奥様達は怖かったらしい! 何日も前から何の情報も無く領主も不在な何も分からない状態でそれでもみんなここまでやって来た、例え無駄で在ろうとも自らの手で自らの幸せを守りにやって来たんだ、そうして辺境は守られた。
実際あの街の棍棒は全て効果付きの品ばかり、辺境では普通でも王国では特級品のレベルの武具だ。そして奥様がバーゲンやお買い物で買い漁っていた服はみんな魔石コーテイングされたマルチカラーの服、あれは魔力で守られた軽鎧に匹敵する強度がある、辺境ならば護身用だがそこが辺境外なら立派な武装。それなら当然に奥様無双になる筈だ。ましてや偽迷宮の最終手段である崩壊防衛で消耗し弱り切った辺境外の魔物程度に奥様達が後れを取るはずが無い。
偽迷宮はちゃんと最後までみんなを守りきったんだ、最期は無残に崩落し爆発し炎上しながら崩れ落ちた辺境を守る門だった偽迷宮はその役目を果たし終えて消え去って行った。さっき見たら新偽迷宮になっていた。
最も深くて危険な迷宮だと言われていたアンジェリカさんの方は何の問題も無かったようで楽しかった、すっきりしたって喜んでいた。氾濫は遊戯扱いで終わったらしい、きっとあの悪い使役者さんの影響だ! でもあの使役者さんだったらその後に賞品が出なかったって騒ぎだすに決まってる。
オムイ様も王女様も疲れ切ってはいるがやり切った顔だ、人が一皮むけたってこういう事を言うんだろうか? 今迄とは違う自信と強さが感じられる、その笑顔は不敵な迄に鋭くなっていた。
そして尾行っ娘ちゃんとそのお父さんは皆にお説教されてしょげていたけどこればっかりはしょうがない、辺境を救ったのはその2人なんだけどそれでも死ぬのは許せない。みんな誰にも死んでほしく無くて戦っているの、きっと誰も死なせたくなくて死ぬ思いで駆け回っているの。だからお説教は当然だ。
それに遥君が「羅神眼」で確認してあれは多分お姉さんの解放と黄泉返りの余波で教会の仕掛けが暴走したんだから兆候が読み取れないのはミスじゃ無いって言い切っていた。言い切っていたから本当かどうか怪しいけれど誰にも分からなくて遥君が良いって言えばそれで良い、だってもしもサボってたとか下らないミスだったら遥君は何も言わないだろう、もう口を利く事すら無いだろう。だから遥君が良いって言ってるんだから良いの。
そしてその張本人のお説教常連の皆勤賞で鉄人な無反省者はお料理で大忙しでぶうぶう文句を言っているけどその割には超豪華料理の数々が溢れ出してお御馳走の氾濫で迷宮の氾濫を倒した辺境中の勇者たちがお腹を抱えて次々と倒されていっている。ドーム建設で集団わんもあせっとが必要そうだ!
まったくノーマークだった遠い迷宮の2つの氾濫はスライムさんが間に合ってくれていた、長距離弾道スライムさんのクラスター絨毯爆食だったらしい? それは何かのスキルなの? 帰って来てからは遥君にじゃれ回り纏い付いて離れないでぽよぽよと懐いてる。
私達は時間が掛かったが被害皆無で余力を残して終われた、途中で逃げている貴族の残党もボコって捕まえておいた。お饅頭食べ過ぎ犯には鉄槌が下された、未だ許しがたいが王都で裁かれるらしいのでしばかれるだけで済んだんだよ? お饅頭の恨みは怖いんだから!
