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話し合えば分ると言うのはお花畑の綺麗事なのだろう。



16日目  洞窟前 

 

 

 早めに朝食を取って荷物の確認、最後に戸締り。


 土魔法で岩戸を造る。


 表で宴会とかしたら岩窟王が出てくるんだろうか? 美人の女神様なら閉じ込めよう、一緒にひきこもろう! 


 「じゃあ、ま~? 川下かわしもに出発? 街に出発? でオタ狩りに出発?」


 「何で! そんなに! 小田君達を! 狩っちゃうの!? 何でなの!」


 そんなこんなで森の中を行進する。


 河原には何故か魔物が居ない。あいつ等水掛けたら死ぬの? まさか狂犬病? やばい、俺コボに噛まれたよ? 


 「遥君、ちょっと良いかな?」


 「んー、ついでだから俺と委員長で先行する?」


 また、偵察と迎撃係だ。今日は串刺しにして無いから怒られないだろう。



 「……あのね?」


 「脳筋莫迦達の事?」


 「う、うん。脳筋て……会ったんだよね?」


 「ああー、言うの忘れてた。委員長達に謝っといてくれって?」


 「えっ? えーと……そのー……ごめんなさい」


 委員長が凄い勢いで目一杯頭を下げる。もう少し近かったら頭突きで倒されていただろう。


 「遥君には……ちゃんと言おうと思ってたんだけど、言い出せなくって……」


 「あーっ? 良いよ、知ってたし?」


 吃驚顔だ? えっ? だって普通分るじゃん? なんで?


 「そ、そ、それって……いつから? なな、な、なんで知ってたの?」


 「いや、普通分るだろう? あ、脳筋達とゴブ達は莫迦だから分って無いみたいだった? みたいな?」


 いや、ゴブには聞いて無いけど多分ゴブ達も分かっていないだろう? もしかするとゴブたちは莫迦たちより賢い可能性も秘められているが何も言わなかったから知らないのだろう? まあ話した事無いけど?


 と言うか、実は秘密だったらしい?


 「それなら秘密って先に言ってよ、困られてもコッチも困るよ? 秘密って知らなかったし? いや、誰にも言って無いけど」


 「いや、何で知ってるの? オタ君達も誰にも言わないし、誰にも言っちゃ駄目だって言ってたよっ!」


 「強奪」相手のスキルを奪う能力。おそらく最も強力で凶悪で脅威的な能力、持っていれば最強のチートだが自分以外が持っていれば最悪の脅威だ。側にいれば何時の間にかこの世界で命綱であるスキルが無くなるかも知れないし触られれば奪われるかもしれない。奪った人間は更に強くなり更に危険になる。


 それでもまだマシな方、強奪にはただ奪うものやコピーするものの他に殺して奪う物がある。ある意味一番メジャーかも知れない。そして危険極まりない。


 自分のスキルが狙われると言う事は、殺されると言う事。警戒所じゃない、奪われる前に殺すしか無いと殺し合いが始まるレベルの危険スキルだ。


 強奪持ちだと言えば誰も近寄らない、近付く事も許されない、寧ろ殺さないと安心出来ない危険なスキル。故にタブーだ、誰にも言えないし言えば逆に殺されるかもしれない、禁忌のスキル「強奪」


 「それに……知ってたんなら……どうして? なんで私を助けてくれたの? 怖くないの? 近寄るなって言われてもしょうがないよ? 嫌われても、置いてけぼりにされてもしょうがないよ? だって、私は……人のスキルを奪う能力なんだから……」


 「いや何で怖いの? オタ達怖がってた? 無いよね。ましてや何で俺が怖がると思えるの?」


 「だって、いつ私にスキルを奪われるか……」


 「だから、俺は何の問題も無いよね?」


 「えっ? だって私は……強奪を……」


 「いや、何か欲しい? 俺の能力いる?」


 「あっ! あぁぁー……ってごめんなさい」


 何処の世界に「ぼっち」だの「にーと」だの「ひきこもり」だの「木偶の棒」だの「器用貧乏」だの「報連相」だの欲しがる奴がいるのだろう、寧ろ配りたいくらい? スキル「配布」とか無いかなー? 


 うん、「強奪」まったく困らない。寧ろ「強奪」が困るだろう。まったく強奪にも困った物だ、うん。


 「えーと、何かごめんなさい……でもね……でも……他の人達は、他の人たちには……」


 「だ か ら オタ達も怖がって無かったろ? そ-言う事だよ?」


 何が問題なのか意味が分らないし何を悩んでるかも分らないが、なんか分からなくて悩んでいるようだ? 異世界言語翻訳問題なの? いや日本語なんだけど? 

