悪意どころか蔑みも優越感も無関心も欲望も邪悪な感情が何もないのに凶悪って何?
55日目 夜 宿屋 白い変人 女子会
みんな疲れ果てぼろぼろの身体を引き摺る様にして浴場に向かい汗と泥を流しては湯船に沈んでいく、最早体力は限界だ。限界の戦いだったんだ。乙女戦争だった。スポーツタイプだったけど下着だった、ブラもあったよ!
みんな戦利品を掴んでお風呂まで辿り着いた戦友だ。さっきまではギャーギャーと戦い押しのけ奪い合っていたけど戦友だ。お部屋では戦利品の見せ合いっこが始まるだろう、みんな同じものだけど始まるんだろう。だって嬉しいと見せびらかしたくなるもの。
お風呂の中でアンジェリカさんから制作秘話を延々と聞かされた、フィッティングする度に着用感の試験が始まったらしい。勿論試験と言う名の遥君の欲望のスタンピードさんだったみたいだ。制作秘話かと思ったら着用試験悲話だった、秘話でもあった。
アンジェリカさん用に用意された6種類のアンダーウェアーをフィッティングする度に着用試験しちゃったらしい、ちゃんと着衣だったみたいだ。着用に問題は無かったみたいだが着用させた人が大問題だったんだ。大襲撃されちゃったんだ。
そして弓も買ったから今日稼いだ分まで全部消え去った、また積立金の取り崩し決定だ。でもすさまじく良い弓だった、1㎞近い射程で効果付き。そして特殊効果付きの矢も製造されるらしい、今日のフェニックス戦で足りなかった遠距離での制圧力と打撃力だ。戦術自体が大きく変わる、ただし矢が使い捨てに近いから金銭的には危険な武器だったりもする。
「ふう~、オタ君達はまたやらかして苛められてたね~?」
「もう趣味だよね、絶対遥君にだけちょっかいかけるんだよ?」
「「「最後は苛められるのに不思議だねー?」」」
「遥君曰くだけど小田君達ってずっと苛められたり嫌がらせされたりしながら生きていたから人を見る目が最も厳しいんだってよ?だから遥君や柿崎君達って「オタが良いんなら良いよ」って答えるけどあれはある意味信頼なんだよねー?意味解らないけど。」
そう、私の「強奪」もたった一言「オタ達が問題無いって言ってたんなら何の問題も無いんだよ。」だった、悪意や邪心に最も敏感な4人組。その4人が拠点にしていたからこの街に滞在する事に決めたくらいに信用されている。その人を見抜く目で見て懐かれてる。
「誰よりも狂暴凶悪で脅威の意地悪さんだけど全く悪意が存在していないからなんか懐いてるんだよ、傍で見ていると子犬がじゃれ合ってるみたいだもんねー?」
「あ~男子が10人集まってなんかしてると悪戯してる子供みたいなんだよ。なんか遥君まで子供っぽいよねー?あんな時って?」
まあ、やってる事は凶悪なんだけどそこに悪意どころか蔑みも優越感も無関心も欲望も邪悪な感情が何もない、だから学校でも小田君達は遥君に懐いていた。それが一緒に異世界に来れて毎日遥君に寄って行っては苛められている。私達と一緒なんだ。
「柿崎君達はキャラ変わっちゃってるけどね~。なんか冷酷な感じが有ったのに遥君といると犬扱いだよ?」
「野人だ原始人だってギャーギャー怒られてはまたおちょくってるよねー?しかも遥君に何か作って貰うとそればっかり使うし?BL?」
「あれでファンレターとか日本中から来てたらしいよ?それが今じゃ遥君に莫迦莫迦言われて莫迦ですジャージ作って貰って喜んでるんだよ。」
不愛想でぶっきら棒で何処と無く壁が在った柿崎君達は別人化して行っている。何にも考えて無さそうで妙に鋭くてって言う所は一緒だけれどふと感じていた怜悧で酷薄な感じが微塵も無くなっている。そして遥君といると犬に見える。尻尾をブンブン振ってる犬だ。
「遥君もキャラ崩壊しちゃってるよね~?昔ってもっと単語?って感じでポツポツ喋ってたんだよ?それが今じゃ言い訳し捲くって「みたいな?」だよ?」
「「「遥君が一番意外だったよ!」」」
誰とも話さない、関わらない、仲良くなんてならない、失いたくないから誰とも関わらなかった遥君は関わってしまったから心配性の超過保護さんになってしまった。しかもそれを照れ照れで隠してるのもバレてしまった。だからみんなが懐いちゃう。
アンジェリカさんも嬉しそうに遥君の昔の話を聞いては笑っている。きっと誰よりも遥君に懐いちゃってる第一人者だ、永遠の孤独を知っているからこそあの混ぜっ返し王の温かさを誰よりも知っている。スライムさんだってべったりだ。
「でも不合格だったー。まさかの復活だったよ、お結びが正解だったんだよ~。お結び食べたいんだな。って言ってれば合格だったのに~。」
いや、残心しようねって言う話でお結び食べたいって言う話じゃなかったんだよ?まあダンジョンでみんなでお鍋を突くのはどうかとは思ってたんだけれど鳥鍋さんの魅惑攻撃がレジスト出来なかった。コラーゲンたっぷりでカロリー控えめの殺し文句に負けてしまった。
「「「でも鳥鍋さんは美味だった!鳥鍋さんに一片の悔い無しだよ!」」」
あそこでポン酢が出て来たのは誤算だった、あれで警戒心が崩壊した。いつの間に作ったの?そして明日は餃子弁当が販売されるらしい、もう明日は魔物さんがお給料にしか見えないんだろう。だってファーアクセサリーも開発されたらしいのだ!そして既にアンジェリカさんはファーの帽子を貰っていた。恐らく近日発売だ、秘密兵器だ、要チェックだ!
