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何でお土産屋さんにお饅頭買いに行くのに完全装備なんだろう?


61日目 朝 宿屋 白い変人



 王女様がメイドさんを連れて王都に向かったらしい、夜のうちに領館から姿を消したのだそうだ。


 置手紙にはただ「お世話になりました。 王族に連なる者として我が名を懸けて、必ず王国と辺境を守ります。 シャリセレス・ディー・ディオレール 」ただそれだけでたった2人で戦争を止めに行った。


 領館では急ぎ軍を編成し、早馬で捜索隊を出し、ムリムリ城にも偽迷宮前の検問を配備させている。皆が身を案じ心配して連れ戻そうと警護に駆けつけようと大騒ぎになってる。


 「行っちゃったかー?」


 「行っちゃったねー?」


 「まあ行くよねー?」


 「行くんだよねー。」


 まあ、心配なんだよ?


 「悲惨な事になるねー?」


 「凄惨かもしれないよ?」


 「惨劇には間違いなし?」


 「喜劇の方が心配だねー。」


 もう何回目で何度目で毎度お馴染みの心配だ。


 朝起きると最強の迷宮皇さんと列強の迷宮王さんを連れて強い者苛めの自称最弱の僭称人族の使役者が居なくなっていた。


 きっと王女様の護衛だ。


 この世で最も護衛に付けてはならない不適切極まりない悪鬼羅刹が護衛に就いたんだ。


 守る為なら世界でも滅ぼしちゃいそうな超過剰攻撃力の護衛が3人付いて行ったんだろう。


 その3人は世界だって滅ぼしかねないって言うのに襲う人も災難だ。


 まあそうは言っても結局みんな完全装備は済んでいる、柿崎君達は遥君から巨大な5振りの大剣を貰っていた。看板娘ちゃんに預けて行ったらしい。


 朝一番に柿崎君達に渡していた。「お莫迦な顔した5人組の莫迦に渡して」って言われたらしい、ちゃんと一切の迷い無く柿崎君達に渡していた。


 きっと看板娘ちゃんは「莫迦」って名前で憶えちゃっている。


 バレー部コンビも袋を渡されていた、袋には「生」って書かれている。まあ中身は分かった、ちゃんと内職してから出かけたみたいだ。


 そして王女様の決意の溢れる決死の思いの悲壮な置手紙と違い、こっちは相変わらずの意味不明だった?


 だって「御土産屋さんが儲かりそう? 大儲けだ! お大尽様だ! みたいな?」だった。


 お金を儲ける決意と欲が溢れ決算処分な不相応な置手紙って言うか読んでも意味が分からない時点でもう手紙ですらない謎のメッセージを残して出て行ったみたいだ。これは謎のダイイングメッセージでは無く殺して解決する気満々のデスイングメッセージだ、もうただの犯行予告の確信犯だ。


 「「「はあ~っ、まあ気になるし行こうか?」」」


 「「「だね~。」」」


 まあ行くんだろう、女の子が2人で命を懸けて戦争を止めに行こうと飛び出して行ったんだ、だったらいかない訳が無い。きっと行っている、もういっぱい言いたい事は有るんだけれどこれで行かない遥君なんてそれはそれで嫌なんだ。だったら止められないから私達が行けば良い、その為に戦い続けてなったLv100だ、これでもかと言う位に装備だって武器だって用意して貰っている。


 少なくとも偽迷宮に向かったのは間違いない、通り道はあそこだけだし王女様達だけでは通れないだろう。


 そして遥君の部屋の残っていた証拠品、「辺境名物 迷宮饅頭 みたいな?」とパッケージされたお饅頭。美味しかった、遂に餡子が出来たんだ。


 ちゃんと人数分置いてあるところが確信犯だ、人数分のお茶と湯飲みも用意してあった。


 思わずお茶とお饅頭で寛いで出発が遅れてしまったけれど、でも「みたいな?」は書かなくて良いんじゃないの?


 あの3人がいるんなら焦る必要はないのかも知れない。「戦争迄に追い着けば良い」と、「遥君が危ないのは戦争や人の罠、策略や特殊スキルだ。」と。


 みんなそう言いながらそそくさと用意して宿を出ようとすると食堂に親子丼が用意されていた、茸のお吸い物付きだ。


 遥君が朝ごはん用に作って置いて行ったらしい、いただきます?


 今度こそみんなで出発する、目的地は偽迷宮。


 先行は高速組から8人、後詰が21人で出発する。


 Lv100の移動速度なら1時間と掛からないが無警戒での高速移動は危険だ、普通は高速移動すると気配探知や索敵が間に合わない。探知で見つけた時には出会ってしまう位に移動速度が早過ぎるの、だから充分な安全マージンを取って高速移動する。



 「いないね~」


 「うん、もう偽迷宮に入ってるかも」


 夜のうちに出たのなら王女様と一緒でも偽迷宮に入っていてもおかしくは無いだろう、あの王女様は相当高Lvな筈だ。


 「減速!各自警戒して停止!」


 「「「了解ヤー」」」


 軍だ、多分領主様の軍だけれど警戒は必要だ。


 速度を落として姿を見せながらゆっくりと近づいて行く。


 荷馬車の横にでかでかと「オムイ」と書かれているから領軍みたいだ、だって普通はあんなに大きく派手には書かない。書いても絶対に覚えてもらえないのにまだ頑張ってるんだ、でもそのくらいで覚えて貰えるんなら私達だってプラカードを作って持ち歩くだろう。無理なんです。


