もうその設定が聞いただけで心に痛みが走る痛烈な駄目な奴だ。
60日目 昼 宿屋 白い変人
宿で一休みしながら50階層の迷宮王「ナイトメア・ゴート Lv100」のドロップ品を眺める、「夢魔の眼帯 MnD InT 50%アップ 魔眼強化(極) 幻術 催眠 魅了 傀儡 記憶改変 意識支配 精神汚染 」といろいろ意味深に好感度に駄目な奴だった!
滅茶さり気なく「魅了」と「傀儡」が入っているうえに、「記憶改変」とか「意識支配」なんて極悪な効果に「精神汚染」のとどめ付きだ。
そして何よりも恐ろしいのは……俺が身に着けると眼帯をした魔眼持ちと言う恐るべき設定だっ! もう痛い、聞いただけで痛い! しかも黒革に宝石が埋め込まれているこのデザイン、これは重篤な厨二病患者ですら思わずドン引いてしまう位の破壊力が軽くある、だってこの眼帯付けてる人に出会ったら絶対に誰もが皆そそくさと目を逸らして早歩き始めちゃうだろう。
うん、これはとても痛いんだよ? なんか想像しただけでも心の奥底まで痛みが走るくらいの激しすぎる痛みが激痛で悲痛で痛烈な痛打があるんだよ。うん、これは駄目な奴だ。
それに「魔眼強化(極)」って魔眼なんて俺しか持って無いよ? だって普及してたら大変だよ! まあ「魅了」に「傀儡」がある時点で封印だ、間違いなしで下種ってる! 売るのも以ての外で絶対に外には出せないし、大体これは女子達には曰く付きの悪夢だ。外道戦記まっしぐらな最低最悪な中2すらも泣き出す厨二アイテムグランプリ受賞決定間違いなしな駄目な奴だった!
だが効果増大に(極)があったのは発見だろう、(極)なのだからこれが最大級の筈だ、これで後から(改)とか(真)とか(絶)とか出て来たらもう意味不明まっしぐらなのだから最後の筈だ。
大体、眼帯なんていう視界を塞ぐものを、戦闘職の人間が装備なんかできない。これは「魔眼」の極みの為に視界を半分捨てるデメリット付きアイテムだ、まあ「羅神眼」が有れば眼帯をしてても普通に見えるのは内緒だ。目隠しに意味が無いってバレたら委員長様の鞭の連打が襲ってくる! まして、見てないんだけど、昨晩の後だから容赦なくマジ切れな膀胱障害が起きそうだ! うん、それはそれで新たな属性が目覚めそうでヤバい!
しかしこれで4つ目の封印アイテムだ、数が揃うと風評だけで俺の好感度さんへの破壊力が凄まじい。だって「テンプテーション・シャツ」で誘惑して「プロメテウスの鎖」で無理矢理縛り上げて「服従の首飾り」で強制奴隷状態にして「夢魔の眼帯」で魅了して傀儡にしちゃって意識支配しちゃうの?
それ何処の外道な悪党な卑劣漢さん何でしょうか? しかもそれで「使役」したら完全支配だよ! 最悪だ! 最低下劣で最強の好感度ダウンバーストで地面に叩きつけられて破片だけが舞い上がっちゃうよ!
これは封印しないと好感度さんが死滅して全次元からの完全消滅を果たしてしまう、これもアイテム袋の最奥に隠しておこう。
女子さん達からすればこんな物が有る世界なんて、怖くていつも怯えて生きて行かないといけなくなる。これは存在自体が存在させてはいけないものだ。
しかし毎回毎回どうしてこの世に存在させてはいけない様な存在自体が好感度さん消滅兵器みたいなのが次々と続々と迷わず俺の下に集まって来るんだろう? やはり異世界の狙いは俺の好感度さんなのか! 殺らせはせん! 殺らせはせんぞー! だってその好感度さんは異性の好感度さんなのだ! 絶賛不足中で欠乏してて渇望中なんだ、ずっと切望してるんだよ?
まったくただの「悪夢」装備なら文化部っ娘の装備に良かったのにやり過ぎなんだよ? 使えないし使われても困る、でも文化部っ娘達ってゴスロリドレスに眼帯とか似合いそうだ!
