深夜に爆走する16歳の乙女の集団は御土産屋さんの硝子を割りに来たんだろうか?
63日目 夕方 ムリムリ城
新たに2つ迷宮を踏破して遥君に隠し部屋探しを頼もうと思ってムリムリ城まで帰ると、遥君は大急ぎで第1王子軍に差し出されに行ったらしい?
どうして普通に急いで差し出されに行くんだろう、だってあの王弟様の案って絶対に碌な事にはならない筈だ、そして差し出された人はもっと碌な事をしないんだ! あれはパンドラの箱(希望抜き)だ、災厄100%の混じりっ気無しを超高濃度濃縮済みくらいに碌でも無いものだ。差し出させる方と差し出す方と差し出される気満々なアレが3種混合の三つ巴で超混ぜるな危険な状態になってるだろう。
「大丈夫かな~? まあ絶対に大丈夫じゃ無いんだけど。」
「敵に身柄を引き渡されるって……敵さん災難だよ? あれ?」
あの王弟様は碌な事をしない、だって遥君を敵に引き渡すなんて! それって絶対碌でも無い事になってる、もう少しこっちとか敵さんとかの迷惑を考えて欲しい、あんなもの渡して話し合いなんて出来る訳が無い。あれを渡されてから話し合いするなんて余裕が敵さんに有る訳が無いだろう、絶対にやる前から計画段階で交渉失敗決定だ、交渉まで生き延びられる可能性すら僅かだろう。
「遥様から伝言だそうです、「委員長達に王都集合、先着30名様に新作粒あんお饅頭プレゼント? みたいな? って伝えてね? 的な感じ? なんだよ?」何だそうですよ?」
メリエール様が側近さんから詳しい情報を聞いて来てくれたみたい、そして王都に向かってる? 何で第1王子に差し出されながら第2王子のいる王都に向かっちゃうの? そして伝言の後ろ半分は全く必要ないよね? 何で側近さんも律儀に覚えて伝えているんだろう? 謎だらけの伝言だった。
「行くしか無いよね~? 行かないと意味解んないし、粒あんだし」
「うん、心配しているくらいなら行こう! 王都の粒あんに!」
「何故行くのかってそこに粒あんが有るからだよ!」
行く事に誰も異存は無い様だ、そこに粒あんが有るからみたいだ。でも戦争中に粒あんで作戦が決定されるのってきっと珍しい事だろう、姫様コンビが固まっちゃってるよ? でも新作お饅頭には乗り気みたいだ、粒あんを知らないからみんなのテンションに固まってただけだった。
「地図だと真っすぐに王都を目指すと遥君差し出され事件の現場を通れないけど直線で行く? 事件現場周りで行く?」
遥君は高速で移動できる近衛達だけで出て行っている、もう事件は終わっている可能性が高い。だったら急いで王都に向かった方が良い、最短距離を高速移動すれば明日の夜中中には着ける。そして領主様達はもう出立しているらしい、先着30名の危機だ!
大急ぎで晩御飯を食べお風呂に飛び込み仮眠をとる、4時間後の深夜に出発だ。安全面的には早朝でも良いかなとも思ったけどLv100越えの集団だしどのみち夜中に出るか夜中に走るかの違いになるだけだから結局一緒ならさっさと行こうと決定された。お姫様コンビも参加する気みたいで絶賛交渉中みたい。
「ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯お風呂お風呂お風呂お風呂お風呂夜食?」
いや、夜食は食べ過ぎだからね、今日はブートなキャンプは無いからね? 焦っても仕方が無いけど遥君がいないと落ち着かない、行きはいってらっしゃいって見送ってくれたのに帰ったらお帰りなさいがないなんて職務怠慢だ!
「先行部隊出すの? 私どっち、先着30名様は譲れない!」
行先の王都方面は土地勘のない知らない場所だ、魔物も伏兵なんかもいないだろうけど用心だけはしたい。
「偵察を兼ねた先行だけ定期的に出した方が良いけど基本本隊はばらけずにみんなで行こう! だって30名以下だから大丈夫!」
「「「「おおおおおおおっ!」」」」
盛り上がってるし気合も入ってる。いや早く寝ようね?
「目指すは王国の首都、粒あんだ!」
「「「「おおおおおおおっ!」」」」
違うからね? 目指すは粒あんだけど首都の名前を勝手に変えたら怒られるよ、王女様も来るんだし。
大騒ぎで寝たから寝不足だ、でもこの世界はLvさえ上がれば身体が強くなる。Lv100なんて1週間寝なくたって大丈夫って言うお話も聞いた、お肌に悪そうだし疲れるからしないけど眠い気がするだけで支障は無いはず。
暗闇の中ムリムリ城を出て駆ける、馬か馬車も借りれるんだけど1日くらいなら走った方が早い、Lv100の高速移動力は圧倒的なんだから。何故かLv21の人に置いて行かれるけどあれが可笑しいんであってちゃんと私達は速い! はず?