そして遥君はいつも通りにずっと穴から出て来る魔物を叩いて叩いてビートなマニアが太鼓で達人だったそうだ。何事も無さそうな興味なさそうな顔でそう言えばって感じでそっけなく話してた、昔ならそうなんだ~って思っただろう、だって今までずっとそう思っていた、見たままに「あ~やっぱり遥君は大丈夫なんだ」って。
でも今だから分かる、もう2か月もずっと一緒にいるんだから今はもう分かるの、ボロボロだ。もう身体中がボロボロで神経はズタズタで肉も骨も引っ付いただけのグチャグチャなんだ、だから平気な顔をしてご飯をバンバン山の様に作ってる。死ぬ~とか大騒ぎしてる時は大した事なくても平気な顔して何でも無い様な顔をしている時ほど平気なんかじゃない。
痛いって言って心配させたくなくって。
苦しいって言って悲しませたくなくって。
だから笑って文句言いながら平気な顔で騒いでいる。
だから笑っている、だってみんなが笑う顔が見たくてボロボロになって頑張って来たんだから。
だから笑う。
みんなに笑ってて欲しくて頑張ったんならみんなが笑うご褒美が絶対に必要なんだ、だからみんな頑張って大騒ぎで笑う。
ちゃんと幸せになったよって心を込めて笑う。
「いや違うんだって! ひきこもってたらおっさんたちに乗っ取られて加齢臭が加齢異臭でマーキングされたからひきこもりがお引越し? だっておっさん臭いんだよ? いやだよ、そんな所に引き籠れないよ! だって4万人分黄泉返りでえたーなる加齢臭がふぉーえばー何だよ? 引っ越すよそんなもん、うん焼き払って炎獄で消臭して地中に埋めて封印だよ。 くさいな?」
戻って来たらお城が違うって思ったら犯人は自由移動型建設狂なひきこもりさんだった、ヤドカリさんより無節操な移動住宅で仮住まいな乗っ取り常習犯の引き籠りさんだったの! だってこのひきこもりさん王国中にお家乱立して迷宮すらもお家にする気満々な超豪華住宅事情なひきこもりさんで実は家を広げながら広範囲を高速移動する新種のひきこもりさんだったのだ! 中々珍しいグローバルな引き籠り方だ。自給自足も完璧だ!
いつの間にか竹林と湖畔が出来て佇まいが出て来た新ムリムリ城は急造で決戦用なのに以前よりもさらに内装は豪華で娯楽室やサロンにマッサージチェアーまで完備されていた、魔力がギリギリでやばかったってこれが原因なんじゃ無いんだろうか? 美術品まで豊富に有るし? 当然お風呂も更に豪華になっていた。
「「「「辺境にかんぱーい!」」」」
兵隊さん達も駆けつけた冒険者達も街の人も奥様達も笑い喜び宴が大宴会で大喜びの大騒ぎ、だって辺境の幸せは守られた、みんなで辺境の幸せを守ったの、このムリムリ城の後ろには幸せな辺境が残った。幸せは残されて託せる未来が出来たんだ、此処から辺境の未来が始まるってみんな信じてる。だから心から笑ってる。
これを全部用意していたからこそ奇跡は起こった、たった一人で大陸最大の組織の謀略を潰しきったのは全てが遥君がずっと用意し続けたものだ、幸せと平和の為にずっとずっと。実際に遥君がばら撒き続けた茸ポーションが豊富にあったからこそ死者を出さないなんて奇跡的な事が起こった、みんなが生きているからこそ心からみんなが笑えている。生き延びたのだと、そして守り抜いたのだと。
オムイ様は夫婦げんか中だけど既に劣勢を極めて泣きそうだ、どうやらムリムール様が前線まで来て先陣をきって戦っていたと聞いて危ない事をするなと叱っていたら横から遥君に魔物相手に突撃戦をしていた事を密告られたようだ。またやってたんだ……。
「「「「シノ一族にかんぱ~い」」」」
「「「「辺境軍に称え在れ~!」」」」
(ポヨポヨ~!)