(プルプル)
看板娘と尾行っ娘と遊んでいたスライムさんも帰って来た見たいだしどうしよう? 95階層から始めるのか? それともお昼の2回戦を始めるのか?
くっ、2回戦は無理そうだ、甲冑委員長さんがモーニングスターを取り出した! まだ持ってたの? いや、だって新作のブレザーを着せてたら俺の魂の男子高校生が粗ぶってお暴れになって大暴れだったんだよ? やはりタータンチェックのミニスカートが短すぎたのだ! 知ってて作ったんだけどとっても短かったのだ! うん、それはもう暴れちゃったんだよ?
滅多に着てる事は無いんだけれど女子達は当然教室から制服で転移して来たから当然制服を持っている、そしてそれは当然みんなお揃いの制服だ。偶に誰かが着ていると甲冑委員長さんがじっと見てたりするんだよ? 前にもお揃いのジャージを作ってあげたら物凄い喜びようで今でもとっても大事にしていたりする、宝物みたいだ。だから制服だ! 上履きも作ってみた! みんなとお揃いの学校鞄も学校指定のドラムバックも作ってみたがドラムバックだけは不完全な出来だった、ロゴが思い出せないんだよ? 何て名前だったっけ、あの高校? まあ喜んでいるから大丈夫だろう。
そう言えば裏の土地ってもう空いたのかな~隣りもその裏ももう空いてたみたいなんだけどどうなんだろう? 現在宿屋の白い変人の1棟は貸し切り状態だ、女子達もそろそろ個室か2人部屋にでも移りたいだろうが部屋が足りていない。そして食堂も好き勝手使っているから貸し切り料金で借り切りになったままだったりするんだが、この好景気で宿が足りていないしここの料理は人気もある、宿だって冒険者ギルドお勧めだったのだ。
ならば改築なのだが土地が狭すぎた、隣りと裏2軒は新しい家を用意して移って貰ったが裏はお店屋さんだったので時間が掛かっていた。だが一昨日くらいから荷物は運びだされていたからそろそろだと思うんだけどどうなんだろう?
看板娘のお父さんとお母さんには話は付けて有る、何か滅茶遠慮していたが宿代が無いから早く作って建築料払いにしないと不味い! だって大通りで尾行っ娘の気配がした、あれはお大尽様ツアーがバレたに違いない! 急がねば!
「看板娘~? またの名を看板庶民~? まあ宿屋の名も無き娘っ子よ、裏のお店屋さんはもう空いたの? あれって何のお店だったの? 開いてるところ見た事無いんだけど年中閉店セールでずっと閉まってるセール中だったの? そりゃ~ずっと閉めてたら売れないから店じまいできないんだよ? マジで」
「あっ遥さん。さっき引っ越しが終わったってご挨拶に来られてましたよ、凄く良い家を紹介して貰ったって喜んでお礼を言っていましたよ? あと、あそこはお店屋さんじゃ無くて、農器具の工房さんで基本村なんかに巡回営業で閉まってるんですよ。何か遥さんに何処かの村で見た事も無い農具の作り方を教わったって、いつも大喜びで言ってましたけど知らなかったんですか?」
そう言えば行く先々の村で何時も合う農具屋のおっさんが居ていつも普通に話しかけて来るから普通に相手して、ついでに未だ作られていない千石どおしやドラム型唐みとか千歯扱きとかの農具や備中ぐわとかへ改良の仕方を教えると大喜びで農作物と大量のお小遣をくれるおっさんが居た。勿論のことだがおっさんだから忘れてた。
やたら話しかけて来ると思ったら裏の店はあのおっさんの店だったみたいだ? まあおっさんだから用は無い。だってちょうど歴史の授業の江戸時代の農業やってたから覚えてただけだし? 召喚されたからそれ以降は謎だ、明治の産業革命までしか分からない。まあオタ達が覚えてるだろう、作らせるとヤバいけど。奴らは既に蒸気機関まで行っているのだ、日本刀造ろうとして!