お姫様コンビにメイドさん付きの23名だ、お姫様コンビもLvは100も無いんだけれど後衛職よりは移動速度が速い。かなりの高Lvだろう。
だから行こう、みんなで、そこで待ってるんだから、粒あんのお饅頭が!
1パーティずつ交代で先行偵察に出てるんだけれど街道沿いは魔物もいないし敵兵にも会わなかった、結構遠い、何せスタート地点が最果ての辺境だ。
「報告~、前方に敵影無し? 町と村は結構あったけど問題は無さそうだよ」
「了解、合流したら次は委員会で先行するね? 指揮は図書委員ちゃんか王女様に任せるね?」
日も登り空もすっかり明るくなり、太陽も高くなってきた。思っていたよりも順調だ、夜までに着けるかな?
遥君が全員の装備に「加速」と「SpEアップ」を付けていてくれたから移動が思いの外に速い、まあ遥君は逃げる事と守ることに主眼を置いて装備を作ってくれているから何気にみんなが足が速い。アンクレットも高速系が付与されているし王女様達も装備しているみたいだ。
「前方 異常無、先行の交代は島崎さん達で良い?」
「行けるわよ、そろそろ王都の勢力圏だけど分散偵察はいらないの?」
ここから先は貴族の領地が密になる、発見されても通り過ぎてしまえば追い付かれる事は先ず無いと思うんだけど……行こう。
「前だけお願い、発見されても追われても無視で良いよ。行っちゃおう」
「了解。出るわね」
使役組が出た、朝は高速移動しながら遥君が用意してくれた携帯食を食べたんだけどお昼はどうしよう? 高速移動女子会が招集された。おむすびと唐揚げさんなら移動しながら食べれるけれど、何で遥君は牛丼を用意して行ったんだろう? 牛丼を頬張りながら高速移動で駆け抜ける乙女って女子力が危ない気がする、もしかして遥君的には牛丼は携帯食だったの? まあ牛丼さんもファーストフードだけど意味が違うよ?
女子会の結果、頬張りながら高速移動で駆け抜けた。女子力は誰も見て無いから大丈夫って言うけどきっと乙女としてはかなり危ない気がする、牛丼立ち食いならギリなんだけど駆けてるんだよ? 高速移動で。
「前方に王都~、でっかいからまだ遠いけど王都~、遥君の気配を探す~?」
夜になり深夜も近づいて来たころにやっと遠目に王都の姿を捉えられた、だってテントで野営するよりも遥君の所に行った方がきっと快適な生活だ。あの大きさ自由自在のテントも有るしアイテム袋に家具まで入れて有ると言う常時引っ越し可能状態の快適生活常習犯だ、だってお風呂も持ち歩いてるんだよ? 3種類も。
「近く気配なし! 散らばる?」
「時間が掛かっても良いからパーティであんまり離れずに王都の周り遠巻きで1周してみよう?」
「「「了解!」」」
みんな遥君が絡むとテンションが上がってる、快適な生活と美味しいご飯と素敵な洋服と衣食住を握られてしまっている。そろそろ本気で使役が危ない!
そして王都の裏手に矗建つ城塞、『御土産屋 王都前支店 みたいな?』! 犯人はこの中にいる! うん間違いない。
そして中を気配探知した娘たちが顔から湯気を噴き出して倒れて行く、あ~深夜だから危ないよ? 良い娘は真似しないでね? 出来ないけどね。
「おいでませ~、的な? って言うか滅茶早くない? 丸1日でって平均時速だと100Kmオーバーで走り出す16の夜? みたいな? でもお土産屋の窓ガラスは割らないでね? ま~中へどうぞ~」
中にはアンジェリカさんが……疲れ切り疲弊しつつ蕩けたような淫靡で妖艶な笑顔で出迎えてくれた、蕩け中だったみたい。今日は透け透けの黒いミニドレスだったみたいだ、もちろんエロだった!
でもアンジェリカさんがおいでおいでって手招きしてるけれどそこは乙女の危機だから行かないからね? だってそのお部屋巨大なベッドしか無いよね? 床一面ベッドオンリーでそのベッドは上がると危険な乙女蹂躙だから呼ばないでね? 乙女にそこは無理なんです!