お勧めは開発中のファーバックのシリーズが素敵だったみたいなの!う~、アンダーウェアーと同時発売だったら困るんだけど待たされちゃうのも困るんだよ?現在みんなでお部屋へ押し掛け禁止協定が結ばれているから抜け駆けは出来ない、だって全員が色仕掛け用エロドレスも網タイツも持っている危険な状態なんだよ?まあみんながエロドレスを着て網タイツで深夜のお部屋に押しかけたら遥君は間違いなく「転移」するだろう。絶対逃げる。
「次の50階層は48階層まで行ってるのが2つかー?虫は嫌だなー。」
「「「虫の話はしないでー!いやー!虫いやー!」」」
幸いと言うか今の所Gは出て来ていない、最大の恐怖は大迷宮のタガメだった。だって見た目は巨大なGだった、結構速かったしワサワサしてた。因みにGが出たら遥君は逃げるそうだから全軍崩壊間違いなしだ。うんGは無理だよ。
「弓もあるから訓練もしないといけないんだけど稼がないと破産しちゃうし~?アンクレットも大量出品されるみたいだし効果付与だってよ!」
「今日の下着も効果は低かったけど付与が付いていたし、弓の付与なんて凄く豪勢だった。装備職人になれるよね?」
魔石の加工に加え、遂に武器にまで手を出している。そして最高級品が大量生産されている、内職だけで内政が賄えてしまっている。そして投資し続けているからお金が無いって騒いでいるけれどとっくにお大尽様どころか国家予算位は動かしているんだろう。
人は認識できない事は出来ない。だから魔法がチートでも限りがある、一晩で何万もの商品生産が個人の思考能力で認識出来る訳が無い。土魔法が得意で魔力が無制限に使えたとしても突然にお城なんて作れる訳が無い。スキルの「至考」が補助しているからって個人の認識域を逸脱している、あれは生産チートなんかじゃない何かがある。
実際みんな生産も料理も挑戦したが手でやった方が早かった、そして基本手で出来ない事は出来ない。魔法なんてそんなもんなのだ、中火で10分焼くなら魔法でも10分かかるんだから。5分も掛からずに100食200食なんて出来たらおかしい。でも今日も唐突に鍋が出て来た、食卓付きでだ。
誰がそんな膨大な情報を処理して認識し操作しているの?
(ぷるぷる!)
あっ、スライムさんの乱入だ。お風呂に呼んで貰えなくてご機嫌斜めなのかぽよぽよと体当たりして廻っている、一応迷宮皇並みの魔物さんなんだけど完全に愛玩魔物さんしてるよ。みんなに可愛がられてぽよぽよだ。
そしてお部屋で女子会だ、でもやっぱりアンダーウェアーの見せっこだった。雰囲気はやっぱりスポーティーだ。でも誤算だった、一応1枚は確保しておいたのだけれど着て見せられると思いの外にボクサーショーツが可愛い!これは盲点だった。みんなが魅入ってる、品薄だったのだ。これは追加注文騒ぎに発展するだろう、だって可愛いのは分かっていたが部屋着にも良い!しかしやっぱり採寸が嫌でスポーツブラにしたんだろう、オーダーはまだ遠そうだ。
わいのわいのと騒いではお喋りに花が咲く、女子高生20人に迷宮皇さんとスライムさん付きだ。会議なんだか何なんだかと喋り続けて夜が更ける。
誰一人戦争については触れない。怖い訳でも逃げてる訳でも無い、覚悟を決めている。だから口に出せない、人を殺す事を気軽になんて語れないから。
御指摘頂きありがとうございました、52日目がループ世界だったのを修正させて頂きましたので途中の日付が全てずれました、すいません。
感謝とお詫びとリアルが充実していない暇さで次話が出来ているので投稿させて頂きました。
申し訳ありませんでした、そしてご指摘を戴き本当にありがとうございました。