人の限界を超えるって言うか人間自体を辞めてしまっているからうっとうしい。
58日目 昼過ぎ ダンジョン 1F
「ウォールラックでディスプレイコーナーを付けたい気もするんだけど、あえて壁面のまま残して開放感のある空間を演出?みたいな?」
(ポヨポヨ。)(ウンウン。)
やっぱりそうか~。だったらその向こう側から書架を置いてって……本が無い。集めてはいるんだが20冊くらいしかない、しかも半分以上は禁書らしい。インテリア物の椅子を飾っても面白いかも知れないが、それならいっそカウンターも付けてってエントランスで寛いでどうするんだよ?それリビングまで辿り着けないよ!
「でも1Fなんだから天井は高くしたいよね~?岩山の感じから言って20メートルは行ける?天窓も付けたいし、明り取りも兼ねられるよ。キャットウォークつけてもお洒落じゃ無い?お掃除の時も便利だよ?」
(ポヨポヨ。)(ウンウン。)
そうだよね~。どうしてもダンジョン内は暗くなりやすいのだから1Fは明るく開放的な雰囲気で、下層をシックにして行ってメリハリを付けたいところだ。間接照明でライトアップはもっと下層からだな、まずはフロアー自体を明るい色で統一して明るさと採光で光を満たす設計に……
「おーい。戦闘中なんだからね~?もう終わりそうだけど戦闘中だよ~?何で3人で座り込んで設計図書き始めてるの~?迷宮踏破中だよ~、覚えてる~?」
だって「グール Lv1」の大集団とか1人で瞬殺できるよね?
だってLv100の上昇値は凄まじい。完全に別物の強さだ、人間としての上限を超えてしまっている。一部は人間自体を辞めてしまっている、スキルも無いのに壁を走るな!しかもグールは歩いてるんだから床を走れ!天井も走るな!壁を汚すな!あ~うっとうしい。
Lv100にとってはもうダンジョンの1階層のLv1の魔物の群れ何て普段着どころか真っ裸でも平気だろう、武器すらいらない。もう裸族っ娘無双だよ。
脱ぎそうだ。お客様をお迎えする1Fのリビングには出入り禁止にしよう。
ぎょぎょっ娘と一緒に下層に大浴場かプールでも作って放り込んでおこう、喜ぶだろう。
きっと泳ぎたいだろう。ずっとずっと毎日毎日泳いでいたんだから、本当ならまだ泳ぎ続けていたはずなんだから。
だって学校では泳いでいる方が普通なくらいに水の中にいた、これからもずっとそうだろうと思っていただろう。
国際大会に出て強化選手にまでなった裸族っ娘、そして無名の一般選手だったぎょぎょっ娘。だがぎょぎょっ娘の方が指導者なのだ。
ただ体育選手の身体を持って生まれた裸族っ娘の方が速いだけで、本当に巧いのはぎょぎょっ娘の方なのだ。肉体能力が無いだけで本当に泳ぐのが好きで巧いのはぎょぎょっ娘だったりする。
だから裸族っ娘はぎょぎょっ娘に指導を受け、手本にし、憧れて目指したのはぎょぎょっ娘の美しい泳法だったのだ。だから指導者もいない学校に突然裸族っ娘なんて無名の代表選手が現れたのだ。そして代表選手にまでなった今でもぎょぎょっ娘に憧れて目指し続けていたんだ。
きっとずっとずっと2人で泳ぎ続けていたはずだった、きっと今でも泳いでいたはずだったのだ。
何時か絶対にプールを作ってあげよう!そして入場料をぼったくろう!いや、造っても良かったんだけどさー?でもそれって絶対に水着の注文が俺に来るんだよねー?って言うかもう既に裸族っ娘からスク水の注文が2人分来てるんだよ、しかし何故競泳水着じゃ無くてスク水なの?俺の好感度さんへの罠なの?だって深夜に部屋で男子高校生が独りでスク水作ってるって事案じゃん?スク水を制作している男子高校生ってヤバくない?特に好感度的に?
まあでもあの2人の事考えたら作っても良いかなとも思ってるんだよ?でも2人で終わるとは思えない。終わら無い自信がある、まあ、甲冑委員長さんのは作るだろう、作るに決まってる、当然だ。問題は絶対に甲冑委員長さんが見せびらかした後にやってくる怒涛の注文の嵐だ、まあ注文は良いんだよ。男子高校生にとっての真の地獄は採寸なんだよ!もう血の涙が出るくらいの生殺し感がごろごろ感じられて大変な欲望が渦潮で渦巻いて巻き巻きで迸って先走りそうで凄いんだよいろいろとこう男子高校生的に?マジで?
あれこそが真の地獄だ。
前回の大まかな採寸ですら3日以上悶々で(モンモン。)とか言い出しそうなくらいに悶々だったのだ、苦しんだのだ!甲冑委員長さんも大変だっただろう、何か煽ってた気もするけど?だが下着と水着はヤバいのだ、だってあれは服の上からでは採寸できない、着せてから調整も必要になるのだろう。無理です、死にます、それは「湯煙男子高校生悶絶殺人事件!女性ものの下着とスクール水着の隠された謎、犯人は男子高校生だった!」って言う位にヤバ過ぎなんだよ。タイトルに犯人書いてあるからミステリーですら無い位にヤバい。無理だよ。だって男子高校生何だよ?