みんなが喜び褒め称え合い抱き合って泣きながら喜びあってる、遥君は必死の決意を胸におっさんの抱擁も奥様の抱擁も嫌だと「分身」まで駆使して縦横無尽に逃げ回っている。でも壁や天井を走って逃げ回るのはお行儀悪いよ? 満身創痍な筈なんだけど元気そうだ。
本当に素直じゃ無い。
でも素直に喜べないんだろう、本人だけが失敗を悔やんでる。結果だけが良かったが遥君の万全の策ですら足りていなかった、実は滅びている筈だった、オムイ様達が間に合わなかったら、王女様達が参戦してくれなかったら、あの謎の美人さんが現れて助けてくれなかったら、尾行っ娘ちゃん達が命がけの足止めをしなかったら、小田君達がスライムさんを発射し無かったら、冒険者や街の人たちが救援に来ていなかったら、教会があと1手でも多く持っていたら滅んでいた、偶然すべてが上手く行っただけだと失敗したと悔やんでる。
だから本当にお莫迦さんだ、全てが偶然でもその全ての可能性を作ったのは遥君だ、こんな奇跡が起こせたのは遥君がずっとずっと準備して来た物が揃っただけだ、そしてそれを行なったのは超幸運の限界突破なお人好しのひねくれ者の豪運任せの可能性いかさましの絶対に幸せを諦めない意地っ張りの偽悪者だ! だったら出来ないなんて嘘だ! 幸せになれないなんて有り得ない! だからみんながここに来た。
だって可能性が0にならない限り遥君は何とかしちゃうんだ、そして0にしない為にあんなにずっと頑張って来た。だから素直に喜べば良いのに、ここまで頑張って喜ばないなんて許されないよ!
でも悦んでる?
あ~盾っ娘ちゃんのブラだけエアー入りだったのが拙かったんだよ、あと文化部だけTバックも拙かった、それこそが失敗で助かる可能性は0だった。女子高生押し競饅頭3rdインパクトが発生してる、9ケ所もの迷宮の魔物の氾濫を殺しきったけど女子校生エアー入りブラ要求の大氾濫に幸せそうに殺されかかってる? まあ幸せそうだし悦んでるし良いのかな? 私もいるし? 満身創痍な遥君の為に武装無しの薄着で安全設計な女子高生押し競饅頭に飲み込まれて遥君はやっとお休みした、ただの幸せそうな屍さんだ。
そうして女子大浴場貸し切りお風呂女子会だ。
「「「「うわ~っ。艶めかしい! そして羨ましい!」」」」
謎の美少女さんもご一緒だ。さっきはアンジェリカさんと話し込んでて意気投合って言うかアンジェリカさんのファン? 握手して貰って喜んでた。
「美味しい ご飯とお菓子 使役!」
既に使役される気満々だ、すらりと長い手脚なのにむちむちの張りの有る薄褐色の肌がお湯で濡れて艶めかしい。オリエンタルな風貌に無表情な顔立ちでミステリアスな美女さんは既に餌付けされてたようだ、クレープ派に参加したみたい。お饅頭派は現在劣勢に立たされてて負けているの。
「引き締まってて柔らかくって滑らかでしっとりお肌に鍛えられた弾力が~あ~ん」
異世界美人なクレオパトラの美貌を持つ美人さんはネフェルティリさん、不死の木乃伊さんで踊り子で神官戦士な巫女さんで聖騎士に大賢者な異教の聖女の称号を持つ美人さんだった、今は嬉しそうにシャリセレス王女が身体を洗い捲くって興奮してる。あの魅惑な身体つき、アンジェリカさんのわんもあせっとに加えてネフェルティリさんのだんすだんすれぼりゅ~しょんが必要だ! 既に申し込みが殺到している、私もお願いします! だって括れが凄いの! そしてお尻が引き締まって持ち上がってしなやかでむっちり感も有って肉感的で魅惑的で更に蠱惑的の豪華な姿態。
遥君は明日の朝を無事迎えられるんだろうか? 既にアンジェリカさんが悪い顔で遥君を2人掛かりで蹂躙し凌辱の限りを尽くす鬼畜計画を立てている、ネフェルティリさんも使役される気満々の襲う気も満々で遥君陥落計画に乗り気みたいだ。あの超絶美女の究極の姿態が2人がかりって……きっと4万人のおっさんよりもはるかに危険な2人が手を組んでしまった。
