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きっと観光名所になれば大量に置かしてもらったマッサージチェアーで大儲けだ。


60日目 昼過ぎ 宿屋 白い変人



 新築の宿の中を巡回して内装を手直ししている間もずっと入れ代わり立ち代わりで看板一家に感謝され続けた、言葉の限りを尽くし目には涙を湛えていた、それ程迄に心に傷が残っていたのだ。


 例え生き延び宿を再建し新しい家を持っても昔の思い出を忘れられるはずなんて無い、住み慣れた家も街も仲の良かった隣人達も沢山の友達も皆無くした哀しみと恐怖を忘れる訳なんかない。


 ずっと心の深い所が傷ついていた、そしてそれを経験したから脆さも儚さも知ってしまったのだからあれから1度だって心から安心なんかできた事も無かっただろう。


 だがそんなあなたに御薦めのこの城塞宿! 難攻不落にして常勝無敗で天魔覆滅なインペリアルお宿「白い変人」に恐れるものなど無いのだ! 安心安全安泰のお宿さんだ。まあでも教えていないんだけど最初から宿泊客の常連さんが迷宮皇だのエンペラー・スライムだのと異世界最強級で他の高校生たちもLv100越えのS級冒険者の集団常連連泊客なのだからこの宿ってこの世で一番安全だったんだけど、一度失ってしまったからこそ目に見える安心が欲しかったのだろう。うん、この宿は落とせない。


 失ったものを取り戻してあげる事なんて俺には出来ないけど、失わせないようにする手伝い位なら出来る。それがあの村で教わった事だ、そのくらいしか出来ないのだ。

 

 辺境の沢山の英雄が守り抜いたものを、新たな辺境の勇者たちがその志を受け継ぎ守っていくのだろう。だから何も出来なくてもお手伝いで内職だ、ちっぽけでもできる事はそれくらいなんだから。だからここは落とさせない!


 だが思ったより内装に手間取った、つい調子に乗って家具まで備え付けてしまった。でも白い変人だからやっぱり白で統一したいじゃん? まあホテルってイメージが白だし? それに何と言っても広く見えて清潔感がある、あとインテリアも引き立つのだ! もうロビーにはミロのヴィーナスとサモトラケのニケ、受付には巨大なひまわりの絵を連画で並べ、廊下もミュージアム状態だ、元の世界でバレたら大事だ! でもツタンカーメンは不評だったから引っ込めた、どうも魔物に見えちゃうらしい? そりゃそうだよ! 


 あと異世界は刺激に弱い様だ、裸婦画も裸婦像も駄目らしい。ミロのヴィーナスもトップレスから着衣になられてちょっと寂しい、ヴィーナスさんは誕生できなかった。


 まったくこの宿では毎夜この美術品のどれよりも芸術的な美の化身が超刺激的に刺激されて刺したり激したりで男子高校生的な欲望を刺激して刺激し返していると言うのに軟弱な事だ、俺が最も全力を尽くしたジャン・ロレンツォ・ベルニーニの彫刻は全部駄目だしされてしまったよ? 芸術だよ? 本当だよ?


 だがアントニオ・コラディーニの「ヴェールに包まれた謙遜」だけは着衣だと声を大にして言いたい! 着てるんだよ? 大丈夫だよ? 駄目なの? 滅茶頑張ったんだよ? 


 せっかく造った美術品の7割を引っ込めて、適度に配置して行く。


 そしてインペリアルルームだけは本気出したよ、これは皇族でもお迎えできるレベルだろう、絶対的な異世界最高峰だろう。ただ王国だから「インペリアル」が元迷宮皇と元スライムエンペラーの2人だけだったりする、後は格下のゴブキングとかコボキングとか王族とかなんだよ? 泊まれないんだよ?


 実はインペリアルホテル何て泊った事は無いからよく知らない、って言うか普通泊まれない。でもホテル インペリアルのラグジュアリー コレクションのパクリの寄せ集めなのだ、だからきっとインペリアルな筈だろう? だってホテルに泊った事処か入った事が無いんだよ? ラブホすら無いんだよ? うん、一人で行かないよ? 普通?


