異議も無く審議無しで全部が全会一致で可決される会議って必要なの?
50日目 昼過ぎ ダンジョン
突き当りの壁に手を置きぐっと押し込む。此処が最後の隠し部屋だ。
「え~と?隠し部屋には~?おっ!三冊同時発売なの!「武技考察」「称号考察」「魔法考察」の三冊?このシリーズって考察する割に俺のスキルだって一つも載ってなかたんだよ?仲間はずれなの?これ貰って良い~?」
(ポヨポヨ!)
貰って良いみたいだ。
「「「何か迷宮王さんと会話が成立しちゃってるよ!?って言うか懐かれてるよー!」」」
「でもなんか愛らしいよ?あんなに強かったのに?」
三冊をパラパラと捲り流し読みして見る。やっぱり載って無いよ?
「温度」「移動」「斤量」「梱包」なんてふざけた魔法は無い。「木魔法」も「振動魔法」すら無かった、だから「転移」も「重力」も「掌握」も有り得ない。
「ひきこもり」「にーと」「ぼっち」何て称号も当然無い。うん、これは絶対に無い自信があったよ!確信してたよ!
そして「杖術」何て武技なんて無いんだよ?副委員長Bさん、無いんだってよ?だから「杖理」も無い。
そして「魔力纏」が無いから「魔纏」も無い。
まあ「虚実」はオリジナルだから無いだろうと思っていたが、ただオリジナルと云う物自体が存在しない物だった。
しかも「躱避」「瞬身」「浮身」「瞳術」すらも伝説扱いだよ?伝説の剣豪とか剣神とか?いや「剣神」持ちも隣りでウンウンしてるよ?いるよ?
そして「Unknown」に関しては本すら無かった、「報連相」「器用貧乏」「木偶の坊」も謎のままだ。
あ~。役に立たない本って言うか、役に立たないものだから存在していないのか?
称号は絶対に無いって確信を持ってたから良いんだよ?だって無いよ、「ひきこもり」「にーと」「ぼっち」とか、こっちの世界に言葉自体が無いよ!なのに意味だけは通じてるんだよ?異世界言語でどんなふうに翻訳されてるんだろう?知りたくは無いけど。
(ポヨポヨ~。)
「う~?迷宮王さんがぽよぽよと慰めてくれている?その横で元迷宮皇さんがポンポンしてくれてる?豪華ラインナップな慰めなの?元気出せよ的な?感じ?みたいな?」
「「「確かに異世界最強の豪華な慰めラインナップだよ!最強の無駄遣いだよ!」」」
もうこれ以上探しても本は無さそうだしダンジョンにもう用は無いんだけど迷宮王さんも倒したくないんだよ?何か懐いてて可愛いし?今から戦闘再開とか無理だから?もうお腹いっぱいで怒って無いみたいだし、あれって食べようとしていたんだろうか?まあ可愛いから良いんだよ。
結局この子も迷宮皇さんと同じ独りぼっちだったんだよ。そして誰も来ない地下の最下層でお腹を空かせたままずっとここにいたんだよ。
「お前、うちの子になるかい?みたいな?」
(ポヨポヨ~!)
お~、踊ってる、可愛い!喜んでるの?嬉しそうな感じのぽよぽよなんだけど?
「え~と「ステータス」あっ、使役されたよ?マジで、みたいな?」
「「「やるんじゃないかと思ってたよっ!」」」
可愛い。ぽよぽよと踊ってる。やっぱり喜びの踊りみたいだ?連れて帰ったら看板娘と気が合いそうだ。不思議な踊り仲間?
まずは明るいお外に出してやって、美味しい物を沢山食べさせてやろう。あとは宿に戻ればみんないるし寂しくなんか無いだろう。
喜んでいるんだからこれで良いんだよ。
「じゃー帰ろーか?あと二軒廻るんだよねー?ダンジョン。オシオシでマキマキだよ?」
「二軒って、ダンジョンを一軒とか二軒とかで数えないでよ~、迷宮の攻略なのかお宅拝見なのか分からなくなって来ちゃうんだよ~!」
「でも~っ?今日中にあと二軒は厳しいよ~っ?結構ハ~ド~?」
「「「だから二軒って言うなー!」」」
うん、本屋さんの迷宮じゃ無いから改築候補から外しても良いだろう、確かに立地的に良くないし間取り的にも面白味が無い、アリの巣みたいなんだよ?やはり中々大迷宮程の素敵な間取りのダンジョンは無い様だ。好立地だったし、質感も良かった、ただやたらに広すぎるんだよあの大迷宮。深いし、100階層って個人レベルの住居じゃ無いよ。
「こっちの甲冑委員長さんは先輩使役さんだし、元迷宮皇さんで元上司なんだから言う事をちゃんと聞くんだよ?みたいな感じ?」
(ぽよー。)
良いらしい。上下関係が成り立っているみたいだ?これって敬礼しているの?元上司だから面識があるのだろうか?みんなで会ったりするの?会合とか?もう二人とも元だから同窓会とか?