 

 「えーと、どういう事? ……なのかな?」


 「どういう事って、みんな委員長が持ってて安心したんだよ?」


 「えっ!?」


 「みんな傀儡や魅了や強奪を誰が持ってるか疑心暗鬼だったんだよ、そんで傀儡と魅了を封印して安心したんだよ。ほら、誰も強奪を封印しようとして無いだろ?」


 「えっ?」


 「あの莫迦の極みを持った脳筋達が気付いてるのに、他のみんなが気付かないわけ無くない? もう、みんな解決したって思ってるって言う事は何の問題も無いって事だよ? 俺もオタ達が何にも言わないから「あー、委員長かー」って思ってただけだよ。何が問題なの?」


 まず、オタ達が持っていない事は分っていた。あいつ等はゴブたちに囲まれて死に掛けていた、つまり気配察知を持っていなかった。気配察知はコボから奪えるのだから「強奪」が有ったら奪わないわけが無い。ならば強奪を持っていない。


 あのスキルに無駄に詳しいオタ達が強奪を気にしない訳が無い、真っ先に探すだろうし警告するだろう。でも、何もしなかったし何も言わなかった。


 ならばそう言う事だ。ならば安心、安全だ。学校で、異世界で、いつも不条理にいつもいつも理不尽に酷い目に合って、それでもあいつ等が信じれるならそれは絶対大丈夫だ。


 安心の合格マークだ、JISだとかISOだとかそんなちゃちなもんじゃない、安心のOTAマークだ、あれよりむごい検査基準は無いだろう。


    ・

    ・

    ・


 「何か委員長最近いっつも泣いてるねー?」


 「それはね、遥君のせいだよ、きっと」


 「冤罪だ! おれはやってない!」


 「んーん、いっぱいしてくれたよ。ありがとう……」 


 あれ? 会話が噛み合っていない? 俺が泣かせたからありがとう? って言うか、何したの? 俺? 少なくともエロい事では無いだろう、そんな事が出来るなら称号に勇者が有る筈だ、自慢ではないがそんな度胸は無い。ましてや敵は20人……戦う前に負けている! 同級生に孫子さんがいるの?


 「善く戦う者は、よく勝つべからざるをなすも、敵をして必ず勝つべからしむること能わず」って、あれ? やっぱり負けているようだ?


 「でも、教えずにどうやって説得できたのかなー?」


 「ん? あー莫迦? 大丈夫だって言ったら「そーかー」って帰って言ったよ? 莫迦だから」


 「それ、何が大丈夫なの!?」


 「いや、説明とかしても? 莫迦だし?」


 「どうして納得しちゃったの!? 完全に莫迦扱いだよっ! 何気に酷いよねっ、何気じゃないし!」


 やはり、委員長はてんぱってて気づいて無いようだ、


 「委員長だって酷いとか言いながら、さっき「オタ君達も誰にも言わないって」って、オタ君になってたよ?」


 「……マジデ? ……ごめん小田君、いつの間にか洗脳されてたみたい?」


 洗脳って俺のせいにしないで欲しい、そんなスキル貰ったらデスゲーム始まっちゃうよ、マジデ。


 「私の強奪は……殺して奪う方なの……だから、絶対言っちゃ駄目だって…… 小 田 君 が!」


 「そっかー、奪っちゃったのかー……ゴブリンのあれとオークのあれ?」


 そう、委員長さんは実は「性豪」と「絶倫」持ちだった。


 「…………きゃああああああああああああああああああぁぁっぁぁぁぁぁああぁぁあぁぁあぁあぁぁぁーあぁぁぁーぁぁぁーーーー! いやああああああぁぁあぁっあぁーーーーーーーーー!」


 異世界の森林で哀を叫ぶ、委員長。コワレタノ?


 後ろから走ってきた女子達にめっさ怒られました、ガチで? 何にもして無いのに? 勇者の称号も無いのに? ホントダヨー?

 

 お昼ご飯だ、お魚と茸のBBQ再び! 串にお魚と茸を刺して焼いていく。


 委員長はジト目で睨んでる。


 焼けた串を、ひっくり返し火を通す。


 委員長はジト目で睨んでる。


 両面ほど良く焼けたら塩を振りお皿に取る。


 委員長はジト目で睨んでる。


 そっと、委員長の前に置いてみる。


 委員長はジト目で睨んでる。


 仲間になりたそうにこちらを見ている……訳ではないようだ?