 「う~ん? ちょっと物足りない様な気もするけどオーナー的に決める事だから他に要望があったら言ってね? 後今借り切ってる所は別館ぽく分離してるけど言ってくれたら普通に繋げて内装も統一するからね? 何か要望は無い? 武装もしちゃう?」


 看板一族が全員で口を開いたまま首を横に振る? 要望は無いみたいだ、でも接客から管理運営をするんだからちゃんと厳しく要望を出さないと駄目なんだが声が出ないようだ? ずっと一族で口を開けたまま固まっている? ロビーを見ては固まり、展望台に上れば固まり、魔動エレベータでも固まっていた? インペリアルルームも大浴場も訓練場までも固まっていた、ずっと無言で口を開けたまま付いて来る一族って何だろう? 身体が固いのだろうか? 異世界にもラジオ体操を普及させなければならないのだろうか? でもラジオ無いんだよ。


 外に出てみると凄い人だかりだった、この街初の8階建てに展望台付き、しかもガラス自体が珍しいのに全室にふんだんに使い各室に1枚物の大ガラスも設置なのだから超豪華お宿だろう。


 看板一家も大騒ぎの街の人たちに大わらわで説明している、きっと観光名所になるんだろう。そしてマッサージチェアーも大量に置かしてもらったから大儲けだろう。



 中途半端に時間が有るので武器屋と言うか鍛冶屋と言うか禿の髭のおっちゃんの鍛冶場に寄ってみる。


 まさに鬼気迫る覇気だ、目がヤバい。頭は禿だ! しかも髭だ!


 渾身に鉄を打ちまた鉄を打ちそして鉄を打つ、ただの単純作業の様に精巧に精密に槌で打ち鉄の状態を見極め判断してまた熱しては鉄を打つ。


 もしこれが単純作業に見える人間はきっと一度も真剣に何かを作り上げた事が無いのだろう、これこそが神技を目指す者だ、頂を超えようとする者だ、真剣に生きる本当の仕事師だ、何かを造るとはこういう事だ。あ~俺は今日もブラか~、いやあれってマジ真剣に作らないとまじ難しいんだよ? まあ鍛冶場まで来てブラは作らなくても良いだろう、1名ほどワイヤーが必要かもしれないが今の所は布だけで支え切れたのだ。森の洞窟(我が家)の庭園に橋を架けるよりもはるかに難しかったんだよ? あれは構造学の神秘だった! 


 まあ鍛冶場だからブラは良い、おっちゃんに用が有るだけだ。


 「悪いな。待ったか? 金は用意してあるし売り物も買うぞ、お前さんのおかげで大繁盛だよ。それに幾ら造っても尽きない程の鉄がある、俺の剣を欲しがって貰えるんだ。何でも言ってくれ、何でもするぞ。」


 おっちゃんにデレられるとかいらないんだよ? 禿の髭のおっちゃんの需要は無い! 絶対に許さない! まあロリッ娘ドワーフだったら需要って言うかオタ達が通い詰めるだろう、要らない武器までコンプするに違いない! 握手券とか付けてぼったくれそうだがおっちゃんでは無理だろう。


 「いや、注文聞きに来たんだよ? 魔石に魔石粉に魔石液、付与済みでも付与前でも注文聞くよ~? 付与の指定だって効果だってオーダーで聞くよ~? だっているんだよね? だってこれは注文された売り物だけど商売物じゃ無いんだよね、だって商売なんかじゃ此処までの物は出来ないんだから? 死ぬ気で造った最高傑作を超えようと足掻いてる物だよね? もうこれ以上誰も死なせたくなくてこんなに必死で作り上げてそれでも足りないった足掻いてるんだよね? だから売るよ? 何が欲しいの? 何でも造るよ? だってまだ満足して無いんだよね? そりゃ~誰にも負けない武器や防具なんて作れる訳が無いんだよ、当たり前だよ、不可能だよ、でも作るんでしょ? 出来なくても諦めないんでしょ? だからいるんだよね? だから売りに来たんだよ? みたいな?」


 最低限兵隊さんたちの装備には高い毒耐性や状態異常耐性は付けたいだろう、付けられるものならありとあらゆる最高の効果も防備を付けたいんだろう。


 それが不可能でも少しでも強く少しでも丈夫にほんの僅かでも生き残れる可能性を極僅かにでも上げられるように鍛え上げ続けている、だからいるんだろう。


 だから売りに来たんだよ? 死なせないために死ぬ気で作って死ぬ気で守ろうとしているんだから手伝い位するんだよ? だって儲かるし? 