 一騎の騎馬がこちらに手を上げながら近づいて来る、あ~また領主様が勝手に単騎駆けしているんだ。後ろから必死で側近の人が駆け付けて来る。


 「オムイ様、お呼び留めして申し訳ありません。実は……」


 事情を話すとオムイ様は破顔して笑い転げていた、もう王国軍の行く末に気付いてしまった様だ。


 「いや、すまない。我等辺境軍のいざこざにまた巻き込んでしまい申し訳ない、だが王女の身だけは心配で早馬で知らせを出させて貰ったのだが……遥君が付いてくれたのか、使役した魔物も連れて。ならば王女の身は安泰だな、だが遥君にこれ以上の迷惑をかけて重荷を背負わせるわけにはいかんのだ。先を急がねばならん、軍には通達してあるので君等はムリムリ城にも自由に入れる、済まんが先に行かせてもらうよ。」


 そう言って駆けだして行った、側近の人もお辞儀するが早いか追いかけて行った。大変そうだ。


 「行っちゃったけどどうするの? 追う? 追い抜いて先に行く?」


 「う~ん、後ろを追走しながら後続を待って合流しちゃおうか?」


 「「「賛成。」」」


 王国軍の本隊は未だついてもいないだろう、あと1週間はかかるはずだ。


 あの砂塵の舞う荒れ地で5人で迎え撃つ気なの? ムリムリ城まで引き込む気なのだろうか? それとも偽迷宮で潰しきる、こっちから出る方が損なはず。そして何所にお土産屋さんを開店しようとしているのか? お饅頭はいくらなの? 1人何個まで売って貰えるんだろう? あれはすっごく美味しかった。


 合流も果たして問題も無くムリムリ城に着いた、私達は先行して偽迷宮を抜けて強攻偵察を行う準備を整える。


 まあ準備ッて、社員証なんだけど。配給されてるの、偽迷宮出入り用の社員証。


 尾行っ娘ちゃん一族にも支給されていて持っているとマスター・ゴーレムさんが誘導してくれる魔石製の社員証。でも「偽迷宮株式会社」って株も公開していないし上場だってしていない怪しい社員証さんだ、どうしても通行手形は嫌だったらしい? 何が違うんだろう?


 そして隊列を組み偽迷宮に入る、中は安全に通れるけど冒険者や兵隊が入ってきていないとは言い切れないから慎重に索敵と気配探知を飛ばしながら進む。


 何故か知らない道や新しい罠が増えている、ちょいちょい改装に来ているみたいだ。


 「滑り台で一気に行こうよー?出口まで?」


 「駄目、行き違っちゃうでしょ、あれは直通なんだから。」


 偽迷宮の辺境側出口には「入口に戻る」と書かれた落とし穴スライダー滑り台がある、王国側まで一気に行けるんだけど地下を通っちゃうから行き違いになると困る。因みにスライムさんの大のお気に入りらしい。女子も何人か滑りたさそうだ、罠なんだよ?


 「ここからは気を付けてね~、罠は作動しないけど油が塗ってある所は滑るからね~、落ちたら真っ裸だよ~」


 「「「嫌だ~」」」


 この迷宮は作動式の罠が無くても悪辣な罠が多い、そして罠に掛かると装備が破壊されて服が溶ける。


 ここに攻め込もうって言う王国軍は本当に勇気があると思う、ここ通るくらいなら普通にダンジョンの攻略した方が絶対に安全だ。だって迷宮王ダンジョンマスターは遥君より常識人で正直者だ、あの悪辣で悪逆で悪徳な人が作った迷宮よりずっと親切設計なんだから。


 「もう隣りのナローギ領まで行っちゃってるのかな?」


 「うーん、遥君達だけならとっくに行ってるんだろうけどどうだろう?」


 もうこの偽迷宮は気配探知が狂う仕掛けがあって面倒だ、一気に抜けたいが足を滑らせると大惨事になってしまう。


 恐らく私達の装備クラスなら「武器装備破壊」される事はまず無いんだけれど万が一で壊れたら大損害だ、服も耐性付きだから大丈夫だと思うんだけど溶けちゃったら乙女が大悲劇だ。慎重に行こう。


 「うわ~リアル、これは攻撃しちゃうよ」


 天井に掛かれた大量の蜘蛛の魔物の絵、あれを攻撃しちゃうと天井が崩落して来る。無駄な攻撃で大損害、そして自滅した気分で心が折れる、悪質だ!


 敢えて少人数で行ったのだから王国側に誘いをかけているのかも知れないから下手には追い付けない、だけどのんびりしていると戦闘が始まっているかもしれない。


 ただ街であらゆることを済ませていた、宿屋の改装も済ませ、武器屋にも雑貨屋にも大量の在庫を置いて行き、あちらこちらに新しい工房やお店を造り、そしてこっそり街の城壁まで強化を済ませていた、辺境の街にやれる事をやり尽くす様に。


 だから気になって追いかけている、何処まで行く気なのだろう? まあ直ぐに帰って来るとしても追いかけるけれど、多分きっと本人は何も考えていないんだけど追いかけないといろいろと心配だ。だって遥君もこの先の王国の動きが読めていなかった、予測不明のままに戦争に雪崩れ込もうとしている。ただ私達には未来の予測も結果も勝ち負けも関係ない、ただ遥君を守りに行く、守らなくても大丈夫かも知れなくても本当に大丈夫じゃ無い時に守れる様に傍にいなければならないの!まだ追い付けていなくても横に並べる様に強くなってきた、それだけを目指して来た!だから今度こそみんなで遥君の隣りに行く。


いつもお読み頂いてありがとうございます。

総合評価を29,000ptも頂きました(予約投稿なので減ってるかもしれませんが)、本当にありがとうございます。

お礼投稿と言いながら微妙な繋の回なのですがもし万が一何かの間違いで御気に入って頂けてお付き合い頂ければ本当に幸いです。ありがとうございました。

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