魔力も充分に回復しているし設計図は以前から完成している、今の宿屋を包み込む設計だからこのまま始められる。そしてこっちの棟だけは借り切ったままにしたいからあまり弄らずに広く改装と増築だけにしておこう、流石にホットパンツに網タイツやらミニスカエロストッキングやら生足さんやらのJK達がうろつく危ない食堂は一般には開放出来ないだろう。うん、お客は沢山来そうだな?
そして今は鉄骨が組める! インペリアルお宿だ! だって元だけど迷宮皇とエンペラー・スライムさんの定宿なのだ!
魔動エレベーターも設計済みで8階までなら確実に行ける。だが9階に展望台付き食堂で地下には大浴場と訓練場完備も良いような気もするし、お部屋数は満載だからスイート用の階も作っちゃおうかな? だってスウィートルームって言いにくいよね? いや寧ろインペリアルルームだろうか、でも、ここって王国だから王様しかいないしインペリアルだと皇級の魔物しか泊まれないんだけど良いのだろうか? まあ今も2人いるから良いのだろう。
そして名が残る──この街の、この辺境で最も有名なお宿として。そう「白い変人」の名が辺境や王国に刻み付けられるのだ! まあ看板一家も同じ街から逃げた人々もずっと語り継いでいる、決して消したくないのだろう、自分達を救い命を落とした恩人の名を。でも名前分からないからって綽名が白い変人って、それ本人は喜ぶのだろうか?
隣りや裏の空き家はバラしながら材料にするからこのまま行こう、建物と大地に魔力を注ぎ込む。
大地に浸透する様に魔力を通して地面と土を掌握して馴染ませる、そして捏ね上げながら垂直に伸びて行き壁と柱に錬成し、捏ねて混ぜて固めて造り繋ぎ支えて積み重ねてまた支える、全ての力が垂直に落ちる様に揃えて並べて構築しながら組み立てる。
繰り返しては再設計で補強して組み上げて造り上げる、強く頑丈に丈夫で長持ち? みたいな?
しかしどれだけ綿密に設計を繰り返しても誤差は出るものだ、やはり8階で止めるべきだった。地下に造った岩盤に乗る様に支えたんだけれど思ったより重心が高い? やっぱり展望台が欲張り過ぎたのだろうか?
だって展望台なら外が見えないと台無しだ、でも吹きっ晒しは寒い。そして突風が吹き荒ぶ吹きっ晒しレストランは料理が冷めやすそうだし、油断すると飛んでいきかねない。
そしてまだガラス工房も稼働を始めたばかりで量産よりも練習と研究が重視で進んでいるから未だガラスが普及していない、だからこそ売りになるのだが……重かった?
魔物対策に厚く作り過ぎたのだろうか、それとも全室にガラス窓を付けたのが拙かったのか計算よりも重くしかも腰高な重心点になってしまった、下の壁を厚くして誤魔化そう! 防音対策にもなる筈だ! そうだ、そうに違いないからそうしよう。
完成したが1~2階は石壁造りって言うか石垣っぽくなってしまったがまあお洒落だから良いだろう? うん、オークキングでも壊せないな、難攻不落な常勝無敗な宿になった様だ。
完成したインペリアルお宿を街の人たちも見に来ている、看板一家も出て来たようで口を開けて見上げて眺めている?
そして看板一家が泣いている、看板娘もその両親もおじいさんやおばあさんまで泣いている。
きっと昔を思い出しているのかもしれないな、あの時にこの壁が在れば守れたんだろうと、そうすれば白い変人も街の人も避難して死なずに済んだかもしれないと。
沢山の者や物を無くし亡くして何もかも失って、それでも立ち上がって新しい宿を再開した。そして今、もう失われる事の無い不落の城塞宿が出来上がったのだ! だから今度こそ家族だって宿泊客だって、逃げ込んで来た街の人だって守れる、今度こそ守れるのだ。よし、あとで武装も追加しよう!
それほどまでに頑強に丈夫に造った。だってここが守られなければ嘘になる、だってこの宿屋の名前は街を守り抜き命を落とした英雄?の名「白い変人」なのだから。
そしてしっかりと造ったからこれでツケは延長してもらえるだろう、喜んでるから1か月くらいは宿代をまけて貰えるかもしれない? うん、もしかするとお風呂代だってサービスして貰えるかも? みたいな?