あれはスライムさんでは無かったがスライムさんが言っていた2人のお風呂友達が誰かは分かった。
58日目 夜 宿屋 白い変人
試練の時は来た。試練は此処に至り、試練は訪れたのだ。
『心を虚しうせよ。』
禅の心、そして「致虚極、守靜篤。萬物並作、吾以觀復。」老子の言葉にもある。
心を虚しうせし事を極め尽くし、
心の静やかさを篤と守る。
あらゆる事が一斉に起きようとも、
それぞれが根源へと復ると知る。
どれ程の凄まじき驚愕の仰天な脅威にも動かない不動の心。
いや?驚愕の仰天な脅威なんだよ?もう何て言うか天変地異?みたいな?
『明鏡止水。』
心を水に映し心を見つめるのだ、さすれば水は時と共に停止し鏡の様に明らかに己が心を映し出してくれるのだ。
そう、不惑に心を止め只在るがままを受け入れる。
受け入れきれそうに無いんだよ?これでも未だ足りないと言うのか!
いや惑っちゃ駄目だ、惑っちゃ駄目だ、惑っちゃ駄目なんだよ。虚しくするのだ!
静やかな心で包み確かめ受け止めるのだったら受け止めるのだ、零れそうだけど受け止めるのだ。
心を乱さずに只在りのままを見たら発狂するんだろう、心を動かさない前に動かしたら爆発の危機なんだよ?
或るままに触れて包み思ひ測る、って言うか重いでかい柔らかいって心を見つめるのだ、其れは見ちゃ駄目だ!
この位なのか、適当とは適切に当てねばならない、良い加減とは加える事も無く減らす事も要らない最も良い所なのだ。この位?
(ぽよん。)
返事はあったが何て言っているかは分からない、だってスライムさんじゃ無いんだよ?今のは?
抑え付けずに持ち上げる様に包み込みその方向を分解して分散させる、ちょっとキツイ?
(ぷよん。)
いや、分からないんだよ?って言うか分かったら大変な事になるんだよ!あれはお話してるんじゃないんだ!そう、思わず返事しそうになっちゃったよ。
問題は動作だ、重心点が無いのだから動きの幅自体を予測し抑え収める必要がある。
だがこの危険物を揺らす何て恐ろしい事は出来る筈も無いだろう、上に吊り左右から挟み込む様に持ち上げるしか無いのだろう。
そして圧縮されながら変形し融合する事無く重なり合う、巨大過ぎるその重量も質量も内包させたままで固定し切らない様にまとめ圧縮して行く。
(むにょん?)
あれ?疑問形だった?いや駄目だって、それと会話できたら色々終わる!心を空にし雑念を捨て去り魂を虚ろい柵や重いから解き放つのだ。
(ぷり~ん!)
えっ?プリン食べたいのって違うよ!それスライムさんじゃ無いから食べないよ!食べたら吃驚処か大変な問題発生だよ!あ、あれにプリンを……
駄目だ。心は無なのだ、思いこそが心を曇らせる、まあ重いから苦労してるんだけど無心に邪念を捨て気を静める。でも無邪気にあれと戯れると全く無邪気じゃ無い事が起るのだ!
だが最後の声は機嫌良さそうだったからこれで良いのかな?良いみたいだが……ヤバい!会話ができ始めちゃってるの?あれ心の声とかそんなんじゃ無いんだからね?会話してたら絶対に大変な変態な変人だろう。
「これで宜しいでしょうか的な一寸動いて試してみて欲しい様な欲しく無い様な動かれたらヤバいけど動かぬ心が大切なんだよ?みたいな?」
(ぽよよ~ん!)
良かったみたいだ……って誰が返事したの!ちゃんと返事しようよ!って言うかそっちが本体だったの?どっちが?いや違うから、本体って言うか本人さんまだ確認中なんだよ、俺は誰と会話してるんだろう?
「うん。すっごく良いよ~、楽になったし動き易いよ~。これ元の世界のオーダーメード物より快適だよ~っ!後はデザインだけお願いね~っ。」
マジですか?俺その着用済みを持って深夜に独りで改良するの?男子高校生が着用済みの生ブラジャーさんを持っとくの?それは一体全体何てファンタジーなのだろう?どう考えても異世界転移よりよっぽど凄まじいファンタジーなんだよ?もうファンタジックに着用済み生ブラジャーを持った男子高校生が深夜に独りで異世界に旅立ちそうなんだよー!いや、ここ異世界なんだけどね?