「まったく迷宮王を使役して連れ帰るなんて!って言いたいのに元迷宮皇さんが普通にいるし?普通なの?」
帰り道にいろいろと口では文句を言いながらも、みんな元迷宮王になったスライムさんにパンやお菓子をあげている。ポヨポヨして喜んでは懐いてる。やはりかわいいは正義だったらしい。
そうして女子達はまたお洋服会議が再開され、各自が持論を展開し、論議し尽くしては、
「「「よし!追加注文だよ!」」」
「「異議なし!」」
誰も俺の異議は聞いてくれないらしいからスライムとぽよぽよしながら帰る。う~っ、癒される。
この世界は過酷過ぎて癒しが必要だったんだよ!だって更に苛酷にする為のお洋服会議が白熱してるんだよ?何で誰も異議を出さないの?全部が全会一致で可決ってそれって会議?本当に審議してる?議案さんがみんな素通りしちゃってるよ?
魔動紡績機と魔動機織り機、それに魔動ミシンの完成を急ごう。急がないと俺の寿命が危ない!
地下49階層までは女子体育会組が攻略を済ませていたので49階層の 扉で1Fまで一気に帰る。隠し部屋の探索が無かったらすぐに済むんだけど全階層を見て回ると時間が掛かる、ましてやここでは5階層ごとに隠し部屋が出て来たのだから特別手間取ったんだよ?次はこれほど時間は掛からないだろうけど2軒は無理だろう。
そうして地上に戻る。スライムさんも喜びのぽよぽよだ。
「次は委員会が攻略中のダンジョンだっけ?近いの?良い物件なの?こう近隣の街まで何分とか、見取り図とかのアピールポイントとかは無いの?」
「「「ダンジョンは物件でも無いし分譲もして無いの!ダンジョンとマンションは違うの!」」」
アピールポイントは無いらしい、期待薄だよ。
「でも街からはかなり近い方だよ?魔の森に近過ぎるんだけど。」
羅神眼の「地図」で確認する。あー、ここか。魔物の大襲撃で滅びた村の傍、魔の森のから出て来るオーク・キングの率いた群れを倒す前に滅びてしまった二つの村に近い迷宮。
救えなかった村。救えなかった人達のいた村。
だからアピールポイントなんかもう無いんだよ、滅びてしまったんだから。魔の森の奥にいる筈のオークが森の浅い位置まで出て来ていた事に気付かなかった為に滅びた村、俺だけがオークが森の浅い位置にいた事を知っていたのに大襲撃の予兆を見逃したせいで滅びた村だ。なんか妙に俺を持ち上げてる人もいるけど救えてなんかいないんだよ?俺は。村だけでも二つ滅びてるんだよ?同級生は13人死んでるんだよ?そして一人は俺が殺したんだし、あとの十二人は見殺しにしたんだよ?俺は救えてなんかいないんだよ、全然駄目なんだよ。
だから誰も俺に近くに在った村の話をしない、村の跡地を避けるような大回りのコースを通って案内している。
俺だけが助けられる可能性を持っていたのに、そのころ俺は同級生と殺し合いをしてたんだよ。だから滅び、沢山の人たちが死んでしまった村。ほら?全然駄目じゃん?全く救えてなんかいないじゃん?街を救ったとか、辺境を救ったとか言われても困るんだよ、だって救えてなんかないじゃん?もう村が二つも消えちゃってるのに感謝とかされても困るんだよ?
俺が判断した結果が同級生を十二人と沢山の人が住んでいた村を二つ見殺しにしたんだから。今更何処かの村に壁を作ったって、魔の森の魔物を皆殺しにしたって、魔の森の伐採をしたって遅いんだよ。もう滅びてしまった村も、そこに住んでいた人たちも救えてなんかいないんだよ。本当に困るんだよ、今更何をしたって感謝なんかされる様なもんじゃ無いんだから。死んじゃった人達は今更何をしたって許してなんかくれないんだよ?許されざる者は罵られるべきなのに誰もなんにもは言ってくれないんだよ?死んじゃった人達は今更何も言ってはくれないんだから。
スライムさんは一生懸命に頭の上でぽよぽよしている、まるで頭を撫でてくれるかのように。俺を慰めてくれているのだろう。
誤字ぺったんさせて頂きました、いつもありがとうございますm(_ _)m