 さて、武器屋でも儲かったし雑貨屋は……よると追加注文が来そうだから止めといて、あれっ?メイドっ娘が走っている、でもエロドレスじゃない普通の服だ。まったくメイドの癖に1度もメイド服を着ない何てメイドさんに対する冒涜なんだよ? いや本職のメイドさんなんだけどさー? だが危ない立場だと言うのに普通の服って不用心すぎる! まったく外出するなら装備位しようよ? あのエロドレスだったら上層の魔物の攻撃位なら無効化や軽減できると言うのに、まあアレで外を歩いたら別の問題って言うか風紀的問題が大発生で兵隊さんに捕まるんだろうけど。


 「って言う訳でメイド服を超特急で超特級に作って来たんだよ、各種耐性付与、加速や身体能力強化に格闘にも効果が付いててAll20%アップに+でDEF付きだからあのエロドレスの近接戦用のメイド服? まあエロだけど? まあ護身用だし、エロじゃ無いと作る楽しみが半減って言うか激減? みたいな?」


 各種隠し武器や防具も仕込んである、ついに「収納」も付与できた。そしてこのメイドっ娘は強い、だからアサシン向けに特化した装備だ! エロいけど!


 勿論の事だが「収納」はミニスカートの中から取り出すんだよ? うん、素敵だ。予備の劣化版「鬼神のツヴァイヘンダー」も収納しておいたからエロメイド服のミニスカの下から2メートルの大剣が出て来るとか胸熱だ! 2メートルの大剣を持ったエロメイドさんだけでも来るものがある! 衝動に任せて作ってしまったがこれは良い物だ。エロいし。


 だってこの肩出しの背中だしの胸元無防備で完全防備なエロメイドな暗殺者アサシンに襲われれば絶対ただでは済まないだろう! うん、俺が襲われたらただ事で無く大変な事になってそのけしからんお臍から縦に空いたスリットの隙間にそれはもう大変に暗殺って言うかアンアン殺っちゃうって言うかきっと大変なんだよ? それはエプロンドレス部分の下は裸エプロン? って言う位に無防備だが魔力による完全防備だし当然だが網ニーソフリル付も装備されていて肩出しなのにフリル付きのロンググローブなのも大変な事なのだ! うん、襲われたい!


 「私の一命までお許しになって頂いた上にこんな大変に高価な装備を頂いて感謝の念が……感謝の念がエロさで何処かに行ってしまいましたけど、何でこんな所が開いちゃうんです? ここは開いてはいけない処だと思いますが何で思いっきり開いているんです? しかもドレスに続きこのエロさは何なんです? これ普通に恥ずかしくて何か隠す気無いのに覗けそうって煽っていませんか? これを来てメイドって一体メイドのお仕事をどんなお仕事だと思ったらこんなデザインになるんでしょうか、私は何で着ちゃったんでしょう? そして何でガン見してるんですか! そして誰がこんなエロいメイド服でお仕えさせて姫様にはあんなエロドレス着せようとしてるのですか? 言語道断です! 不敬罪です! 極刑に値します! 王国引き回しです!…(以下怒号)」 

 

 「で、王女っ娘が動く気なの? 恐らく貴族軍って王女っ娘狙ってるよ? 今動くと混乱を良い事に確実に狙われるし、罠だって張られてるかもしれないよ? メリお父ーさんも止めてるんだよね? 何をしようって言うの、もう止められる段階って跳び越えてない? しかもたった2人で戦争を止めに行く気なの? 正気?」


 街中を走り回って旅の支度を買い、武器や薬やアイテムを掻き集めて戦える準備をしている。


 「姫が止めると言うなら私は尽き従い最後までお守りするだけです、だから例えどれ程エロくても装備はありがたく頂きます。例え破廉恥な迄にエロくてもこれで私は姫様の剣になり盾になれます、ありがとうございました。」


 まったくまだ諦めていない、王国と辺境を守る気だ。


 戦争を止める事に命を懸けている、たった2人で止める気だ。


 王家どころか王国や辺境まで背負い込んだらそんなの潰れるに決まっている、そして押し潰されたのにまだ抱えたままで立ち上がろうとしている。


 自分の命を捨てて死にに来た大馬鹿王女様は、それでも諦めない大莫迦王女っ娘だったようだ。


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