 「委員長ぉー、帰っておいでー。ご飯と会議だよーっ?」


 委員長はジト目で睨んでる。


 やはり、何か良い事を言わなければならない様だ。


 「えーと、委員長。大丈夫だよ? まだ称号に「痴女」とか……ゲフッ! ……(バタッ)」


 くっ、委員長は縮地も使えるらしい……流石チートさんだっ(ガクッ)


 さて、どうしよう? いや委員長の事は置いといて、まだ森を抜け切れない。進んでも後2~3時間でタイムリミットだろう。


 千里眼でもまだ森だ、草原にでも出れば街なり道なり有るんだろうが? 困った。


 困りながらチラ見すると、委員長はジト目で睨んでいる。


 あれだけ壮絶に「強奪」についての話し合いをして心から分かり合えたというのに、「性豪」と「絶倫」の話し合いは暴力で仕留められた。


 やはり話し合えば分ると言うのはお花畑の綺麗事なのだろう、あの縮地からの一閃! 1人でオーク倒せたよねっ? うん、俺は倒された。


 「副A、もう少し進んでみようか?」


 「誰が副Aよ、Aじゃないしっ!」


 「……じゃあ、副Bどうしよう?」


 「あれー、私は副Bなの~? でもBじゃないよ~?」


 うん、確かにこれはB所か……委員長は殺害者の目で睨んでる……ナ、ナニモミテナイ……ミテナイ、ヨ?


 1時間ほど進んでみたが森の終りは見えない、森の中で野営になるなー。


 結局、森を抜けるのには確実に丸一日以上必要だ、明日また行ってもこのまま行って野営しても大差ないだろう。


 そうだ、多数決だ。民主主義、デモクラシーだ! 話し合いが不可能な以上それしかないだろう。


 話し合いが不可能な理由は委員長がジト目で睨んでるからだ。民主主義の前に俺に人権が欲しいなー、基本的なので良いから。

 

 結果  洞窟に帰還が多数。 帰宅します。


 来た道をテクテクと帰る、森に入ってレベル上げと言う手もあるが帰りが夜中になりそうだ。明日に響くと意味が無い、早く帰ろう。


 やはり、覚悟して野営するのと、成り行きで野営するのとでは気持ち的に違うだろう。ジト目で睨んでる人もきっとそうだろう。


 せっかく塞いだ岩戸を開ける。大丈夫、いないようだ。


 晩御飯は何にしよう? せっかく家で作るのだ、焼き魚薬草包みにしよう。


 お風呂も入れておこう、明日からは水浴びしか出来ないかもしれないし。


 スキルの地図で確認すると川下はかなり蛇行していたが大きく右に曲がっていたようだ、ショートカットした方が早そうだが森に入ると魔物と戦闘になり時間が掛かる。


 会議が出来ないのが問題だ、議会が召集出来ないのが問題だ、何故なら怖くて召集出来ないのが問題だ、問題が議長なのが問題だ?


 居心地はいつも悪いが、今日は凄まじかった。


 這う這うの体でテントまで脱出し森の中をお散歩だ、今日は莫迦はいない様だが、ゴブはいる。疲れたよ、気疲れだ、何だか疲れたよゴブラッシュ~(ボクッ!)


 俺のストレスと大量のゴブラッシュの魂が天に召されたのでテントに帰る?


 「この気配は? 莫迦じゃなくて……ジト?」


 「う~、名前が委員長からジトになってる……今日はごめんなさい、恥ずかしくて……つい?」


 委員長改めジトさんが頭を下げる。卑怯だ、赦さざるを得ないだろう。胸元的に! マジで。


 「え~と、まあ、がむばれ?」


 励ましてみた。


 「励まし方が投槍だよ~っ、怒ってるのかな~?」


 「冗談だけど? 明日の話し合い終わったの?」


 「うん、とりあえず3日くらいは進んでみようって」


 「まあ、オタ達見つけないといけないしなー」


 「オ……小田君達?」


 さすが委員長。ギリギリで踏み止まった様だ。


 「うん、ビッチ達押し付けないと」


 大分マシになったが未だ無理をしている。オタ達に会う迄は終わらないんだろう、ビッチ的に未だケジメがついていない。


 戦闘中もやたらに前に出ようとしている、自分達が楯になろうとしている、いつも誰かを庇おうとしている、いつも身を挺している、もうとっくに赦されてるのにだ、もう仲間と認められているのにだ。


 それでも自分達のことが許せないんだろう、自分自身を認められないんだろう、確かに強くなった。だが危うい。


 オタ達に会わせる、結果がどうであれそれでしか心から納得できないのだろうから会わせる。赦されるにしろ赦されないにしろ、そこに行かないと何処にも行けない。


 「うん、そうだね。って押し付けちゃ駄目だけど私達も島崎さん達と一緒に謝らないといけないから、あと私もありがとうを言いたいから。」


 島崎って誰だろう? ここに来て新キャラ登場? 誰だろう街の人だろうか? あれ、やっぱりジト目だった。ジトさんだった。


         16日目終了


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