「おーい、行くよー?下に降りるよー?何でダンジョンの改装に悩みながら「スク水が~」って独り言になっているのか謎だけど降りるから付いて来てね~?帰ってからお説教だからね~。」
呟いていた様だ。また今日もお説教を回避するために俺は悪くない事を説明しなければならないのだ、もう「俺は悪くないんだよ?」ってプラカードも垂れ幕まで有るのにまだ伝わらないようだ。人が紡ぐ言葉とは何と虚しい物なのだろう、俺は悪く無いと言うのに。
(遂に水着の生産が!)
(ビキニは度胸が……って言うか胸が…)
(予約はいつからなの?お値段は?種類は?オーダーメイドあるの?)
(今晩女子会でアンジェリカさんに聞き出して貰おう)
(でも何処で泳ぐのよ?川は危なくないの?)
何か女子達がざわついている?まったくダンジョンの中だと言うのに気が緩み過ぎだ、警戒心と言う物は常時戦場の心得を持って初めて身になり糧となるんだよ?全く最近の女子高生と来たらJK何だから常識的に考えてJKなんだよ、JFKだったら暗殺物だよまったく。
2階層はまた違った趣だ、ここの迷宮王は巧と呼んで差し支え無いレベルだろう。
「広々としながらも緩やかな曲線で周回する縦長の大部屋と言うか広間?食堂にすればゆうに100人は御招き出来るくらいに広く会議室にも使えそうだ、その周りを囲む様に個室が連なり客間にしても良いしちょっとした作業場にも出来そうだ。素晴らしい快適性と動線が考え抜かれた機能美、広さと使いやすさを兼ね備えた空間の様式美。これは良いダンジョンだよ!」
(ポヨポヨ。)(ウンウン。)
「だから戦闘中だよー、忙しいから論評は後でねー。って言うか戦闘中に床まで改装しないでよ!魔物さんまで吃驚してるよ!」
どうせすぐ終わるじゃん。だって本当に強いのだ、きっと今日の甲冑委員長さんとの訓練は見応えが在りそうだ、強くて速いと言うのはそれこそが最大の脅威なのだ。ただ力が強くて動きが速い、それこそが身体能力の強さなのだ。ただ純粋に強いと言う事こそが怖い、技などそれが無い物が対抗する手段に過ぎない。純然たる強さは技術や武装やスキルと言った他の条件を簡単に凌駕してしまうのだ。相手よりも速く動き防御力より強く打つ、これだけで勝てるならこれこそが最強なんだろう。恐らくLv100からはそれまでよりも補正効果が高いんではないだろうか、ステータスの数字以上に強くなっている気がするんだよ?これはもう押し競饅頭で死ぬ危険性がある!って言うかあれはLv関係なく危険だった、あれは男子高校生に抗えない破壊力があったのだ、まあ抗えなかったんだよ?
「駄目だよ~っ勝手にダンジョンに家具置いたら~っ。魔物さんがお洒落生活で堕落しちゃうんだよ~っ?」
副委員長Bさんは魔物の堕落にご不満のようだ?健全な魔物が良いのだろうか、健全に襲い掛かって来るより堕落してテーブルでだべっている方が世の中の為と言う気もするんだが?ご不満のようだ?揺れてるし?(ゲフンゲフン。)ヤバい!今の殺気は何処からだろ?20個は感じたよ?
しかし実際にレイアウトしてみないと図面では分からない事も有る、案外と家具なんかの内装を入れてみると急に狭くなる場合が在るのだ。どれ程余裕を持って計算しても置いてみないと分からない何て良く有る事だ。だが魔物さんはカウンターテーブル使うだろうか?しかも兎さんだよ?乗っけたら可愛そうだ。
だが可愛い「スパイク・ラビット Lv2」さん達は悪い女子に皆殺しにされてしまった、まあ迷宮や魔の森と言った魔素の異常発生する場所に湧く魔物は素材が取れない。乱獲してもファーは取れないんだよ?襲ってきてるんだけど可愛いよ?ビッチよりこっちを使役したい、交換希望は何処に届ければ良いのだろうか?届け出の用紙が見つかったら齧られそうだ、俺が。
さて3階層はどんな間取り何だろう、期待できるのだろう。ただ少し広すぎるきらいは在るんだが大迷宮程だだっ広くはない、質感はやはり落ちるんだよ。
「5階層から下は個室でも良いけど3~5くらいまでは大部屋中心の方が使い勝手が良いと思うんだよ?まあ下は下で訓練所とか鍛冶場や工作室なんかも欲しいし大浴場は譲れないし……でも中層より下って物置になりそうだよね~?何か下りるの面倒そうだよ。」
(ポヨポヨ。)(ウンウン。)
ただ街にも 森の洞窟にも近くて川沿いで良物件なんて滅多にない出物ではあるのだ、先ずは上層だけでも全部見ておきたい。すぐに住まなくても押さえておく価値は有るかも知れないのだから。