「愛人 2番手 本妻達宜しく」
「「「「……本妻って……愛人さんなんだ~」」」」
やっぱりアンジェリカさんと同じで魔物枠らしい? そしてやっぱりいつものように救われて来たそうだ、教会から強制される「従属の首輪 強制的に服従される首輪」をかけられて狭く暗い棺の中でずっと監禁されていた、そして起こされる時は殺戮だ。自分の意思じゃ無く命令されるままに教会に敵対する人たちを傷付けてきた、それがやっと解放された。ようやく自分の意思で行動できるようになった、だから願ったのだ殺して欲しいと、そう願い続けて来たから願ってしまった。
相手が悪かったの。
その人にその願いは通じない、どんなに望んだって叶えられない、その人は絶対に絶望を認めないそれはもう我儘で驚異的な自分勝手な歩く傍若無人で立つと暴虐武人で座ると忘却無人で歩く姿は暴走魔人なの。だから絶対認めない、許さないし叶えないしその未来は出会った瞬間に虐殺済みで黄泉返っても永久圧殺地獄なおっさん地獄で殺し尽くす、だってその人は悲運の殺戮者さんなの。
だから救われた。見た事も無い美味しい料理とお菓子の山で生きてさえいれば美味しいものも食べられて幸せも沢山見つかって楽しい事がいっぱいあるし無かったらぼったくれば良いじゃ無いの? って説教されて説得されて洗脳されて付いて来た。 またやった。
今回は「使役」しない位の学習能力は有ったみたいだけど餌付けでもう本人さんが「使役」される気満々だ。それにそんな絶望から救われたら付いて行くに決まっているのに決まりきってるって気付かずに今頃どうしようどうしようってスライムさんに相談してぽよぽよされてるんだろう。
だって命令しなかったんだって、命令されても逆らえなくされちゃってまた教会の人達の時みたいに無理矢理命令されるって、誰かを殺させられるって恐怖していたのに何にも命令なんかせずにクレープ3個で「手伝ってくれない? 迷宮が氾濫で辺境超ピンチで手が足りなくて猫の手でも肉球でも借りたいけど借りたら返さないにゃん? って言う訳なんだけど成功報酬でお御馳走食べ放題も付けるんだよ?」ってお願いされたらしい、命令だけで従属させられる相手に一生懸命にお願いしたらしい、必死で焦ってるのにそれでも決して命令だけはしなかった。だから信じられた。
だからクレープ5個でついて来た、2個増えてるから女子力も高い!
それにアンジェリカさんもスライムさんもご飯も睡眠も必要ない、無くっても魔素や魔力で生きていける。だけどそれは必要ないだけで毎日2人共美味しそうにご飯を食べてる。
でもネフェルティリさんはずっとご飯なんか貰えなかった、必要が無いから。
そして遥君は必要が無い事を知っててもお構いなしに寧ろだからこそネフェルティリさんに美味しい物を山盛り差し出したんだそうだ、取引ですら無くただ無条件に美味しい物を食べて待っててねって言ったって。そしてネフェルティリさんには何にも命令せずに自分で残りの教会の大司祭たちを捕らえてたらしい、其処までされて懐かない訳が無い! しかもストロベリー・クレープさんだ!
ネフェルティリさんは驚いて感激したんだろう、私達はあ~またかと思うだけだけど。だって遥君に命令された事のある被使役者って誰もいないもの、いっつもお願いしたりお菓子で釣って交渉したり謝ったり怒られたりしてるけどたったの1度だって命令した事が無いの。遥君は誰にも命令した事が無い使役者なの、だからみんなが信じてる。
きっとまだどうしようってスライムさんに相談してるんだろうけど手遅れだよ? 大体何でも全部手遅れなの、だってもう辺境から王国まで遥君が感染拡大中の大流行だからもうきっと誰も諦めない。手遅れ過ぎるよ? みんながゾロゾロついて行く、だってみんなが信じて追い求めてるから、みんなもう諦めない事を覚えさせられてしまったんだからね?