まあでも確かにこの世の全ての物は、つまり万物は機能性と装飾性が鬩ぎ合い融合し一体化して初めて正しい形に落とし込まれるものだ。まあ分かり易く言うと男子高校生に深夜に独りで着用済み生ブラジャーにレースとか付けろと?ただこの破壊力はハーフカップで支え切る事は出来ないだろう、ボディストラップも最低限の幅は譲れない、後をクロスにして重心を寄せて上げる手も有るには有るがもう1回採寸したら俺は死ぬだろう、きっと心より先に魂が空になるだろう。ならば最低限デザイン性を上げて後はレースで装飾しながら補強するしかないだろう。しちゃうのか~。
あの狂乱の暴走状態の副委員長Bさんを止める為に使った最期の手段。それは封印されし禁断の魔法の言葉(ゴニョゴニョ。)だった。
「落ち着いてって言っても顔から全身蟲汁ぶっかけ状態で落着いてたらそっちの方が怖いんだけどそろそろオタ達が焼けちゃうから落ち着いてね?まあオタ達は焼けても良いんだけどオタが焼けて結界が解けちゃったらみんな火炙りで夏が厚いから落ち着いてね?みたいな?」
もう一刻の猶予も無い。背に腹は代えられない極限の状態だったのだ。
「帰ったらブラジャー作ってあげるから帰ろうね~? もうオーダーメイドのレース付きブラさんだよ~?だから帰ろうね~? でも帰る前に蟲汁洗おうね?って言うか顔から垂れてるんだよ? なんかもう蟲汁が糸引いてて色々ヤバいからお顔洗おうね?はいお湯だよ~、みたいな~。」
まあ、異世界に来てからずーっとブラジャーに困っていたらしい、そして態々作った服飾工房に通っても解決できなかったのだ。
甲冑委員長さんからも再三作ってやれと言われてはいたのだ、女子には重大な問題らしいが男子高校生にだって十代で重大な悶大だよ?そして窮余の策で作成した魔力成型スポーツブラでも支え切れなかった、中で暴れて動いてしまうんだそーだ……そんな事男子高校生に言われても色々な方面でとても困るんだよ、かなりすごくマジで。
あの時の一言「帰ったらブラジャー作ってあげるから帰ろうね~」も問題発言と言えば充分問題発言だったのだが、「あとが大変だ……。」とか思いはしたがマジ大変な思いで大変な作業でそしてやっぱり男子高校生的に大変だった、そして今現在も男子高校生的に大変な現状な状態の状況で非常事態なのだ。
しかしここまで設計がややこしいものだとは思いもしなかった、重心と内容物が動くものを抑え付けずに固定するような技術なんて普通無いだろう、しかもその重量を分散させつつもその支点部分が可動してしまうから設計自体のしようが無い。まさか「至考」さんで計算しきれないとは思ってもいなかったから大苦戦だったよ!
言っておくがちゃんと甲冑委員長さんとスライムさんの見張り付きだからね?疾しい事は無いんだよ?勿論やらしい事は考え無かったと言ったら嘘偽り無く申し開いちゃう位に男子高校生的なファンタジーな世界をファンタジックに大冒険だったのだがちゃんと真面目に作り上げたんだよ。
ちゃんと目隠しして貰って「魔手」さんで作業したから触って無いんだよ、触れてないからセーフだよ、つい魔手さんが魔が差したり手が滑ったりで撫でたり揉んだり突いたりと言った諸所の問題も乗り越えて完成したのだ!ただ甲冑委員長さん手で目隠ししてるのにちょいちょい指に隙間開けるの止めてね?それと副委員長Bさんも隙間から目が合ってるのに微笑まないでね?「あ~ん。」とか言うのも止めてね? あとスライムさんは寝てるけどまあいいや?
「じゃ~下もお揃いでお願いね~っ、分からなかったら採寸に呼んでね~っ。楽しみ~っ、有難う遥くん。」
(パタン。)
ご機嫌で帰っていった。ルンルンだった。
そして俺は下も作るらしい。下って下だよね?下を採寸したら魂までが灰燼と帰すだろう、もう既に真っ白に燃え尽きてるし? 俺もそろそろスキル「復活」が取れそうな気がするんだよ? もう「再生」と「復活」揃ったら人族がヤバいと思うんだよね?
そしてこの事件は近い内に絶対に女子達にバレるんだろう、だって女子って毎晩一緒にお風呂女子会とかしてるし委員会もみんな相部屋だよ? そして甲冑委員長さんも欲しがるから作ったんだけど甲冑委員長さんこそが絶対に見せびらかして自慢する常習犯さんなんだよ。……あと19人もいる。
夜なべした。そして頑張った、だって遂に甲冑委員長さんに上下お揃いにセクシーランジェリーにガーターストッキングが揃ってしまったのだ! 頑張ったよ?
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